第220話 ぶらっくめがね 6

※アカツキ視点


次の日、俺達はリゲルとクワイエットを連れていくために治療施設に行ったんだ

んで彼らを入り口で待っていたんだけど…姿を見て驚いちゃった


アカツキ

『おいおい…』


《おいおい…》


ティアマト

『大袈裟じゃね?』


ティア

『2人共、大丈夫?』


ギブスが装備品みたいになってて笑いそうになる

クワイエットさんは軽めだけど、リゲルだけは結構歩き難そうなくらい超怪我人アピールしている姿だ


『う…うるせぇ。』


クワイエットさんの話だと、多少無理する人と医者に行ってしまったせいで安静させるために無理やり大袈裟にしたらしい

まぁある意味正解である


松葉杖を使って歩く2人、だがリゲルはおぼつかない感じ


ティアマト

『担ぐか?』


リゲル

『脇腹に響く、悪いな…速度合わせてもらうだけでいい』


馬車乗り場まで歩くのだが、このペースだと倍以上時間がかかりそうだな

まぁ急いでないからのんびりが俺としては嬉しい


《ヴィンメイどうだったよ?》


クワイエット

『もっと脳筋になっててあんま言葉通じなかったよ』


リゲル

『にしてもしょっぱなから遊ばないで襲い掛かってくるんだから冷や汗しか出ねぇぞアレ』


リュウグウ

『よく倒せたな』


クワイエット

『倒す為に僕は全力で走って逃げたよ…巻き込まれたくないもん』


ティア

『あ…アレね』


リゲル

『あいつも自分のスキルで死ねたんだから本望だろうよ。そっちはどうだった?』


アカツキ

『ノヴァツァエラの爆発後にデビル・パサランの勢いが徐々に無くなってきたんだ。気づけば増えなくなったよ』


ティアマト

『ヴィンメイがボスじゃねぇんだろ?』


リリディ

『デビル・パサランを従えていたのは衆合席のヴィドッグヴィドッグですね。』


ティア

『予想としてはあの悪魔軍団の切り札が悪魔化ヴィンメイだったからかな、倒されて撤退したと思う』


アカツキ

『俺もティアの予想だと思う』


リゲル

『ケッ!ヴィンメイを切り札とは悪魔もたかがしれてらぁ』


クワイエット

『気持ちはわかるけど、単純なパワーはやっぱりヴィンメイはとてつもないよ』


リゲルは渋々ながら頷く




そして馬車で5時間、グリンピアに辿り着くとリゲルとクワイエットはそのままギルド近くの治療施設に緊急入院することとなる

俺達の方の怪我はティアに治してもらうという卑怯な手段を使ったのだが

リゲル達はそうはしなかった


クワイエットさんは治してもらいたいような顔を浮かべていたが、リゲルはそれを止めさせたんだ

理由はわからないが、まぁ人それぞれかな


ギルドに向かい、俺は仲間をロビー内の丸テーブル席に残して受付に向かう

途中、夢旅団のバーグさんが椅子に座ったまま俺が通過する瞬間に太腿を軽く叩いて茶化してくる


『高ランク冒険者は忙しいねぇ』


『あはは、今日は平和ですか?』


『問題無しだぜ?』


それなら問題ない


受付嬢アンナさんに話してクローディアさんを出してもらったのだが…

彼女は眠そうな顔をし、頭にアホ毛を沢山つけていたから今起きたんだな


『帰ったのね』


『報告しようかと思いまして』


『大丈夫よ、昨夜あんたのスキルが私に詳しく話してくれたわ』


《俺、有能、褒めろ》


『流石神様ね、報連相は徹底してて見本にしたいわ』


《へへん》


『説明不要なら助かります。悪魔ですか…』


『悪魔ねぇ…まさかハイムヴェルトさんが討伐し損ねた個体がただの魔物じゃなくて悪魔のゾディアックだったなんて』


『クローディアさんは悪魔をご存じで?』


『全然よ。聖書以外の書籍じゃ殆ど書いてないわ』


『テラでも詳しくないので…』


『私は調べておくわ。地獄の景色って本に悪魔の事が多少書かれてるって神様がリリディ君に聞いたらしいから街の図書館で調べておくわ』


『お願いします』


彼女から報酬を貰い、仲間のもとに戻ると分配して分けてから解散だ

ティアはリュウグウと服の買い物、俺は予定なしだが久しぶりに男3人で街で食べ歩きする事にしたんだ


だってもう昼過ぎだ…

こうみえて昼飯はまだなんだよな

ティアマトが腹減った腹減ったとうるさいのでそうすることにしたんだ


中心街、雪は完全に溶けたけど…まだ2月だしなぁ

いきなり寒くなって降るってパターンは毎年恒例だ

3月末まで油断は出来ないからグリンピアの人々はその時期まで薪は貯蔵している


