第11話 熱烈なる歓迎

大樹に朝日がさす頃、台所からの物音で一ノ瀬は目を覚ました。そこには、朝食の用意をするレイヤとロゼッタの姿があった。








「おはようございます。、、あれ?二人は?」


一ノ瀬はゆっくりと身体を起こし、クラインとベルトレの姿を探した。


「クラインは朝食を済ませてから畑仕事のお手伝いに行ったわよ。ベルちゃんは起きてからもまだ姿を見てないけど?」










ロゼッタの言葉に、あのまま帰って来なかった事を一ノ瀬は察した。


「朝食を用意しましたので、一ノ瀬さんも食べて下さい!」


レイヤとロゼッタに感謝を伝え、朝食を済ませた一ノ瀬は片付けを一緒に手伝った。








その後、家の掃除などの家事を二人が始めたので、一ノ瀬はクライン同様、畑仕事を手伝うべく、大樹を降りているのだが、昨晩は暗がりと登り道だったため気付かなかったが、日が上り下を眺めれるようになった為、そのあまりの高さから恐る恐る階段を下っていた。


「なっなんで、手すりや柵が無いんだここ。もし足を滑らしたら、命は無いな。」


階段を下る一ノ瀬の眼下には、畑仕事や、その周りで遊び回っている子ども達と、空を飛び森を行き来するもの達がいた。








「何とかたどり着いた~。」


一ノ瀬はようやく大樹の根元にたどり着き、胸を撫で下ろした。そして、改めて周りを見回すと、そこには空を飛び回るハーピーの様な、脚と腕が鳥のようになっている鳥人族と、畑で作業を行う獣人族や、花畑に水やりをしている精霊族と、その周りでウロチョロしている小人族がいた。その平和的な光景の中で土煙をたてながら、一人畑を凄い勢いで奇声を発しながらたがやしている人物がいた。








「お!あんた、クラインさん所の同行者かい?」


そう声をかけてきたのは長靴を履いて麦わら帽子をかぶった、犬のような顔をした獣人族であった。


「いや~ちょうど苗の植え替えの時期で、作業員の頭数が揃わなかったんだが助かったよ!ただ、何故か上半身裸なのかはわからないが、、」








一ノ瀬は凄いスピードで地面にクワを入れるクラインを見たが、深く考えるのを止めた。








それから暫く畑仕事を手伝っていた一ノ瀬の耳にベルトレの叫び声を聞いた。その方向に振り替えると、何やら畑の向こう側に様々な種族の者達がベルトレを取り囲んでいるのが見えた。


「なっ!?ベル!!」








一ノ瀬は昨夜の話を思い出し、集落を襲った魔族達と同じ種族のベルトレが皆に襲われていると思い、急ぎベルトレの所に駆け寄った。








「大丈夫か!?ベッ」


「ギャー!止めろ!抱きつくな!いててて、頬を引っ張るなー!!!」








慌てていた先刻の自分がアホらしく思った一ノ瀬は、集落の皆からの熱烈な歓迎を受けていたベルトレを虚ろな目で見ていた。








「、、、畑に戻ろう。」


一ノ瀬はその背にベルトレの助けを求める声を受けながら、未だ上裸のクラインがはつらつと耕している畑に戻っていった。その光景を大樹から少し離れた木の上で眺めていた魔族とおぼしき男女二人組がいた事に、誰も気付かなかった。


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