第20話 召喚者の辿る道

ロゼッタが気を失った後、クラインは膨大な魔力を放出させ、ロゼッタと同様に気を失っていた一ノ瀬の肩を抱き、ベルトレと共に、二人の目覚めを待っていた。その間、クラインとベルトレは先程の一ノ瀬の暴走について話していた。








「先ほどの一ノ瀬さんは、貴様やマルクスとの戦闘の時とは様子が違う。あの膨大な魔力といい、一ノ瀬さんの魔法属性に基因していると思うのだが?貴様は何か知っているのか?」








少し前に召喚された者の話しをしていたベルトレが何かを知っているのでは?と考えたクラインが、ベルトレに質問をなげかけた。








「未だ我に対し、貴様は警戒しているのだな?まあこの者等が異常なだけであって、一度は命すら狙っていた相手に対して、むしろ、貴様は正常なのかもしれんな。」








「、、、」


些細な不信感を持ちつつも、徐々に心を開くロゼッタや友人として接する一ノ瀬と違い、ベルトレの問いかけに返事をせず、未だ疑惑の目を向けるクラインにため息をもらし、ベルトレは自身の知り得る情報から、クラインに自身の考察を語った。








「我はかつて、魔族の中でも上位の存在だったため、ある程度の事は聞き及んでいる。以前語ったように、この世界に召喚された者は、魔法や魔力といった世の理を知らず、召喚直後に襲撃されれば無力に命を落とす、いわば赤子のような存在だが、魔力と魔法に一度触れようものならば、その力は一国を落とせる程となるらしい。」


ベルトレの話しにクラインは未だ無言を貫いていたが、次に発せられた言葉にクラインは激しく動揺した。








「そして、過去に数回行われたとされる召喚の儀式によりこの世界に来たと言われ、今尚この世界で生きているとされている人物が二人いる。その一人が、魔族の王に全ての魔導禁書が持つ力を教えたとされる、創造師ジンと言う老人。そしてもう一人が、伝導者と呼ばれる女性らしい。」








クラインは、ベルトレが口に出した伝導者により、一ノ瀬を召還した事を思い出し、何らかの繋がりを考えたが、ベルトレは尚も話しをつづけた。








「その二人は共に、この世界に召喚された事をのぞいて、ある共通点があるらしい。それは天地創造の魔法、すなわち、この世に存在する禁術を扱い、命を落とさずに生存していると言う事だ。かつて禁術を使用したある種族は、発動させた禁術をコントロールする事ができず、その力の暴走により、自国の都市を破滅させたときく。一ノ瀬のもつ魔力は我々と桁が違う。だがまだその力をコントロール出来ず、今回の暴走に繋がったのであれば、いずれ我等が持つ魔導禁書を扱えても不思議ではない。」








ベルトレの話しに嘘や虚言じみたものを感じなかったクラインは一つの不安を感じ、再度ベルトレに質問をした。


「現在存命の二人を除いた他の召喚された者は、皆召喚と同時にに亡くなったのか?」








一時沈黙したベルトレは静かに呟いた。


「他殺を除き、命を落とす者の大多数は、この世界の理を外れ、自身の魔力に呑み込まれ塵となっていったらしい。」








「、、、、、」


話しを終えたベルトレとクラインは未だゴーレムと共に目覚める事の無い二人の側で、一ノ瀬に視線をなげかけていた。

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