歩く人たちは冒険者は少なく、普通の一般人ばかり

平日なのに家族連れが至るところにいる


ティアマト

『しっかし結構な数倒したなぁ』


リリディ

『流石に魔法スキル連発し過ぎて魔力切れ起きるかと思いましたよ』


ティアマト

『お前あんなにバカスカ使って切らさねぇって凄いな』


リリディ

『自分でも驚きですよ、内心焦ってましたけどね…あそこまでワラワラ出るなんて思いませんもん』


アカツキ

『凄い数だったな…』


《まぁいつ来るかわからねぇ、油断すんな?》


刺客以外にも悪魔か、こりゃ面倒だ

自然と溜息を漏らすと、それは3人同時と偶然が起きる


リリディ

『…』


アカツキ

『リリディ?ん?』


彼は足を止めた

俺とティアマトも歩みを止めると彼が見ている視線の先に顔を向けた

そこには以前にも見たことがある黒いコートを着た者、フードを被って顔を隠している


数は2人、何やら俺達を手招いているようだが

リリディは真剣な顔を浮かべたまま彼らに近づくので俺もティアマトと顔を合わせて頷くと、リリディのあとについていく


建物の壁に背中をつけて休んでいたようだが、どうやらリリディに用事があったようだ

魔法騎士の者であるとわかる



『魔法騎士会で2番隊が極秘任務でグリンピアに1週間後にくるらしい、気を付けておけ…奴らはロットスター派の隊だ』


リリディ

『その声はロンドベルさんですね』


ロンドベル

『うむ、表面上の任務は聖騎士会が断念した幻界の森調査の後始末だな』


アカツキ

『あ…』


そういえばロイヤルフラッシュ聖騎士長は調査失敗と報告しておくと言っていたな

どうやらその後釜か…うん絶対無理

でも何やら話の続きを聞いてみると、少し可笑しい


ロンドベル

『2番隊だけしか派遣されないという非常識さ、どうみても森に入る気は無い』


リリディ

『では何をしに?』


ロンドベル

『だから警告にきた。ちなみに2番隊の隊長はバファールっていう風魔法使いだ』


リリディ

『覚えておきます。ちなみの女性ですか?』


ロンドベル

『そこ聞く?』


リリディ

『はい』


ロンドベル

『似てるなぁ…あの人に』


どうやらハイムヴェルトさんの事だろうな

リリディの言い放つちなみには残念ながら男性だとの事なので彼は肩を落とす


ティアマト

『お前、アンナさんは?』


リリディ

『あ、本命ですよ』


《ブレディだな》


アカツキ

『面白い、評価する』


《おいおい…》


2番隊の数は聖騎士と同じで8人

そこまで聞くと俺達は街中で食べ歩き始める

最近カツサンドを食べ過ぎていたから焼きそばやホットドック、そして焼きおにぎりなどを食べながら腹を満たす

最後は飲み物を売っている屋台で3人揃ってコーヒー牛乳を一気飲みして幸福を満たした


北の森に向かう為の防壁の近く

そこまで行くといつぞやの女性冒険者が疲れた顔を浮かべて前から歩いてくる


3人組のハーピィというランクFチームだな


・・・・・

レイナ・フィルナント 剣士

キアラ・タック    双剣

カグラ・ヨサコイ   魔法使い、武器は細剣

・・・・・


キアラ

『あ…』


こちらに気づいたか

彼女らはパタパタと小走りに近づいてくると、俺達の前で深々と頭を下げる


『『『お疲れ様です』』』


《めんこいじゃねぇか》


確かにな…


ティアマト

『こいつらぁ確か…』


カグラ

『ハ…ハーピィです』


怖がっている

彼女らの肩に力が入っているのがわかるよ

見た目はまぁティアマトは怖いだろうけど、見た目だけだぞ?多分


リリディ

『どうしたのですか?』


レイラ

『それは…』


簡単に言うとランクEの黒猪という赤猪より二回り大きく体毛が黒っぽい猪4頭に追いかけられて発光弾で視界を奪い、逃げてきたらしい

しかもその時に今日の稼ぎである魔石の入った袋を落としたのだとか

まぁ落ち込む気持ちはわかる…俺もしたことあるからなぁ


ティアマト

『最初はそんなもんだ、上手く帰るまでが難しいのが最初の1年だからな…』


リリディ

『ティアマトさんのいう通りですね』


ティアマト

『死ぬより全然マシだ。大怪我するよりも怪我無く帰れる方が1人前の近道だぜ?』


それを聞いてちょっぴり安心したらしい


アカツキ

『2人のいう通りだ、最近調子はどうだ?』


レイナ

『えへへ…』


何故照れた?

