第97話 雇い入れ
今度こそ、と外に出たら行商隊の頭らしき人物たちに囲まれた。なんだよ、いったい?
「あんた、タナって言うじいさんの雇い主だよな」
代表なのか、五十半ばのいかにも行商一筋って男が話しかけてきた。
「ああ。そうだが?」
そう答えると、行商隊の頭らしき人物たちが目を配らせ合った。
「
え? はぁ? どう言うことだよ。なんで行商隊が……って、通れないからか。
国が流通を支配しているとは言え、行商隊は役人ではなく、下請け業者。どこかの商会に属しているか、専門でやっているかだ。国から報酬は出ても補償はないのだ。
「それは国の管轄じゃないのか? 災害とは言え、流通を滞らせた時点で国の責任。国が行商隊に損害を与えたと同じこと。放置は無責任だろうが」
まあ、そんな責任を負うような立派な国家運営などしてないだろうが、知らぬ存ぜぬでは反発心や離反心が出てくる。放置は悪手だぞ。
「すまぬ。町には行商隊を世話する余裕がないのだ」
副事官殿が申し訳なさそうに言ってきた。
そう言われたらこちはなにも言えない。副事官殿もこの状況に苦慮しているのだからな。
「荷はなんなんです?」
行商隊の頭に尋ねる。
「芋や布、豆などだ」
「それでは腐ることを理由に売ることもできませんか」
まあ、腐るものはそう頻繁に運んだりはしないがよ。
「仮令腐るものでも許可なく売り払ったら首が飛ぶよ」
融通の利かない国だよ。いや、融通の利く国なんてないか。強者の理論で動いているのだから。
「腐らしてダメにするのはお咎めなしなんですか?」
とは副事官殿に尋ねる。
腐らないものとは言え、これから暑くなる。芋でも豆でも炎天下のもとに置いたら痛めるぞ。
「それは、引き取り手の判断だな」
「つまり、行商隊が悪いってことになるんですね」
その返しに副事官殿は答えない。管轄外のことだからか、引き取り手が腐っているからか、まあ、両方だろうよ。
「行商隊としては思うところはないんですか?」
こちらも答えない。まあ、副事官殿がいるのに、思うところを口にはできないか。
「お役所仕事はどこも同じか」
マシな役人もいるにはいるが、未熟な国家では腐った役人が多い。おれも傭兵時代は安く使われたものさ。
「三賀町はまともなのに残念です」
幾分かは、だけどな。
「わかった。働きたいと言うなら雇うさ。あそこら一帯均したいしな」
魔力はあれどマンパワーが増えるのは助かる。
「しっかり働いてくれるのなら給金と飯は出すし、荷が腐らないようにもしてやるよ」
「助かる」
行商隊の頭連中が頭を下げた。
「そう言えば、護衛の傭兵団はどうするのです? 解雇ですか?」
違約金を払う必要はあるが、抱え込んでも新たな契約金を払わなくてはならない。どちらを選んでも損しかしないってのが泣けてくるぜ。
「いや、傭兵団は町で雇う。
なるほど。それで行商隊の損失を救ってやるのか。傭兵団も違約金や契約金をもらっても損だからな。それなら国の依頼を受けたほうが儲けにはなるか。
「わかりました。傭兵団はそちらにお任せします」
「感謝する」
副事官殿が頭を下げる。こい言うわかる役人ばかりなら、この国もマシになるんだがな。
まあ、国のことは国の者に任せるとして、こちらは行商隊の連中をなんとかせんと。
「行商隊は何隊で何人がおれに雇われます?」
「雇ってもらいたいのは三隊で四十六人だ」
纏めていたのか、すぐに口にした。
残りは
「では、タナ爺がいた場所に荷馬車を移してください。馬は一ヶ所に集めて、伐採した木で簡易的な柵を作り、まずは夜営の準備をお願いします。あの辺は魔物避け魔法を施してあるので心配はありませんので」
偵察ドローンを放ち、自動防衛柱を設置してある。余程の魔物でもなければ突破はできまいて。
「詳しいことはタナ爺から聞いてください。あそこ一帯はでタナ爺に任せてあるんで」
開拓する場所は紐で示し、安全圏は教えてある。水も道具も十二分に揃えてある。ニ、三日は自分たちが住む場所を整えてくれ、だ。
……今になっても通れないってことは、相当の被害が出たと言うこと。下手したら数ヶ月かかるかもな……。
最悪でも秋までは開通させるだろう。冬越しの食料を運ばなくちゃならんのだからよ。
「サイロさん。広場の中央を空けててください。村長。積み替えに
あれやこれやと指示を出し、行商を連れて我が家へと戻った。
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