夢と変化
春嵐
Before Sleep
せいいっぱい、たたかった。
どうでもいいような仕事の、どうでもいい報告書で。たった2頁で。
がんばった。これまでにないぐらい。
それを、たいして読みもせずに、目の前で破かれた。
報告書よりも、次の仕事を早くしろと。
せいいっぱい、書いたのに。全力の報告書だったのに。
何もする気が起きず、休みをとって帰った。
そして今。
自宅のベッドの上。
なにしてるんだろう私。
たった2頁の、どうでもいい報告書を。すいません行程遅れましたってだけの内容を。全力で。
なんとなく、思ってしまったんだ。これを全力で書けば、なにか、ほんの少しの何かが、変わるかもしれないって。
変わらなかった。なにも。
むしろ、捨てられることで、わかってしまった。
これから私は、もう、変われない。
似たような仕事を延々と続け、そして破かれた報告書のように使い捨てられる日々。
それを、あきらめとともに受け入れてしまった自分がいる。
あの上司に、かばんでも辞職願でも叩きつけてくればよかったのに。それすらも、できなかった。
ただ、理由もなく、謝って、その場をとりつくろう私。
疲れたという理由で休みを取る私。
ベッドの上で自分の変われないことを自覚した、私。
「うああ」
うるさいっ。
私がっ。
私がなにをしたっていうんだっ。
ちゃんと書いたっ。
書いたんだぞっ。報告書を。
枕をぼこぼこにした。
つかれた。
「このまま寝たら、また全部忘れて、明日から仕事」
「そして、明日からは休みをとった分の遅れを取り戻して、みんなから急に休んだのを変な目で見られて」
「なんで?」
なんで、どうしてこうなるの。
私がなにをしたの。
報告書をちゃんと書いただけで、なんでこんなに、惨め。
いつの間にか、眠ってしまっていた。
明日からは、また、仕事。
惨めな自分と。
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