第6話 お祭りと彼女が言いたかった言葉

前回のあらすじ

恐怖の姉 川見華菜絵に出会った。

・・・


あの日から2週間後、

僕たちはお祭りに来ていた。

「お待たせー。」

僕と徹馬は私服姿、対する女子二人は浴衣に下駄とお祭りらしい格好だった。

「浴衣よく似合っているよ。」

「そぉーお ありがとう。」

徹馬はさらっと褒めるなぁーー。

「す 水雅君 ど どうかな?」

「お おぉー、似合っているんじゃないか。」

あの日以降 少し恥ずかしさが残ってしまい、今までみたいに話せなくなっていた。

「それじゃあ、見て回ろう!」

それからはいろいろな出店をみてまわった。

射的に金魚すくいにりんご飴に楽しんだ。

さぁー、ここまで呼んでくれた人ならわかるだろう。

そう 楽しいことだけでは終われないのだ。

人混が多くなってきたな。

「あ あの すみません。」

蛍 ぶつかるたびに謝ってるな。これじゃあ、はぐれるかもな。

「蛍、こっちに来いよ。」

「あっはい。ってうわぁ。」

「危ない!」

浴衣でコケそうになる蛍の手を取る。

「あ ありがとう ございます。」

「よかった。それじゃあいこう・・・あれ?」

振り返ったら、そこに徹馬と美菜がいなかった。

「どうしましたか?」

「はぐれたかも。」

「わ 私のせいで。」

「ち 違うから。僕も悪いからさ。と とりあえず電話するね。」

僕は電話をかける。

「もしもしいまどこだ?」

「そっちこそ今どこ?」

「うーん。わかんない。」

「どうすんの?」

下手に動きまわるのは逆にはぐれやすいって聞くからな。

「待ち合わせ場所を決めよう。」

「じゃあ、神社にしよう。私いいスポットしってんだ。」

電話越しに美菜の声が聞こえる。

「わかった。じゃあそこに行ってるぞ!」

「わかった。」

電話をきる。

「どうでしたか?」

「神社に集合だってさ。行くか。」

僕は行く。

「う うん。」

カ カポン カ カポン

「ちょっとまって。」

僕は思わず蛍の手を掴む。

「ど どうしたのかな?」

「足 見せてみろ。」

「えぇ!!」

蛍は驚く。

そんなの声出るんだ。

「いいから。」

「そ そんな エ エッチだよ。」

何を言ってるんだこの子は。

「ほら。やっぱり。」

僕が思った通り、蛍の足は赤くなっていて。

擦り傷が出来ていた。

靴づれみたいなものだ。

「慣れてないものでいっぱい歩いたらそうなるよね。」

「ご ごめんなさい。私。迷惑ばっかりかけて。」

「気にするな。俺も助けてもらったし。」

しかしどうしようか。

「仕方ないか。」

僕は背を向けて中腰になる。

「ほら。」

「え え でも。」

「いいから。ほらほら。」

「うー わ わかった。」

今僕たちの状況を簡単に説明したらおんぶだ。

下手に歩き続けてもあれだからね。

「ご ごめんね。」

「全然大丈夫。てか、蛍軽すぎ もっとご飯食べなよ。」

「ひ ひどいなぁー。」

それからすぐに目的の場所についた。

「ここら辺でいいかな。」

「ありがとう。」

神社には 誰の姿もなかった。

「今日は楽しかったな。」

「うん 楽しかった。」

無言の時間、お祭りの音がこの空間だけは切り離されたように静かだ。

「あの!」

急に大声を出された。

「な なに?」

「お話したいことがあります。」

きゅ 急にどうしたんだろう。

「あの あの!」

「おやぁー そこにいるのは水雅じゃないか。」

この声は まさか!

