婚約破棄、果てにはパーティー追放まで ~事故死すら望まれた私は、第二王子に聖女の力を見出され性悪女にざまぁします~
アトハ
1. 我が剣と誇りにかけて、貴様を断罪する!
「マリアンヌ公爵令嬢!
権力に物を言わせて、ずいぶんと好き勝手してきたようだな?
これ以上貴様の悪行を見過ごすことはできん! 我が剣と誇りにかけて、貴様を断罪する!」
美形の青年が、ギラギラとした目と共に剣を向けてきました。
彼の名はフォルティナ・ヴォン。
フォーステイン王国の第一王子で、私の婚約者です。
「殿下、落ち着いてください」
ヴォン殿下は、1人の令嬢を背中に庇うように、油断なくこちらに剣を向けます。
私のことを何だと思っているのでしょうか?
殿下の背後で怯えたようにプルプルと震えるのはイリアさん。
怯えた小動物のような雰囲気は、庇護欲をそそりますが……私は彼女の本性を知っています。
――ひとことで言い表すなら性悪女
殿下の前ではひたすらに猫をかぶり続ける演技力。
婚約者である私のことが、邪魔で邪魔で仕方がないのでしょう。
あることないことを、吹き込んでくれたものです。
「詳しい話は、イリアから聞いた。本当に、婚約者として私は情けない。
貴様には、人の心というものがないのか?」
曰く、暗殺者を雇い暗殺しようとした。
曰く、魔法を暴発させ事故に見せかけて殺そうとした。
曰く、階段から突き落とし全治3か月の怪我を負わせた。
まったく身に覚えのないことです。
もし暗殺者を雇うなら、素性が割られるような素人は雇いませんよ。
残念ながら私にそんな大規模な魔法は使えません、殿下もご存知のはずですが……。
なぜ殿下は、このような戯言を信じるのでしょうか?
「そのようなこと、する理由がありません」
私にできることは、冷静に殿下を諭すことのみ。
物事を真っ直ぐ素直に受け取りがちな殿下であっても。
いくらなんっでも、そう簡単にこの性悪女に騙されるはずがありません。
「わ、わたし怖くて……! 何度も殺されるかって思った!
おまえの神聖魔法が邪魔だって! 鬼のような形相で!
私、本当に怖くて……今日だって、今日だって…………うぅ...」
「落ち着いて、イリア。怖かったね。
もう大丈夫だから。君に手出しはさせない。
勇気を出してくれてありがとう。君のことは、必ず守るからね」
恐怖にかられて泣き出してしまった令嬢を、王子が優しく抱きしめ耳元で優しくささやきます。
ダメでした、それは見事な騙されっぷりです。
「君には弱者の心が分からないんだね。
イリア嬢は立派だ。最後まで君と分かり合うことをあきらめなかった。
何度拒まれても、どんな目に遭わされてもね」
「それに比べて、君はどうだいマリアンヌ。
――歩み寄ってきた彼女に、君は何をした?」
何もしていませんよ!
背後から出てくるのは騎士団長の息子、ジーク。
彼もイリア嬢を庇うように立ち、私と敵対する意志を示す。
「未来の王妃として失格だ。ヴァンに君は相応しくない」
「そんな……」
「魔法の才能がないだけなら……まだ、救いはあったけれども。
何回も繰り返される暗殺未遂。
まして今回の遠征中でも態度を改めないとは。
それとも君は、パーティーを全滅させるつもりだったのかい?」
「それも誤解です!」
魔術師・ロキ。
稀代の天才の名を欲しいままにする魔術理論の革命家。
まさか彼まで、あの性悪の肩を持つなんて……。
私の味方は一行に増えません。
ここにいる全員が、イリア嬢に同情的な視線を向けています。
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