第31話 偽りの名前
一ノ瀬とロゼッタは、関所内にあった有り合わせの材料で夕飯を用意していたクライン達のもとに来たが、先程の余韻が二人の顔に出ていた事にセリスとクラインに攻め立てられながらも、皆で食事を済ませた。その後、関所内のお風呂を男性陣が使用する間、洗い物をしていたセリスは再度ロゼッタに言及していた。
「本当に何もなかったのだな?では何故戻って来るなり主殿はソナタを愛称で呼ぶようになったのだ?それに主殿の反応もいささか引っかかるのだが?」
「なっ何もなかったよ!ただ、一ノ瀬もかなり疲れてる気がするし、やっぱりあの扉から先に向かったのって魔族軍なのかな?それとも別の組織の可能性もあるけど?」
ロゼッタの言葉にセリスは言葉を返した。
「わらわは百年程あの場所に居たため、今の情勢がわからぬのだが?ソナタ達は何故あの書物を集めておるのか?」
ロゼッタは洗い物をする手を止めて、そのままセリスに語り出した。
「私はエルフ族の王の娘だったの、でも数年前私の国は戦火により堕ちてしまったの。たった一冊の書物の為に、国は滅亡し、何万という命が犠牲になってしまった。今なおその火は広がりつづけ、2つの国とある組織が魔導禁書を求めて戦乱を巻き起こし続けている。だから私達は全ての元凶の元になってる魔導禁書を消し去る為に旅をしているの。」
「そうか。わらわが生きていた時にはあの書物は既にこの世にあったが、時代の移り変わりの中で、本来の目的と名が少し変わっておるようだ。ソナタ達はあの本を(魔導禁書)と言うが、わらわの知るあの本の名は、、、、」
〈ドカーンッ!〉
セリスがロゼッタに魔導禁書の話しをしている最中、それを遮るように関所内から爆発音が響き渡った。それは一ノ瀬達がいる場所だと直ぐに察して、二人は急いで音のした方に向かった。階段を降りて一階下のお風呂場の入り口に目をやった二人はその場所が、木っ端微塵になっているのを目にした。
「「!??」」
そこには、風呂場の入り口で元の人型の姿で腰にタオルを巻き武器を持ったベルトレと、炎を纏っい同じようにに腰にタオルを巻くクラインが対峙しており、脱衣場の扉の向こうにある浴場では、一ノ瀬がお風呂の中でうつ伏せに浮いているのがみえた。
「貴様、何度も我に魔法を撃ちよって!?頭を洗っておる最中に人の背中に火魔法をぶっぱなすバカが何処の世界におるか!?背中の火傷にシャンプーが滲みて凄く痛いのだぞこんボケェー!!!」
「それは致し方ないでしょう。一ノ瀬さんに火魔法の発動のメカニズムを教えるのに湯船から真っ正面に良い的があるからついでに打っただけです。それよりも、いくら一ノ瀬さんがまだ不慣れとはいえ、使い魔の方から強引に魔力を吸い出すとは。やはり貴方は危険ですのであの兵の方々のお仲間に入れておいたほうがよさそうですね!!」
二人を真っ赤な顔で指の隙間から覗くロゼッタを他所に、セリスはその場から一歩も動く事無く二人の頭上に黄金の鐘を2つ出現させた。その瞬間互いに魔法を放ち掛けた二人は自身の放った魔法と共に各々黄金の鐘の中にすっぽり入ってしまった。
「「ギャーーーーー!!!!!??????、、、、、」」
二人は自身の魔法が鐘の中で炸裂し自爆した。暫くして鐘が消えっ二人は廊下に共に亡骸の様な姿で現れた。辛うじて息はあったが、ベルトレも使い魔の姿に戻っていた。
「ん?ああ気にせずとも、さきの鐘は只の鐘ゆえ、魔力の消失は無い!それから、貴殿らはわが主殿を一刻も早く介抱するのだ!主殿はまだ若葉故、裸の状態でわらわ達が触れたと知ると酷く動揺しかね無いからな。それはまたべつに取っておこう。」
「「、、はい、、」」
セリスの魔法のエグさを知った三人だった。
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