自作俳句とそれを詠んだ背景

@michy_abe

第1話 猫と祖母

 ある夜のこと、懐に何やら小動物の気配がする。窓や部屋の戸は全て閉まっている。その小動物がもぞもぞと動く。

「あれムサシ、帰ってきたんかな?」

 ムサシとは、昔飼っていた猫の名前である。その頃、高校生であった私が、若さに任せて、某剣豪にあやかって名付けたものである。その剣豪ほど気性は荒くなかったが、気のいい、人懐っこい猫であった。

 気づくと家族とともに布団に寝ている。これもあり得ないことであった。さっきまで自分のベッドで寝ていたのに。僕が小動物のもぞもぞに戸惑っていると、母が声をかけてくる。

「どうしたの? 何かいるの」

 そう声をかけられて夢から醒めたのであった。小動物と思われた感触は体にかけていた夏布団であった。


 まだ半分夢の中で何となく詠んだ句、


飼い猫の

やわさに似たり

夏布団


我ながら良い句が浮かんだので、スマホにメモっておく。スマホに入力している途中、死んだお祖母ちゃんだったらこの句をどう評してくれるかな、と思った。

ついで第二の句が頭に浮かんだ。


亡き祖母に

添削頼む

夏至の夜


二つも句がこうも短時間に生まれることは稀なのでこうしてメモしておく。

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