光の家族 膨大な魔力で世を救う!
タカハシあん
第1話 転生
どうやらオレは死んだようだ。
往年三十六歳。我が人生に悔いなし──といえるほど満足した人生ではなかったが、それほど未練があるわけではない。
ただあるとすれば結婚したかったなぁ~ってくらい。まあ、独身もそれなりに楽しかったけどさ。
いい人生でした。さようなら~。
──いえ、まだ終わらないでください。まだ続きがあるので。
どちら様で?
と言うか、ここはどこ? なんか説明できないところ? なのかもわからない。ただ、意識だけがはっきりしていた。
──わかりやすく言えば世界の管理者です。なんなら神でも構いませんよ。あなたが納得できる存在ではありませんから。
なんかよくわからないが、まあ、こんな状況で話しかけてくるんだから神さまとして認識しておきます。
──はい。それで構いませんよ。
では、神さま。天国一択でお願いします。
これでも真面目に、犯罪を冒さず生きて参りました。まあ、多少の軽犯罪はしちゃったかも知れませんが、地獄に落ちるようなことはしてません。天国でお願いします!
肉体の感覚がないので精神的土下座をする。
──いえ、申し訳ありませんが、天国にはいけません。もちろん、地獄もです。といいますか、天国も地獄もありませんから。
え、そうなの!? ちょっとショック!
──まあ、天国や地獄は人が生み出した妄想ですからね。
死んでから知る衝撃の事実。下界に向かって真実を叫びてー!
──まったく、特異点が集まりすぎです。
はい? 特異点ですか?
──いえ、こちらのことです。それより、あなたの死はこちらの不手際。お詫びに三つの願いを叶えて転生させます。
三つの願い? 転生、ですか? 意味がわからないんですけど。
──あなたたちの死は真理から外れるばかりか、この世界からの輪廻から外れてしまいました。
ますます意味がわからないのですけど。
──このままではこの世界の真理が崩れ、輪廻が狂います。それを回避するために違う世界へと送るのです。
それではあちらの世界が困るのでは?
──修正するよりは新しいところに追加するほうが簡単なのです。
なんか、いいわけっぽく聞こえるのは気のせいですか?
──あなたにわかるようにいえばそうなるだけです。人に真理は理解できません。
そ、そうですか。まあ、知ったところでネットに流せるわけじゃありませんしね、そうだと納得しておきます。
──そうしていただけると助かります。それで、どんな願いを求めますか? 能力でも道具でも環境でも構いませんよ。ただ、強すぎる願いはあちらの神に介入されるのでお気をつけください。
なんでもいいといいながらなんでもはダメですか。そもそも、新しく生き返るのに、三つの願いなんて必要なんですか? それとも今の記憶を持ったまま転生できるんですか?
──ふふ。あなたは賢い方のようですね。はい、記憶は消去され、新しい魂となります。
だったら三つの願いなんてしたって意味はないでしょう。今の自分はなくなるんですから。
──願いで記憶を受け継ぐことも可能ですよ。
なるへそ。そう言うのもありですか。となると、問題はさらにややっこしくなりますね。
転生する先はどのようなところになるんですか? 戦争とか疫病とか流行っている世界とかご勘弁なんですが。
──文明はあなたが生きた世界より遅れ、多種多様な種族がいて魔法魔術がある世界ですね。もちろん、戦争も疫病もありますよ。
あまり、転生したくない世界のようですね。現代に生きた自分には生き残れる自信がありません……。
──そのための三つの願いです。生き残れるようなものを願ってください。
なにか、記憶をなくしての転生のほうが最良の選択だと思うのは気のせいでしょうか?
──まあ、それはそれで選択の一つですよ。そうしますか?
そこで「はい」と返事ができるほど、自分は達観していない。欲もあれば夢もある。魔法のある世界で冒険したい気持ちもなくらない。いや、あると叫ぼう。
だが、三十六年も生きたら自己保身も強くなる。変わらない今日。変わらない明日を求めてしまう。
夢と現実の狭間では現実が勝ち、夢は隅に追いやられてしまうものだ。だが、実際、夢と現実の狭間に立ち、夢を叶える手段があるとなれば夢が勝つ。どんどん夢へと向かいたくなる。
いや、落ち着け、自分。考えろ、自分。実質、叶えられる願いは二つ。その二つが明暗を分けるのだ。
よし。一つ目は記憶を持っての転生。二つ目は万能変身能力。三つ目はレベルアップできる体にします。
細かい設定は心をお読みください、神さま。
──わかりました。ただ、それだとあちらの神に介入されるでしょうね。どう介入してくるからわかりませんが。
まあ、ダメもとです。なればラッキー。ダメなら諦めますよ。
──わかりました。では転生させますね。
はい。お世話になりました。
──では、よき来世を
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