第92話 魔剣研究部部室の謎

 「それで生徒会長は、どうしてアルシュ先輩の事が嫌いなんですか?」


 「ちょっ! いきなり貴方……いえ、べ、別に嫌いなんかじゃないわよ」


 まるでツンデレのような言葉で生徒会長は視線をノアから外した。


 ここは生徒会室。 時間は放課後。


 さらに言えば、庶務、会計、書記、副会長など作業中の生徒もいる。


 みな、ノアの言葉に作業中の手は止まっているが……


「貴方ね! 生徒会室に来るから勧誘を受けるのかと思えば……なるほど、わかったわ。アルシュに懐柔されたわけね」


「いえ、私はアルシュ先輩と生徒会長が幼馴染で仲良しだったと聞いたので、どうして喧嘩ばかりになったのか? 疑問に思ったので聞きに来ました!」


「……聞きに来ました! って遠慮のない子ね。 その行動力は素直に凄いと思うけど」


「あっ、どうもありがとうございます」


「別に純粋に誉めてるわけじゃありませんよ。 それで、なんでアルシュと喧嘩しているのか? でしたね」


「はい、何かわけがあるんですか?」


「……あなた、昨日会った後にアルシュの部屋に行ったのかしら?」


「え? あっはい、見に行きましたよ」


「どう思いましたか?」


「どう? う~ん 凄い豪華でしたね」


「そうよね。それに学園の生徒が私用で使える部屋なんて、本当はあり得ないと思いません?」


「それは……え? それが原因なのですか? 学園が個人を優遇している……だから、大好きな幼馴染でも許せない――――いや、違うな。大好きな幼馴染だからこそ許せないのか」


「貴方! 姿が……いえ、目の錯覚でした。まるで男性のような喋り方でしたので」


「? あぁ、集中しているとつい昔の喋り方に戻ってしまうので、気にしないでください。癖みたいなものです」


「変な子ね。 それと……べ、別に大好きな幼馴染ってわけじゃないのだからね」


「すごい! 典型的なツンデレセリフだ!」


「つ、ツンデレ? 何かしら、それ?」


「ん~ 普段はツンツン、仲良くなるとデレデレって感じだったり、本当は好きなのに素直になれない乙女心を現した言葉です」


「へぇ~ そんな言葉が……いえ、それだと私がアルシュにデレデレだったり、素直になれない乙女みたいじゃないですか!」


「え? 違うのですか?」


「違います!」


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・


「こんな感じで話してきました」


「君は、物怖じしないと言うか……本当にエリカに、そんな事を言ったのかい?」


 ノアは生徒会室を出た、その足でアルシュ先輩の部屋に来た。


「生徒会長はアルシュ先輩を嫌ってるわけじゃなくて、その取り巻く環境……と言うか。特別扱いされている事を良しとしているのに怒ってるみたいですね」


「そうか、嫌ってるわけじゃないのか。よかった――――けど、変だな」


「え?」


「だって部活の予算って、普通は生徒会から出てはずだよ」


「あっ! 確かにそうだ。 え?じゃ……」


「うん、この部屋の予算はエリカが決めてる。 少なくとも僕はそう思っていたんだ」


「つまり……あれ? どういう事なんだろう?」


「う~ん、この部屋は僕もエリカも知らない所からお金が流れてきている」


「そんな事あり得ますか? 部屋の維持費だって、相当な金額になりますよ」


「わからない。そもそも、誰が何の目的で……僕自身が気づかないように僕にお金を与えているのか?」


そのアルシュ先輩の言葉に薄ら寒い物を感じるノアだった。

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