この思いが届かないように

天白屋

第1話 目を覚ますいつもの朝

ピピピピ

「ん......朝かぁ....」


まだ視界がぼやける、目覚ましのアラームで目を覚ました


ノソノソと立ち上がり顔を洗いに行く


まだ冬だからだろうか水道水が冷たい


段々と意識が覚醒してくる


「いつも通り腐った目をしてんな....w」


そんな独り言を誰もいない家でつぶやく


「今日から新しい..職場か..」

新生活の幕開けなんてそんなたいしたもんじゃない


大学まででて教師になったのにやめただけ


行き場もなくダラダラとしていた時

親が金持ちの親戚に頼んでお手伝いさんとして

雇ってくれることになったらしい


正直お節介だが仕事がないよりはマシだろうということで

了承した


真新しい制服に着替える

おぉ、そんな声をあげてしまうほどかっこいい...

似合わないけどな






「でけぇ......」

でかい、家がでかい、デカすぎてヤバい


「とりあえずチャイムならして入るか」

ピンポ-ン


「.....はいどなた様でしょうか」


「今日からここでお世話になります湊(ミナト)です」


「ああ..湊様ですねどうぞ」


重厚感のある扉を開け玄関にはいる


まるで本か何かの御屋敷だ.....


「やあよく来てくれたね、待っていたよ湊くん」


「あ...えっと...」


「ああすまない、私がこの家の主、月峯貴春つきみねたかはるだ」


「あ...その..本日よりここでお世話になります湊凜人みなとりんとです....雇っていただけて本当にありがとうございます....」


「いやいや...君のお父さんとは旧知の中でね、君も大きくなったもんだね感慨深いよ」


「私を知っているんですか...?」


「小さい頃、この家に来たことがあるんだ..さすがに覚えていないか」


「申し訳ありません」


「いやあいい、覚えていないのも仕方あるまい」


「こっちに来てくれ」


初っ端から主人の顔を知らなくて失敗したが思いのほか優しい人だ

近くのテーブルに案内された...高級感がすごいな..


「さて、早速仕事の話だが」


「はい」


「実は娘の家庭教師をして欲しくてね、キミ教師をやっていたんだってね」


「....えぇまあ...家庭教師と言いましたが娘さんは何歳なんでしょう」


「君より5歳下の19歳だ」


「大学生を僕が教えれるでしょうか....」


「大丈夫だ、君は自分が思っているより優秀だよ」


「買いかぶりすぎでは?」


「ははは、そうかもしれないね、だが期待している娘は上にいる会いに行きたまえ」


「わかりました」


教師をやめても教える道に進むんだな...


トントン

ハ--イ


元気もいい声だな


「失礼します」


「いらっしゃい!!湊くんだよね!!ね!!」


「あ、あぁ、そうだよ」


「私は月峯カレナっていうの」


「俺は湊凜人、これからよろしく」


「うん!!よろしく!!」


随分...明るい子だな..思わず頬が綻びそうになった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る