11. 謝って許されるとは思っていないが、本当にすまなかった
「何なのよ、あんたは!」
キッと刺すような視線を向けてきました。
「悪役令嬢なら、悪役令嬢らしくさっさと追放されなさいよ!
聖女? 知らないわよ、そんな設定!」
もはや何のことか意味の分からない、ヒステリックな叫び。
デューク殿下は、そんな彼女をどこか憐れむように眺めていましたが
「このことは全て国王に報告しておく。
君たちパーティーが、聖女様にしでかしたことを一部始終ね」
最後通告を叩きつけました。
ジークとロキが、何かを諦めたような表情で俯きました。
ヴォン殿下は、ただ一言。
「俺は、どうなる?」
「良くて離れの塔に幽閉か。
廃嫡もあり得る」
「そこまでの事か……」
「そうだな……」
二人の王子の簡素なやり取り。
「ちょっと!? ヴォン殿下!
ロキもジークも!
何とか言ってよ、このままだと私たちみんな大罪人よ!」
イリアの言葉は、空虚に響くだけでもはや誰の心にも響きません。
私が本当にイリアの言うような性悪な令嬢ではない、ということをこの場にいる全員が理解してしまったから。
「選択肢をあげるよ。
このまま学園まで戻るか。
……そのまま国外に逃げるとしても見逃すよ」
デューク殿下は、ヴォン殿下にそう告げました。
どこまでも冷たい声色は、肯定以外の返事を許さぬもので。
「私もそれで良いと思います」
私も、デューク殿下に同意。
もともと冤罪さえ晴らせれば、十分だと思っていました。
実際の罪の中身まで関わりたいとは思いません。
「嫌よ! 国外追放なんて、冗談じゃないわ!
みんなどうして信じてくれないのよ!
そいつが聖女なんて全部うそっぱち!
そいつは、私を殺そうとした極悪令嬢よ!」
「静かにしてくれないか、イリア嬢」
ついに我慢の限界を超えたのでしょうか。
声を上げたのはロキでした。
「ヴォン殿下が言えないようだからハッキリ言おう。
……往生際が悪い」
――おまえの企みは失敗したんだ。
去り際ぐらい潔く去ろう、と。
「このパーティーは、罪の象徴だ。
ヴォン殿下が国外を選ぶなら、俺もジークもついていくさ」
「心配しな。おまえを放り出すつもりはないさ。
やり直そう。俺たちは、たぶんイリア嬢に依存し過ぎていたんだ」
ロキとジークはこちらに向き直ると
「すまなかった、マリアンヌ様。
謝って許されるとは思っていないが、本当にすまなかった」
深く頭を下げてきました。
「どうでもいいです」
本当に。
今更、としか言えないですからね。
「このパーティーで国外に出る。
盲目的に、都合の良いことを信じるだけではなくて。
今度こそ、一から信頼関係を築きあげよう」
――そして、いずれは国を裏から支えられるパーティーになってやろう
決意を新たにしたヴォン殿下は、力強くそう呟きました。
それを聞き届けたデューク殿下は
「期待しているよ」
とだけ言い残してきびすを返しました。
そして、私の手を引っ張り彼らとは逆の方向に歩き始めました。
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