第20話 洗濯

フネを家に送り、濡れた服を、真新しい洗濯機で洗濯した。他に洗濯したいものはないかと聞くと。待ってて、と言って何枚か衣類を持ってきた。

フネの家はあちらこちらに手摺があって、慣れた家ならフネも自然にバランスをとって移動できる。

今日は慣れないところを連れ回し、疲れさせてしまったかな。と心配になった。

私の心配をよそにフネは「また、アンタと出かけたいね。今度は服を見に連れてってよ。アンタの部屋で見た薄くて軽い綿入れが欲しいんだよ」「綿入れ?」「ほれ、あっただろう、ツルツルした生地の、こうなってるやつ」と手をふわんふわんと動かした。

「ああ、ユニクロの? ダウンジャケット? あんなのフネさんの服の袖ぐらいの値段で買えますよ。」「え?まさか!? 本当かい??」

ワハハ、またあのびっくり顔をしている。

フネのこの顔がもっと見たいよ。

フネが知らない新しい物を沢山見せてあげたい。

町の景色の移り変わりも、一緒に見たいな。桜が咲き、風が散らし、緑色の葉が日陰を作り、紫陽花が咲いて、蝉がなき、木々の葉が色付き、落ち葉になって、楓の並木にイルミネーションが灯り、、、。

そんな中を、フネを押して歩く自分の姿を、私は想像していた。


フネの家の洗濯機は高性能な新しいもので、フネに聞くと「息子が買って置いていった」と言うが、なるほどフネには難しかった。

ボタンがいっぱいでわかりにくく、ドラム式は、物を持って屈むことが出来ないフネには不向きなのだ。

うまく使えば乾燥までしてくれる便利な物だろうが、フネにとっては無いのと同じ。

だからフネは、風呂に入ったついでに洗うって言ってたのか。一度あのガサガサタオル達も洗濯機で洗ってあげたいな。

洗濯室をよく見ると、エアコンがついていて、部屋ごと乾燥できるようになっていた。

ハンガーを吊るせるようにいくつもポールが渡してある。

これいいじゃん。タイマーセットしたら次に来たときはすっかり乾いているわ。


フネはこんなに便利な家に住みながら、なんで不便に暮らしているんだろう。

独りで暮らすっていうのは、自由なようで、不自由なのかもしれないな。


洗濯物を干しながら頭の中をいろんな事が駆け巡る。洗濯室はきれいにシワを伸ばした洗濯物でいっぱいになった。七夕まつりみたいに…。




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