1-28 開業、殴られ屋ダリル

「や~、ランヌも中々人が沢山いますね~ 何だか怖い人達ばかりですけど·····」


普段のランヌは数多の古代の遺跡や権威ある教会が多くあるため教会関係者や巡礼者、観光客で溢れているのだが、本日はまた様子が違った──


「すごいねこれ、多分ここにいる全員王都に向かう国内外から集まった傭兵達だよ、マリー」


プルムはマリーの肩を叩いて、励ますように語りかける。


「ええ、そのようね。お父様は今回の王都防衛戦に参加した者には多額の報償金を払う約束をしているからそれ目当てだろうけど·····」


「国のためだろうが、金のためだろうが王都を守るという目的は一緒さ! もっと素直に喜びなよ~」


「そんなことよりさっさと王都に行くぞッッ!! もう時間が····Zzzzzzz」


「あぁ、また立ったまま寝ちゃいましたよ。ダリルさん····」


ダリル一行は野宿を挟みメッサからここ遺跡都市ランヌへ到着したのたが、重大な問題が二点あったッッッ!!


「昨日の夕方にやっと起きたのは良いけど、何なんですかこれ? 数十分おきに寝たり起きたり繰り返してますよ?」


「そうよね······私なんか目がずっと開いているから気づかなかったけど、会話している途中にいきなり眠り出したりしてたわ·····」


そう!! ダリルは未だに疲労感を完全に拭えておらず、小まめに! そして唐突に! 深い眠りに強制的に堕ちてしまうのだッッ!!


そしてダリルは今もまさに、目をかっぴらき両腕を組んで仁王立ちしながらスヤスヤと寝ているのである。


「こうなるとダリルをここに置いてどっかに行くわけにもいかないし困ったわね····· プルムちゃんに似合う可愛い服、買いに行こうと思ったのに····」


「·····マリー様、それはダリルさんが起きていても不可能ですよ····」


そう言うとベロニカは最早何も入っていない財布の逆さまにしてアピールした。


二つ目の問題。そう! 金欠であるッ!! 元々はベロニカ本人とダリルの二人分しか給付金を支給されていなかったのにあれよこれよと気が付けば四人に増え、しかも半端ないダリルによる食費によって王都手前にして資金は底を着いたのだッッッッ!!!


「昼の今から出発すれば、明日の今頃には王都に到着するから行けるといえば行けるけど、流石に飯抜きはきついなぁ~」

 

「全くですよ···· 誰かさんが少しでもお金を持っていればこんなことには···」


露骨にプルムを睨むベロニカ。


「だ、そうだよ。マ──」


「お前のことだぁぁぁ!! 何度も言わせるかぁぁぁ!!!」


プルムによるマリーへのキラーパスを今度はブロックするベロニカッッッ!!!


「はぁ~ 何か簡単にお金が稼げる仕事ないですかね~」


「簡単にね~」


プルムは考えながら回りを見渡した。辺りには、ある者は愛国心のため、ある者は金と名誉のため、ある者は己の実力を試すため····· それぞれの目的は違えど、ここにいる男と女達は皆間近に迫る魔王と人間達の天下分け目の闘いを前にして滾り、興奮し、その活力をもて余しているように見られ町全体が狂気に近い熱気に包まれていた。


そしてこちらには無敵の肉体を誇り、そして都合よく寝ているムキムキマッチョマンが一人······


悪魔的金儲け方法を思いついたプルムは、不敵な笑みを浮かべながらベロニカとマリーに語りかけた。


「·····二人とも、あったぜ簡単に稼げる方法。ちょっと耳をかせよ──」






「お前聞いたかよ。ラートル大聖堂で修道女が惨殺されていたって話、何でもミンチになっていて酷い状態だったらしいぜ」


「ああ、ひでえ事件だよな。俺がその場にいれば犯人の野郎ぶっ飛ばしてやったのによ」


道を歩く青年二人、彼らもこれからの戦いに想いを馳せ滾っていた。


そんな彼らをプルムのキャッチが襲うッッ!!!


「へいへ~い、そこのお兄さん達! ちょっと寄ってかない? アンタ達もこれからの戦いに滾り過ぎて、我慢出来なくなってきたタチでしょう~ そんなお兄さん達に朗報だ!! 今なら正銅貨一枚でそこに佇む大男を一分間殴り放題ッッッ!! そしてな、な、なんとッッッ!! この大男を時間内で殴り倒せたら、この正銀貨一枚相当オリハルコンの剣をプレゼントだ!! どうだい? やっていかないかい?」───

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