第203話 シーカイナーズ
……まさか、転生してからエンタープライズに乗ろうとは夢にも思わなかったぜ……。
「父さん。乗艦許可が出たから指示するところに降りて」
エンタープライズと通信はできるが、こちらは素人。米の国の手順を言われてもわからない。カナハに指示されたほうが安心だ。
まあ、指示と言っても「ここに降りて」と
「カナハにはもう少し教育を施したほうがいいんじゃないか?」
「……あ、ああ。そうするよ……」
教育は大事だと痛感したよ。
光月はヘリのように難しい操縦ではないので、誘導なしにあっさりと着艦する。
外に出ると、カイナーズの誘導員(ドワーフか?)に出迎えられた。
「ラフィーヌへようこそ。歓迎します」
ラフィーヌ? エンタープライズじゃないんだ。ちょっとがっかり……。
「望月タカオサです。お邪魔します」
敬礼で迎えられたが、こちらは軍人でもないので一礼して返した。
「わたしはハルバ曹長です。案内役を任されました」
「はい。よろしくお願いします」
「では、ご案内させていただきます」
ハルバ曹長のあとに続き司令塔に入り、下へと下った。
……いろんな種族がいるもんだ……。
空母に鬼やらドワーフやら青肌のヤツやら本当にいろんな種族が乗っている。つーか、自分が今どこにいるかわからなくなるな……。
ハルバ曹長に案内されたところは高級士官が使用する食堂で、そこには立派な制服を着た白い肌に白い髪の美女と軍服を着た赤鬼、そして、ルビーがいた。
「シーカイナーズ総司令官のレガロと申します」
と、白い肌に白い髪の美女。
「ラフィーヌの艦長、シゲイツです」
軍服を着た赤鬼。
前世の記憶があるだけにこの状況を飲み込むことができず、すぐに返せず、斜め背後にいるアイリに小突かれた。
「──望月家当主、タカオサです。こちらはおれの妻のアイリです」
「アイリと申します」
おれは軽く頭を下げ、アイリは敬礼で応えた。
「ご足労ありがとうございます。本来ならこちらからお伺いするのが筋でしょうが、カナハ様のお言葉に甘えさせていただきました」
「いえ。お気になさらず。この船に興味がありましたので、許可いただけて幸いです」
カイナーズの上層にはおれが転生者とバレてるだろうが、前世を探る情報は控えておくのが吉だろう。まあ、そんな大した前世ではなかったけど。
席を勧められ、対面形式な感じになる。
「白茶でよろしいですか?」
「ええ。お願いします」
白茶とはまた高級なものを出してくれる。金持ちでもなかなか飲めないものだぞ。
出された白茶をいただき、落ち着いた頃にゼルフィング商会のサイレイトさんとオン商会のリュウランさんがやって来た。
……商売の話か……。
「お久しぶりです、タカオサさん」
「ええ。お久しぶりです。お忙しいようですね」
「お陰様で飛行艇──朝日あさひを運ぶのでてんてこ舞いですよ」
今も魔石を投入して二十四時間体制で朝日を創り出している。まったく、米の国のような容赦のなさだぜ。
「では、今回のことはそのことですか?」
「さすがタカオサさん。話が早くて助かります」
無駄に話して言質取られるのも嫌だしな。早目に切り上げるのか賢い商談だ。
「レガロさん。まずそちらからどうぞ。我々はあとで構いませんので」
「ありがとうございます。べー様にはよろしくお伝えください。ラフィーヌはいつでも乗艦を歓迎します」
「はい。必ずお伝えします」
そのべーとやらはカイナーズでも別格な扱いらしいな。いったいどんな人物なんだ?
「タカオサ様。この町に艦を入れる手伝いをしていただけないでしょうか? お礼は充分にさせていただきます」
「それはカイナーズ単独でのお願いでしょうか?」
まあ、それぞれの勢力は底で繋がっているだろうがな。
「はい。カイナーズ単独でのお願いです」
わざわざ強調すると言うことは、ゼルフィング商会やオン商会とは離れていると示すため、か? 真意がよくわからん。
「この国は、まだ他種族に寛容ではないことを理解してますか?」
「はい。ですから、他種族に寛容なタカオサ様にお願いしております」
確実におれのこと調べ尽くしてるな。どんな情報収集力してんだよ、カイナーズってのはよぉ……。
「おれは国から外れてる身。どこまで手伝えるかわかりませんが、天下に名を轟かせるカイナーズと繋がりができるなら喜んでお手伝いさせていただきます」
この世界で一番敵にしてはならない集団だ。今は損をしてでも仲良くしておくべきだ。
「ありがとうございます。わたしたちにできることがあるならなんなりと申しつけてください。可能な限りお応えしますので」
「では、人手をお貸し願いたい。町を復興しようにも人がいなくて困っております。おれは三賀町の町長から権限を得てますのでそれなりの便宜は図れると思いますよ」
国が動き出す前に銅羅町を掌握する。そのご協力をお願いしますよ。
「お任せください。近くの艦隊を呼べば千人はご用意できると思います」
もう侵略だよ! と言う言葉が出そうなのを無理矢理飲み込んだ。
「それは頼もしい限りです。よろしくお願いします」
「はい。こちらこそよろしくお願いします」
まずは良好な関係が築けたことに安堵だな。ふぅ~。
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