「ね 姉さん。」

「久しぶり ということでもないか。」

なんで、なんでこんなところに。

「おや、蛍ちゃん、だっけ。二人でお祭りかい?」

「いえ、はぐれちゃって。」

僕は答えられない。本来は、僕が守らないと行けないのに。

「そうかい。私はね、ここでマネージャーと待ち合わせなんだ。」

ちっ!厄介な。

「あっそうだ!前回の質問の答えまだ聞いてなかったね。」

「!」

僕も正直 気になるところではあった。

「君に取って水雅はなんだい?」

「あ あの。」

蛍が口ごもる。

「ね 姉さん。あの。」

「っていうか水雅、君はいつまで怯えてるんだい。

「だいたい、女の子に守ってもらってそれは男としてどうなんだい?それに・・・。」

「! わたしの 私のヒーローをバカにしないで!! わたしの わたしの一番好きなひとをバカにしないで!!」

蛍は叫ぶ。

好き? 好きってなんだ。友達としてなのか?

「それは、友達としてかい?それとも・・・。」

「男の子として です!」

どうやらlikeではなくloveの方だった。

「ふーん。なるほどね。」

「・・・はっ はぅわ。」

ここで蛍は冷静になったらしい。

「わたしにとってこの言葉が聞けただけで十分だ。」

すると、姉さんは電話を取り出す。

「あぁーもしもし 佳代ちゃん。集合場所変更しましょう。入り口付近に変更。 えぇーいいじゃない。じゃあ、向かうよ。」

電話をきる。

「それじゃあ私は行くけど、水雅 男ならしっかりしなよ。」

何か学園ラブコメにおける親友の台詞っぽいことを言って姉さんは去っていった。

「・・・。」

「・・・。」

気まずい無言の時間が流れる。

花火が始まるまで残りわずか。それなのに、徹馬たちの姿は見えない。

「す す 水雅くん!」

「は はい!」

ぎこちないな。

「・・・お話したいことがあります。」

緊張する。

「私は、あなたのことが好きです。わたしの恋人になってくださいませんか。」

最後の方は聞き取りづらかったが、恥ずかしさを振り切って言ってくれたのだろう。

「どうして僕なんだ。」

「・・・最初はわたしのことを助けてくれたときです。」

あの日なのだろう。

「困っていたわたしを助けてくれた。あの時私は 私のヒーローに会えました。」

ヒーローなんてそんないいものではない。

僕はただ、自分のストレスを発散するためにしただけなのだから。

「でも、決め手になったのはプールの時です。」

「プールの?」

「そうです。あの時、本当に楽しかったんです。今まで、そういうところに行ったことなくて不安だったんですが、水雅くんと一緒に遊んでて楽しかったんです。」

そんなことを感じていたのか。確かに楽しかったが。

「それに、水雅くんはイヤかもしれないけど、お姉さんに会って、水雅君が私の後ろに来たときに思ったんです。」

「あの それは忘れてください。」

恥ずかしすぎる。あんなの見せたくはなかった。

「いいえ、忘れません。あの日私はあなたを好きだと気づけたんです。」

「それってどういう?」

普通 そんなことはないだろう。

「ヒーローでも弱いところがある。私は、私のヒーローのそばで支えられたらなって。」

彼女は強いな。僕よりもずっと。

「僕は、強くないよ。ヒーローでもない。」

「いいえ、強いです。」

「僕は好きとかの気持ちはわからないよ。」

「私が教えます。よくいうじゃありませんか。孤独しか知らないヒーローに教えるヒロイン的存在とか。」

「っていうか蛍 キャラがぶれてない?」

「内気な私がこんなことになるなんてビックリしました。水雅くんのせいです。」

「僕なんかでいいの?」

「水雅くんだからいいんです。」

今の僕は恋とか好きとかわからない。

でも、彼女となら見つけられるのだろうか。

「私決めました。」

「な 何を?」

「私は、今のわたしをやめるんです。卒業です。だから、水雅くんもそんな弱気を卒業しましょう。」

二人一緒に。

最後に蛍は付け加えた。

まぁーうん、あれだね。

「こんなどうしようもない僕だけど、よろしくお願いします。」

もしかしたら、見つけられるかもね。














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