第113話 学園長の力量

 園長室。 魔法学園の代表たる老人 学園長の部屋。


 そこには4人が呼ばれていた。


「さて――――」と学園長は目前に立つ4人をゆっくりと確認する。


「誉れ高き迷宮への先兵として、第一陣として相応しい面構えじゃ。しかし――――」


 視線の先、4人のメンバーは


 ランペイジ・アルシュ


 ミネキリ・エリカ


 ルナ・カーディナルレッド


 そして、ノア・バッドリッチだった。


「我が学園でも飛びぬけて優秀であるアルシュくんとエリカくん。君らには、優秀な仲間の選抜をするように言ったが……ワシは2人で2つのPTを作るとばかり……しかも、2人が1年生か。これはワシでも予想外じゃわなぁ……」


「やれやれ」と学園長は、どこか残念がるよう呟いた。


 それから――――


「き、消えた!」とエリカ生徒会長の声。


 それに対して戦闘特化型タイプとも言えるアルシュ先輩が素早く


「後ろだ!」と声に出して反応する。


 学園長は4人の後ろ。最後尾に回り、手にした杖を一番後ろの生徒に向ける。


 一番後ろの生徒。それは、ノア・バッドリッチだった。


 学園長は、ノアの細い首筋を杖で打ち付けた。 ――――少なくとも学園長本人はそのつもりだった。 

 

 昏睡させるため一撃。 


 (手加減もなし。どうせ迷宮に行くのだから、実力がなければ、どうせ死ぬのだから……ならば、ここで死んでも同じことよ)


 そんな学園長の思惑は――――


「うひょ!」と自身が一回転する事で消し飛ばされた。


「魔法……とは明らかに違う。初めて見る理合じゃな!」


 着地と同時に杖による突き。 それはノアの喉元に突き刺さる。


 だが――――


「むむむ、手ごたえが皆無! 間合いを狂わされたか……このワシが!」


 圧力プレッシャー


 それが熱風になってノアに届く。 


「学園長……生徒相手に本気とは大人気ないですね」


「ぬかせ、小娘が! ワシの本気を拝みたいか!」


 魔力。


 それが直接、目に見えるように世界が歪む。


(ひぇ~! この圧力。書文を相手にする時みたいだ。 ……だったら、イケる!)


 だが、学園長は動き出す直前で足を止めた。


「おっと……つい、うっかり本気を出しそうになったわ。 ワシとした事が、まだまだ若いかのう」


「あら……もうおしまいですか? 学園長?」


「うむ、流石に時期が悪い。 怪我をさせたら迷宮に送れぬからのう。戻ってきたら、もう一度遊ぶか? 小娘」    


「その時は、ぜひ」とノアは頭を下げる。


「胆力、実力、共によし! アルシュ! エリカ! この逸材を取り合い、逃さぬために手を取ったか。 その選択は正しいぞ!」


「「はい」」と2人は学園長に頭を下げた。


「迷宮開放は、明日の午前中! 我が学園をあげて見送りになる。 それと、短い期間であるが、必要な装備を用意せよ。 金はワシに請求すればいいぞ」


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・


 翌日。 


 学園長の宣言通りに壮大な見送りが開始された。


 そして、迷宮の入り口。 魔法による結界が術士によって解かれる。


 それと同時に、迷宮から冷気が外へ向かう。


 さらに死臭。 血を肉が腐った臭い。 それがノアに取って――――


 「美味しそうな匂いだ」


 そう呟くノアは、自然と笑みを零していた。


―――――――――――――――――――――――


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