第2話 マスター

 ある日のこと、昼御飯を食べようと教会から出ると向こうから、キャットハウスのマスターが歩いてくる。身長は2mを越え、腕の太さは丸太。そして、顔は髭もじゃでモヒカン。目はとても優しいが。それ以外は、ほぼ熊。



 でも、ただの美味しい料理を作るだけの心優しいマスターだ。



「先生、お昼ごはんですか?」


「はい、ちょっと食事に行こうと。いつも思うんですけど、マスターが昼御飯作ってくれたら、良いんですけどね」


「えっ、ランチもやれってことですか? やめてくださいよ。繊細な僕は死んじゃいますよ」


 どこが、繊細なのだろう? 心か?


「そうなんですか。今日も行くのでよろしくお願いいたします」


「わかりました。お待ちしています」



 そう、話していると、あまり治安の良くないザーマシティ、道の真ん中で話していた僕達もいけないのだが。



「おいおいおい! こんな往来で、呑気に話してんじゃねえよ! 邪魔だ、どけ、じじい!」



 若い2人組の冒険者が、絡んできた。



「すみません…」



 わたしが謝って、どこうとした瞬間



「じゃかしい! 貴様、何のつもりだ! 天下の往来で、何をしようと勝手だろ!」



 鬼だ、鬼がいる。マスターは、若い2人の冒険者の胸ぐらを片手ずつで、掴んで空中に持ち上げていた。そして、マスターの力で、締め上げられ2人の冒険者の顔はみるみる青くなっていく。


「なんとか言ったらどうだ! われ!」



 いや、マスター。たぶん何も言えないよ彼ら。泡吹いてるし。そして、マスターは、



「これに懲りたら、いきがるんじゃねえぞ!」



 と言いつつ、地面に投げつけた。血を吹き出しながら、壊れた人形のように、不気味な形態で、転がっていった。ああ、死んだな。しょうがない。ただ働きだけど。



 僕は近づくと、神聖魔法をかける。神の力で、肉体を復活させ、魂を戻す。2人の顔色が、元に戻り目を覚ました。



「あれっ、俺たちどうして? 生きてる」


「もう、大丈夫です。神聖魔法で、怪我は治しておきました。」



 まあ、本当は、死んでるのを生き返らせたんだけどね。すると、2人の顔が再度青くなっていく。ん? 魔法失敗したか?



「お、お、鬼!」


「お、お、お、オーガ!」



 僕の後ろを見て何か言っている。どうしたんだろ? 振り返ると、マスターが立っていた。



「先生、怪我治してあげたんですか? 優しいですね」


「いや、仕事ですから」



「ひ~、命ばかりは!」


 そう言って、2人は走り去ろうと立ち上がった。すると、マスターが


「おい! 金を出せ!」


「は、はい!」



 そう言うと、2人は財布を放り投げて去っていった。



「なんだあいつら? 財布ごと、置いて行きやがった。先生に治してもらった治療費だせって言ったのに。まあ、しょうがない」


 マスターは、財布を拾うと中を確認する。


 そして、



「しばらく、飲み代もただになりそうですよ、先生」

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