結ばれて

「あっ」


シュウシュウが叫ぶ。砂瑠璃ははっとして動きを止める。


「……痛いですか」


砂瑠璃がかすれた声で尋ねる。砂瑠璃の余裕はない。だが、シュウシュウを見ると涙目になっている。砂瑠璃は体を起こしてシュウシュウを見た。だが、もう後戻りもできない。快感と罪悪感とでシュウシュウを見る砂瑠璃は、うっすらと汗をかいている。



シュウシュウもシュウシュウで砂瑠璃のかすれた声にうっとりとした。


痛みに顔を歪めてはいるが、シュウシュウの眼差しも唇も全てが愛しく、顔を見れば砂瑠璃の興奮を高めるだけだった。



「そのまま、砂瑠璃様。そのまま…」



シュウシュウは息を切らしながら小さく囁く。シュウシュウの知らない世界ではあったが、もう全て砂瑠璃のなすがまま。シュウシュウは思った。ずっとこうして欲しかったのだと。もうどうなっても構わないと。



「シュウシュウ様。息を止めないで下さい。そして、私にしっかりとしがみついて下さい」


シュウシュウの細い手が砂瑠璃の背中をぎゅっと抱き締める。砂瑠璃はそれに励まされるかのように、深く深く自分をシュウシュウの中に沈めていく。



シュウシュウは目をとじる。砂瑠璃はもう止められなかった。少しでもシュウシュウが痛くないようにと思ったが、砂瑠璃も無我夢中となり、シュウシュウは初めての快感と痛みにだんだんと身も心も突き上げられていき、目の前に火花が散ったかと思うと、自分の上の砂瑠璃がゆっくりと、暫く動き続けていたがその内に荒い息だけとなり、静かになった。



どれくらい時間が過ぎたのか。シュウシュウは、やっと息がつけるようになり、目をあけた。



高い天井を見上げる。背中が痛む。砂瑠璃の肩に想いを込めて口づけをした。そして、ぎゅっと砂瑠璃を抱き締めた。



砂瑠璃は顔を上げた。そしてシュウシュウをまるで初めてみるかのように、そして大事なものであるかのように眺め、頬に手を触れる。シュウシュウはその手に顔を埋める。


だが、砂瑠璃はシュウシュウを眺めていて、口を開きかけたにも関わらず、急に口を閉じた。 そして砂瑠璃は急に何かを思い出したかのように体を起こした。シュウシュウは驚いて自分も体を起こそうとしたが目眩がした。



「シュウシュウ様」



砂瑠璃が慌てて抱き止める。抱き締められ、シュウシュウは砂瑠璃の腕の中で微笑む。



抱き締められるのなら、幸せな目眩だとシュウシュウは考えた。微笑んで砂瑠璃を見上げたが、先程までの情熱的な砂瑠璃とはうってかわってよそよそしい。人が恐れる、将軍の顔。いや、遠い他人に見えた。シュウシュウは一気に不安になった。



「砂瑠璃様? 」



医務室の戸が開く音がした。その音に二人ははっとする。誰かがこちらにくる。シュウシュウはその時、自分がしたことを全て理解した。砂瑠璃を見た。砂瑠璃は先に気がついていただけであった。



「シュウシュウ様…」



遠くを眺めていた砂瑠璃が決意の目でシュウシュウを眺める。シュウシュウは自分の仕出かしことに泣き出したくなったが、唇をきつく結んだ。砂瑠璃様を守らなくてはとシュウシュウは思う。だが、どうにもならない。私達は二人とも死罪。私のせいで。砂瑠璃様が死ぬ。


さっとシュウシュウは立ち上がる。砂瑠璃は床に座ったままだった。そして小さな人影がこちらに近づいてくる。それは、多英であった。



「多英」



シュウシュウが囁くと、人がいるとは思っていなかった多英が小さな体をびくっと体を飛び上がらせた。そして、シュウシュウと気づくと顔をくしゃっとして笑顔らしきものを見せたが、シュウシュウの側に座り込んでいる砂瑠璃に気がつくと、すぐさま顔色が変わった。



そしてシュウシュウにいきなり背を向けたかと思うと部屋を出ていくかと思いきや、扉に軽く棒を立て、外から開けられないようにしてからつかつかと二人の元へと急いで戻ってきた。



そして、シュウシュウの上気した顔と、砂瑠璃の乱れた髪を見て全てを悟ったのだった。



シュウシュウは全てが見透かされていることに恥ずかしくなり何も言えなかった。そして、多英の顔から何も心情は読み取れず、シュウシュウは黙っていた。



すると多英は近くにあった治療器具であろう、細い木の棒を手にしたかと思うと、砂瑠璃の頭をいきなり殴った。








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