聞くところ、どうやらかなり調子が良いらしい

稼ぎも今までの倍以上、それはスキルを手に入れてからトントン拍子だってさ

そうだとしたら、今日の失態くらい諦めがつくだろうに


リリディ

『カグラさんはハイドロポンプは切り札として持っておいてください、2人の援護として基本的に動くためにアイスショットをメインに、ハイドロポンプは直ぐに魔力切れを起こす可能性がありますので瞑想を1年続けてからがいいですね』


カグラ

『言われた通り頑張ってます。今日はコロールが現れたのでハイドロポンプ1発撃ちましたが』


アカツキ

『確かにそういった状況だと使うしかないな』


レイナ

『落下してきた瞬間にキサラと飛び掛かってなんとか倒しました』


ティアマト

『それで良い。俺達よりもコロール倒すの早ェな…』


アカツキ

『半年以上たってからコロール初めて倒したもんな、となると彼女らは少し早い』


女性3人、ちょっぴり嬉しい顔を浮かべている

単純だが今はそれで良い


リリディ

『私は魔法スキルスペースが無いのであれですけど、状態異常系スキルは魔力消費が少ないらしいので狙うのもありです。』


ビリビリフラワー、眠花蜘蛛というFランクの魔物だ

ショック、そしてスリープというティアも持つ魔法スキルだが、スリープは削除したっけ?

今度ステータス見てみようかな


カグラ

『特定ドロップ条件とかないですよねぇ…』


リリディ

『流石に聞いたことないですね。でもあるだけで僕らはかなり助かってます』


キサラ

『ティアさんですね。納得できますね』


アカツキ

『今日は終わりか』


レイナ

『はい、運良く懐に依頼の魔物の魔石があるので罰則金を払わなくて済みそうです』


彼女達は苦笑いを浮かべると、ギルドに向かって歩いていく

今日はのんびりな感じでいいなぁと思っていると、防壁の向こうからまたしても女性軍団だ

今日は女性に結構会うな・・・ 



アネット

『おっ!?イディオットの男軍団』


《呼び方すげぇな》


アカツキ

『お疲れ様です。収穫ですか?』


シエラ

『グランドパンサー、9頭は美味しい』


クリスハート

『今日は依頼書無しで森に向かったんです。いつもよりかは少し効率よく動けました』


シエラ

『クリスハートちゃん、最近動き良い』


どうやら調子が良いらしい

俺達も微笑ましい気持ちになっていると、ふとクリスハートさんが口を開く


クリスハート

『そういえばイディオットのウェイザー依頼にリゲルさん達がこっそり向かったと聞いたのですが』


アカツキ

『あぁそれなんですが…っ』


あれ?リリディがメガネを触って不気味な笑みを浮かべてる

しかも無駄にメガネが光っている、何か企んでいる時の仕草だ

何をしでかすのだろうと彼に顔を向けると、彼はスイッチが入ったんだ


険しい顔を浮かべ、うつむきながらクリスハートさんの前

これには彼女も騙されているが無駄に察し、真剣な面持ちとなる


クリスハート

『どうしたんです』


リリディ

『詳しい話は本人に聞いたほうが良いです。ヴィンメイが生きてました』


『『『『そんな!』』』』


これは嘘じゃない、事実だ

驚愕をあらわにする女性陣にリリディは追い打ちをかける


リリディ

『僕たちイディオットはリゲルさんやクワイエットさんらとはぐれたんですが、彼らはヴィンメイと対峙し、命からがら倒しました』


シエラ

『倒した!?』


リリディ

『今、彼らは…グリンピアの治療施設内で入院することになったので今日ウェイザーから輸送されたばかりです。重傷ですと2人共、生きているのが不思議なくらいで…それほどまで死闘であり、リゲルさんはノヴァツァエラで…』


無駄に深刻な顔を浮かべて告げると、クリスハートさんとシエラさんだけが一瞬で俺達の前から消える


アネットさんやルーミアさんも追いかけるけど、性格悪過ぎだろリリディ…


『ふ…賢者のキューピット作戦』


《なんだか頼りねぇ天使だな》


ティアマト

『確かに…』


さて、そろそろ帰るか

2月末はエド国出発にしたから無理はしたくない

時間がある時には体を休めよう…


リゲル達はいつエルベルト山にいくのだろうか

今回の怪我で少し予定が狂いそうだけど…


《帝龍はやべぇぞ?ブルーリヴァイアと同じだと思え》


それは不味いな…


リリディ

『さて、僕らも帰りましょう…悪魔が僕を狙っているのならばあちらからお迎えが来るはずです、それまでに強くならないといけません』


アカツキ

『エド国がそのチャンスだな』


リリディ

『最後の黒魔法スキル…それさえあれば』


お前はなれるのか、ハイムヴェルトさんのギール・クルーガーに




※次回 奏でるは人の世。握るは誰の手 編 (ちょっと長いエルベルト山編)

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