第19話 魔力の暴発
一同はその後、行き止まりの部屋をくまなく探索したが、その部屋には何も無く、渋々来た道を戻っていた。
「結局何も無かったけど、あの壁画に記されていた事が本当なら、こんな所に閉じ込められて可哀想だよな。」
不意に一ノ瀬が呟いた言葉を聞いたベルトレが、ロゼッタに語りかけた。
「そう言えば、貴様らは我が魔族の手の者と思い使い魔の契約をしたのだな?その理由であれば、もはやこの契約に意味は無いと思うのだが?一体いつまでこの様な姿にさせておくつもりなのだ?」
ベルトレに問われたロゼッタは間髪入れずにベルトレの質問に対して、逆に質問をなげかけた。
「ベルちゃんが魔族の手の者じゃなかったとして、じゃあ一体何故私達を追いかけ、魔導禁書を奪おうとしたの?」
ロゼッタから返ってきた質問に対し、魔導禁書の力で世界を崩壊させようとしていた事など言えないとベルトレは悟った。もしその事を言ってしまえば、より一層監視の目を向けられ兼ねないと考えたのだった。
「、、、今は、言えない。」
「じゃあ私もまだ契約を解除はできないわよ?」
少し前であれば、無意識の内に使い魔にされた事に怒りをもっていたベルトレだったが、アダムとイヴのように、自身の為に戦って守ってくれた一同とのこの関係も悪くないと感じていたベルトレは、ロゼッタの言葉に対し、それほど不快感を懐かなかった。
「、、分かった。」
その話しを聞いていた一ノ瀬は、契約の解除をしてもらえない事にベルトレが悔しがる様子が無いことを少し不思議に思っていた。そんな一同は、広間に続く扉の前に戻ってきたが、その扉は何故か閉まっており、開いていた時には気付かなかったが、扉の裏側には、時計の針のような指針が付いており、一同が見つめるなか、歯車が擦り合う様な音と共に上を指していた指針が下を指した。
「なっ何なの!?」
「姫様!後ろにお下がり下さい!」
突然動き出した指針に驚くロゼッタにクラインが声をかけた。その後、扉はゆっくり開いていき、その先には先程の広間と似た場所が現れた。扉の向こう側に進んだ一ノ瀬は声をあげた。
「ここは、さっきの広間とは違うよな?」
そこには幾つもの戦闘の跡があり、一ノ瀬達の対面には、絢爛豪華な装飾が施された扉を守るように、高さが三メートルはある三体のゴーレムが佇んでいた。背後の扉は、大きな音をたて閉まり、一向は目の前のゴーレムと共に広間に閉じ込められてしまった。
「我を閉じ込めるとは、大した度胸だな。」
「これって、やっぱりあのゴーレムを倒さないといけないのよね?」
「丁度ストレスを発散したかったので、手加減抜きで行きます。」
「、、クラインだけ意気込みがおかしい気がするけど。」
一ノ瀬は、一人だけ趣旨の違うクラインに突っ込んだ。その時、目の前の三体のゴーレムが各々魔法陣を展開させて、体の一部を、火、水、砂に変え四人に飛ばして攻撃してきた。
「ふん!ただのゴーレム風情が、なめるな!」
ベルトレが三人の前に出て水でできた巨大な盾を出現させ、ゴーレムの攻撃を受けきった。その背後より飛び出したロゼッタが、次に風魔法で三体のゴーレムに横一線の斬撃を放つが、自身の両腕を砂に変えたゴーレムが、地面から砂の壁を出現させ、ロゼッタの攻撃をガードした。
「クライン!」
目の前の三体のゴーレムが砂の壁で隠れた瞬間に、ロゼッタがクラインに呼び掛けた。
「はい姫様!」
クラインは両足から炎を放ち、ジェット機の様に砂の壁に突っ込み、その衝撃により空けられた穴にロゼッタがとびこんだ。ゴーレムと砂の壁の間に入ったロゼッタは、中央にいた砂の魔法を使うゴーレムの胸に風魔法を付与した自身の拳を放った。その瞬間ゴーレムは背後の扉まで吹き飛び、扉横の壁に激突した砂のゴーレムは完全に沈黙した。
「やった!まずは一体!」
はしゃぐロゼッタに対し、一ノ瀬は召還された時の事を思い出し、クラインがくらったボディーの威力を改めて知り、クラインを少し不憫に感じていた。その間、残った二体のゴーレムは、お互いの間にいるロゼッタに向け、炎と水に変換した片腕で剣を形成し、ロゼッタに振りかぶった。
「「「ロゼッタ!?」」」
ゴーレムの攻撃に気付かずにいたロゼッタに、三人が叫んだ刹那、一ノ瀬は自分の中にある魔力が荒ぶる感覚を感じた。その瞬間、一ノ瀬から部屋全体に拡がる様に、膨大な魔力が発された。その魔力は部屋の壁や床に亀裂を与え、かろうじて意識を維持したクラインとベルトレだったが、その魔力に当てられたロゼッタは瞬時に気を失ってしまい、少女を切りつけかけていた二体のゴーレムは、一ノ瀬の魔力により炎と水で形成された剣を、ゴーレムの腕ごとかき消され、そのまま気を失うロゼッタの頭上で沈黙した。
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