第91話 仲直り計画
「それで、どうしてアルシュ先輩は生徒会長と仲が悪いんですか?」
「おっと単刀直入できたね」と誤魔化すようにアルシュ先輩は笑った。
「先輩、いくらなんでも、毎回廊下で生徒会長と戦っているわけじゃ……」
「あははは……」とさらに笑って誤魔化しを入れられた。
「ま、毎回、戦っているのですか……」
「う~ん 僕は戦いたいわけじゃないんだけどエリカが……あぁ、エリカってのは彼女の本名さ」
(ん? エリカってどこかで聞いたことあるような)
「へぇ、生徒会長ってエリカって名前なんですね」とルナ。
(ルナちゃんも知らなかったのか。それじゃ、気のせいか)
「それじゃ生徒会長の方から、喧嘩を売ってきてるわけですね」
「うん、喧嘩を売るって……ノアちゃんって見た目と違って、意外と蛮性の高い言葉を使うんだね」
「蛮性の高いって独特の言い回しですね……いやいや、そうじゃなくて。いや、ルナちゃんも私の性別の話は今いいから」
「そうだね。昔は仲が良かっただけど……いつからだろうね。エリカと顔を合わせると喧嘩ばかりになっちゃったのは」とアルシュ先輩は、どこか憂いを秘めた表情を見せた。
それは悲し気であり――――
「先輩は生徒会長と幼馴染だったのですか?」
「幼馴染……うん、そうだね。 よく森で拾った木の棒で魔剣使いごっこだ! って笑い合った……はずなんだけどなぁ」
「それじゃ!」と前のめりにルナ。
「私とノアさんとで、2人を仲直りする作戦を立てましょう!」
「ん? んんん!?」とノア。
そもそも、ノアは魔剣研究部や生徒会に強い思い入れがあるわけではない。
誘われているから、どうしたものか? と考えているだけ。
何も接点がなければ自分から進んで近づく事はなかったのだ。
(だから、どうしても深く踏み込むつもりはなかったのだけれども……)
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「それでは、第一回チキチキ先輩と生徒会長を仲直りさせよう会議を行いましょう!」
「……それはいいけど、なんでルナちゃんは私の部屋にホワイトボードまで用意してきたのかな?」
「あら? 私の部屋はノアさんほど広くありませんから。それに、こういった計画ならメイドリーさんも必要不可欠なのでは?」
「恐縮ですが、それはどうしてでしょうか?」とメイドリー。
「貴方、あの誉高きバットリッチ家専属の従者であり、なによりノアさんのお目付け役でしょ?」
「あぁ、私の情報探索能力を高く評価してくださっているのですね」
「そうよ! それにノアさんが暴走した時に止めれる人は必要ですからね」
「え!? 私、暴走なんかしないよ!」と抗議の声を上げるノアだったが、
「……」とルナ。
「……」とメイドリー。
「うっうう……無言の圧力がツライよ」
「さて、ノアさんはほっといて……どうして、生徒会長はアルシュ先輩を敵視するようになったのか調べていきましょう」
「そうですね。ならば、さっそく明日から生徒会のメンバーに話しを聞きに行きましょうか」
しかし、ノアは――――
「え? そんな事より直接、生徒会長に理由を聞きに行こうよ」
「……」と2人はノアを見た。
「なんといいますか……」
「いいえ、ルナさま。おっしゃいたい事はわかります」
「2人共、何を言いたいのかな?」
「失礼ながらお嬢様は――――」
「ノアさんは――――」
「猪突猛進にもほどがあります!」
そんな2人から攻められるノアだったが、結局は彼女の言う通りに生徒会長に話しを聞く予定になるのだった。
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