第229話 迎撃

 誘導されて駆逐艦が接岸しているところにやってきた。


 イスギを降りると、並んでいた高級士官っぽいヤツらが一斉に敬礼した。


「駆逐艦アレギウス艦長、ヘイウット大佐であります。銅羅町どうらまち駐留司令官を兼任しております」


 下半身がヘビの男が一歩前(?)に出て身分と名を告げた。


 ……世界観がメチャクチャだよな……。


「望月タカオサです。リビーダンの船は捕捉しましたか?」


 おれは軍人でもないので軽く一礼して名を告げ、状況を尋ねた。 


「ブリーフィングルームでご説明致します」


 前世の記憶がなけりゃブリーフィングルームなんてわからんだろうに、当たり前のように言ってくれる。ってのも今さらか。あちらの主要人物にはおれが転生者とバレているのだろうからな。


 ヘイウット大佐たちに案内され、駆逐艦アレギウスのブリーフィングルームへと通された。


 簡素な部屋だが、机に近海の海図が敷かれていた。


 海図を作る技術もあるんだ。しかも海溝線まで描かれている。これは潜水艦も近くにいそうだな。


「リビーダンの船はここから約三十キロ。十六から二十ノットでこちらに向かっております。約一時間半で到達するかと思います」


「十六から十八ノットか。空中を飛んでる割りには速度が安定しないんだな。風に左右されるのか?」


 前回捕獲した船はそのまま。調べてもいませんてした。


「攻めてきたときの対処はシーカイナーズに任せる。お手並みを見せてもらうよ」


 まあ、手際がいいのは見るまでもないが、ここはシーカイナーズを立てておこう。軍としてやっているのなら働きの場は必要だろうからな。


「はっ! 了解しました!」


 ブリーフィングルームにいるシーカイナーズの者が綺麗に敬礼をした。


「タカオサ様。艦橋へどうぞ」


 今度は艦橋へ案内される。


 光月こうづきで観戦したかったが、シーカイナーズを立てるなら近くで見るのがいいだろう。


「父さん。わたしたち近くで見ていい? 邪魔しないし見えないようにするから」


「ヘイウット大佐。よろしいか?」


 おれの判断では決めていいことではないのでヘイウット大佐に了解を得る。


「はい。構いません」


「ありがとうございます。カナハ。シーカイナーズの練度を学んでこい」


「うん、わかった! ルヴィー、いこう!」


 え? と言う顔をしたルヴィーを引っ張って艦橋を出ていった。本当にルヴィーと仲良くなったものだ。


「邪魔はしないと思いますが、万が一、邪魔するようなことがあればおれがどかせますから遠慮なく言ってください」


 カナハが纏っている戦闘スーツはおれから生まれたもの。おれの支配下に入ったものってことだ。強制的に操ることも可能なのだ。


「ルヴィー様が一緒なら問題ないでしょう。カイナ様から訓練されてますから」


 ルヴィーのことになるとなぜか母親のことが出てこない。あいつ、ネグレクトか?


「愛されてますな」


「ええ。カイナ様やべー様の教えを色濃く継いだ方ですから」


 その二人の教えを色濃く継いだと聞いて心配するのはおれだけだろうか? まず間違いなく受け継いじゃダメな二人だとおれは思うんだがな。


「大佐。リッパー2が標的の上空に到着。標的、進路そのまま」


「わかった。哨戒艇は大きく迂回して標的の逃げ道を塞げ。艤装な進捗は?」


「アルデュールが遅れているそうです」


「急がせろ」


「了解!」


 手際がいいな。もしかして、このことを予測して用意してたのかな?


 おれもマーメイド型偵察ドローンを放っており、やっとこさ半魚人の船を捕らえた。


 カナハとルヴィーもマーメイドスーツで泳いでいったようで、反応が近づいてきていた。


 半魚人の船は前回と同じタイプのもので、やはり空中に浮いていた。


 ……プリッシュの話では宇宙人ってことだから、反重力的なもので浮いているんだろうか……?


 空にはリッパー2とやらが飛んでおり、肉眼では見えない高度で大きく旋回していた。


 レーダー的なものはなし。ただ、空中を翔る船、ってことみたいだな。


「銅羅町まで十キロを切りました」


 海上で、じゃなく上陸させて作戦のようだ。


 半魚人の船を追うと、港が緑に包まれているのに気がついた。艤装って、迷彩柄のシートを被せていたかねか。


 半魚人が不審に思うんじゃないかと思ったが、船の速度はそのまま。見えてないのか?


 あと三百メートルと言うところで半魚人の船の周りから黒いものが浮かび上がった。


「撃て!」


 と、ヘイウット大佐が命令を出した。


 違う駆逐艦からハープーン(って言ったっけ?)が発射され、半魚人の船──ではなく、浮かび上がってきた黒いものに当たった。


 ……ハープーンって対艦ミサイルじゃなかったっけ……?


 水柱がいくつも上がり、半魚人の船が見えなくなった。


「照準、任せる。連射!」


 艦砲が火を吹き、半魚人の船へと連続で弾を放った。豪快やな~。


「止め! 掃海艇、確認!」


 生命反応はなし。ただ、船は健在のようで、水柱から出てきた。


 ……やはり反重力的なもので浮いているのか? 砲弾が反発されるように反れたぞ……。


「アルズ大尉。迎え撃て」


 慌てず騒がず港に待機させていた部隊に命令を出すヘイウット大佐。戦い慣れてること。


「なにか大きな戦いに参加したことがおありで?」


 この落ち着きは戦って培ってきたものだ。


「さすがタカオサ様。わかりますか」


「まあ、おれも戦いの中で生きてきましたからな」


「ヤシロア沖大海戦と呼ばれる戦いに参加しました」


 おそらくハルナに関係した戦いだろう。この世界にカイナーズと張り合えそうなのは転生者くらいだからな。


「勉強になりました」


 カイナーズとは戦ってはダメだってな。

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