オオカミ少年⇔ブンガク少女~罰ゲームで根暗女子に告白したら、何故か付き合う事になってしまった~
村木友静
プロローグ
「ずっと前から好きでした……良かったら……その……付き合ってもらえない……かな?」
夏の終わりと秋の始まりの狭間に位置する10月初旬の図書室には、暗すぎず、明るすぎない具合のオレンジ色の太陽の光と、日に焼けた紙の匂いが充満している。
放課後の図書室には、彼と彼女以外には誰も存在しない。
本で作られた密室に、少年少女の息遣いが木霊する。
想いを告げた彼は、ただ真っ直ぐに、無機質な瞳で彼女を見つめていた。
期待はしてない答えを、終わりの決まった結末を、目の前の彼女から告げられるのをただひたすらに待っていた。
想いを告げられた彼女は、ただ茫然とその場に立ち尽くしていた。
動揺か、はたまた失望か、それとも……
何かの事情があって、何かの理由があって、彼女は口を閉ざしていた。
まるで、彼の想いに答えるつもりがないみたいに。
「あの、返事は……」
痺れを切らした彼は、思わず彼女に声をかけた。
それがルール違反である事も、犯してはいけない禁忌である事も分かった上で、彼は彼女に返答をせがんだ。
しかし、それでも彼女が言葉を発する事はなかった。
返答を拒否するみたいに。
まるで、声が出ないみたいに。
居心地の悪い空気が、本の世界に充満していく。
彼は罪悪感に打ちひしがれていた。
自分が彼女に嫌な思いをさせているのだろうと。
自分が彼女に気まずい空気を味わせているのだろうと。
そう、焦燥感に身を焼かれていた。
そうして我慢の限界を迎えた彼は、一歩身を乗り出して彼女の前に立った。
「ごめん、急に変な事言って。実は……」
罪を詫び、真実を伝えようとしたその時だった。
彼は、ある違和感に気がついた。
目の前にいる、癖のある髪質をした同級生の女の子。
今しがた、自分が好きだと想いを告げた女の子。
その女の子から、覚醒した意識を感じられない事。
鼻筋に掛けられた眼鏡のレンズの先にあるはずの瞳が開いていない事。
その事実に、彼は気がついてしまった。
「……秋月さん?」
彼は驚き、彼女の肩をゆさゆさと揺らしながら尋ねた。
「え……うそ……」
そうして、知る。
「立ったまま気絶してる……」
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