第9話 この世界のこと

 ライディは門番に何をされるかわからず、戦々恐々としていたが特に酷いこともされず、そのまま門番の家に居着いてしまった。



 門番の家はライディが初めに居た家よりもマシだった。壁の隙間から陽光が入ってくることもないし、床は囲炉裏の部分以外は板が貼ってあり、砂や砂利でざらざらすることもなく、いくつかの武器が壁に立てかけられていた。


 門番は茶髪で、赤い瞳をした大柄な男性で、腕や足の見える部分は傷の跡があり、顔にも火傷の跡か色が変色した箇所があった。それに加え何かの皮で作られた防具や金属の胸当て、裸足ではなく、かなりごつい靴を履いていて、歴戦の戦士を彷彿させる風貌だった。


 ライディと門番の男性が出会ってから、門番の男性がライディに話しかけて来るが、最初の頃はライディが勝手に門番の男性を怖がり、まともな意思疎通が取れなかった。


 門番の男性は完全な夜型の生活だった。門番の仕事は日が沈んでから始まり、日が昇り始めると終了する。仕事前に朝食? 夜食? を取り、仕事が終わり家に戻ると食事をとり、武器や防具の手入れをして寝る。そんな完全に昼夜逆転の生活を送っていた。

 

 門番の家に居ついてしばらくしてから、ライディは1つ大きな悩みがあった。


 それは、門番の男性との意思疎通、会話が出来ないことだ。異世界の言語が分からず、門番の男性が何か喋っても「分からない」と首を横に振るしかできていないのだ。


 しかし、ライディが話したことは、たまに通じることがあり、『魔法を見たい』と伝えたら、手のひらに火を灯してくれたこともあった。


 なんでこっちの話は通じることがあるのだろうか? とライディは疑問に思ったがその理由は案外すぐに分かった。

 ステータス画面を「そういえば、最近開いてないなぁ~」と開いたとき、ステータス画面に色々変化があり、そこにライディの伝えたいことが相手に伝わる現象の情報があった。


技 術スキル】念話Ⅰ である。電話みたいな名前のスキルだが、ライディが念じたことが相手に伝わる能力なのだろうと理解する。


 こっちの意思伝わる事が分かったら、ライディが一方的に話しかけて『言葉とか文化とか魔法とか色々教えて!』と門番の男性に詰め寄った。



 それから半年程で、ある程度お互いの意思疎通が可能になり、色々なことが分かってきた。そして更に半年程かけて、門番の男性の話す言語がはっきり分かるようになった。門番の男性に会ってからの1年くらいでライディはかなり成長していた。


 ステータス画面の内容はこんな感じになっている。


【名 前】ライディ

【種 族】アンデット(レイス) 【年 齢】― 【魂の質】G

【異 能】―

【筋 力】―

【体 力】―

【感 覚】―

【敏 捷】―

【耐久力】―

【器用さ】―

【知 力】E(50/1000)

【精神力】E(41/1000)

【EXP】50

固有技能ユニークスキル】不滅精神 無限転生

技 能スキル】言語理解:日本語Ⅲ 英語Ⅰ 竜王国語Ⅱ 算術Ⅲ 料理Ⅱ 念話Ⅱ 体術Ⅰ


【知 力】と【精神力】のランクがEになっていた。これにライディは驚いていた。なぜなら、自分で【EXP】を振り分けた覚えはなく、成長していたのだ。しかも日数を計算すると、【EXP】の減り具合がかなり少ない。【EXP】が2ポイントで各項目に1ポイント振り分けられるとしたら、もっと【EXP】が減っているはずなのだ。しかし、このポイントの割り振られ方を見るに【EXP】1ポイントにつき、各項目に1ポイント振られている。

 これは、もしかしたら、自分の努力などで勝手に【EXP】が消費されるときは【EXP】1ポイントにつき各項目1ポイント。

 自分でステータス画面をいじって【EXP】を消費すると【EXP】2ポイントにつき、各項目1ポイントになるのではないのだろうか? 


 つまり、楽して成長するには、それなりの対価、代償があると言うことなのだろう。


 次に【技 術スキル】の言語理解に竜王国語Ⅱが増えた。これのお陰で門番の男性、アレクさんの言葉が理解出来るようになった。ライディの声はアレクさんには聞こえない為、念話を用いて会話する。


 アレクさんと約1年過ごすことで自分の事と、この世界の事が少し分かった。


 まず、私(と言うよりアンデット)は食事と睡眠がいらなかった。ついでに疲れることも殆ど無い。

 そのためアレクさんが寝ている間、「部屋の中でじっとしているか、殴るなり蹴るなり戦闘の練習でもしていろ」と言われたので、精神体だけど、それっぽい動きをして時間を潰していた。そのお陰か、【技 術スキル】に体術Ⅰが出来ていた。

 そして、アレクさんが門番の仕事に出かけると、ライディは話し相手として、それについていく。


 そんな生活が続いた。


 そこで、この世界には魔物と言う人を襲う生き物がいることを知った。アレクさんと出会ったときに倒していた5人組も魔物でゴブリンという名前らしい。放っておくとGのごとく増えるらしく、見つけ次第倒すものらしい。

 そして、たまに人里に降りてきて、作物や家畜、人間の女性などを連れていく魔物だという。

『なんで人間の女性も連れていくの?』と聞くと「喰われるらしい」とのアレクさんの回答。ライディは、それを聞いた時ゴブリンを見つけたらすぐに逃げようと思った。


 その他にもこの国はアーガント竜王国と言うらしい。竜王国なのに普通に王様は人間である。ただ、この国は竜を信仰し、竜の加護により国を他国から守護したり発展したりしているから竜王国と呼ぶらしい。因みに今ライディがいる村は竜王国内にある開拓村である。


 アレクさんは他国や国の地理関係にあまり詳しくないらしく、あまり教えてくれなかったが、以前「冒険者」という仕事をしていて、その仕事柄、魔物については良く知っていた。そのついでにアンデットについても教えてくれた。


 なんでもアンデットはスケルトンやゾンビなどに目に見える存在が多いらしく、レイスのようにには目で見えない種類は少ないので、アレクさんは初めて見たという。


 しかし、聞いていたレイスとライディの姿はかなり違っていたみたいで、最初は普通に人間だと思ったそうだ。

 ただ、ゴブリンとの戦闘に掛けていた身体強化の魔法を解くとライディの姿が見えなくなってしまい、再び同じ魔法をかけて見えた為、特殊な魔物だと思い、警戒したそうだ。

 しかし敵意がなさそうな反応だったため、一応、近くに置いて監視することにしていた。


 だが、ズルズルと時間が経ち、もう1年も一緒にいて、今更放りだせなくなってしまったそうだ。


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