第3話 雫の輝き
魔族が槍を三人に向け放つその前に一ノ瀬は魔族に向かって走っていた。
(俺に何か出来るなんて思ってない。それどころか向かう相手は俺さえも本気で殺す事に何も思ってすらないだろう。でも、もう過去のような過ちは繰り返したくない!ロゼッタに、妹と同じあの顔をしてほしくない!)
無意識に近い一ノ瀬のダッシュに一瞬驚く魔族だったが、距離を詰めきられる前に魔法を纏わせた槍を一ノ瀬に放った。
「うおらぁぁぁぁ!!!」
槍は一ノ瀬の頬に傷を付けつつも逸れて、背後の二人の間を縫うようにすり抜け、神殿に向け一直線に飛んで行った。
(キンッ)(ドゴゴゴゴゴゴン!)
神殿は槍の進行方向に向け、木っ端微塵に吹き飛んでいった。
「な!?」魔族の男は槍を外した事以上に、槍を放った直後で無防備になった眼前に一ノ瀬が到達した事に焦りを見せた。
一ノ瀬が魔族の懐まで入り、右腕に全神経と体重を乗せた瞬間、右腕が魔力に覆われた。そのまま魔族の顔面に一ノ瀬の拳がめり込まれた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」「ぶぐふぅぅぅぅぅ!???」
そのまま魔族の男は(ゴン!)という音ともに地面に後頭部から叩きつけられた。
周囲は静まりかえり、木々の向こうから覗く山から朝日が昇り始めた。かつて神殿があった場所には、瓦礫の山が出来ていたが、不思議な事に、一ノ瀬が召還された広間の中心にはその瓦礫の山が避けるように開けていた。
一ノ瀬は魔族の倒れる横で自身も力尽きるように倒れていたが、ゆっくりと立ち上がり腰が抜けたように座り込んでいるロゼッタと未だ倒れ込んだクラインの元へ歩み寄る。
ロゼッタの前まで来た一ノ瀬はしゃがみこみ、少女の頭に手を乗せ、ゆっくり口を開いた。
「君への返答をしてなかったな。」「、、、」
静かに言葉を待つロゼッタ。
「君の力になりたい!一緒に旅をさせてくれ!」
ロゼッタは引き締めた口元をゆっくりほどき、ほころばした顔で静かに一ノ瀬に答えた。
「助けてくれてありがとう!、、、ふつつか者ですが、これから宜しくお願いいたします!」
少女の目には悲しみではなく、安堵感ともうひとつの感情から朝日に反射して輝いた涙を流した。
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