第17話  パナ・プレイヤー

『あばばばば!』


ティアが混乱している

俺達は一度彼女に落ち着く様にさせ、数分かけて落ち着いてからから話しかけてみた


『あいつが起きて俺に話したよ、魔法使いの職にティアがなるってさ』


『はぁ!?開闢マンが言ったのか?』


『そうだが…ティアマトも落ち着け』


俺の言葉でティアが恐る恐る自身のステータスを開いたので俺達3人は覗いてみたよ


・・・・・


ティア・ヴァレンタイン


☆アビリティースキル

安眠【Le1】

気配感知【Le1】


☆技スキル


☆魔法スキル

火・ラビットファイアー【Le2】up↑

雷・ショック【Le2】

木・スリープ【Le2】up↑

風・ケア  【Le1】


称号

パナ・プレイヤー


☆称号スキル

デバフ強化【Le1】

自然治癒【Le1】

スピード強化【Le1】


凄い光景に俺達は目が飛び出そうなくらい驚いてしまう

しかし俺達よりもっとティアが驚いた


『あばばばばばばばばば!』


体が残像で見えるほどに震えてる、凄い

彼女を再び落ち着かせるまで10分かけたが、まだ少し興奮してる感じだ


リリディは何故か自身の頬をつねってる


『ふむ、まだ気絶してると思ったのですが』


『リリディ、現実だぞ?グリンピアに称号持ち冒険者はどのくらいかわかるか?』


『……、わかるわけないじゃないですか、ただわかるのはこの称号は限りなく希少価値が高いという事だけは確かです、回復魔法持ち称号なんて稀ですから』


『また驚かせる気かリリディ』


『僕だってパナ・プレイヤーと聞いて驚いてますよ…その職は国で現在2人しか確認されてないグレイス・ノアという伝説の称号前の称号ですから』


称号の別名は職だがややこしいから称号で統一しよう、田舎だと職って言う人も少なくはないのだ

ティアは意外とリリディの言い放った言葉には冷静であり、懐にしまったケサランの小さな魔石を取り出してから見つめると、囁くように口を開く


『ケサランちゃん…私強くなるからね。誰も死なないように頑張る』


彼女は小さな魔石をギュッと胸元で抱き締める

こうして一度俺達は痛い体を引きずって街に帰ると冒険者ギルドで依頼成功報酬を貰って近くの定食屋に向かったんだよ


夜食はみんなで食べる予定だったし母さんにも飯は要らないって言ってあるから大丈夫!

しかし体が痛い、そこは我慢しよう


テーブルを囲み、今日の報酬でティアの称号祝いと称した夜食に変わるがケサランの魔石は勿論彼女は売らない

形見として部屋に置くと豪語していたしね

ステーキ定食が来るまで俺達は会話するとことなったが…


『んで?開闢マンはなんか言ってねぇのかアカツキ』


『また静かになったよ、さっきから囁いても反応してくれない』


『偶然起きただけでしたか、それにしても僕はまだ心臓を止めたいくらいうるさいですよ、チームに称号持ちですから』


『おっ?なんだリリディ、止めてやるか?』


『ティアマトさん、殺す気ですか?』


『冗談だっつぅの、しかし声を大にして言えねぇけどよ…本当に幸先良いぜこれ、称号会得で称号スキルっつぅ追加ボーナスみたいなスキルもあるんだしやっぱ称号って大事なんだな』


『俺もそう思うよ、サポート系魔法使い用の称号らしいがこれなら俺達も安心して前に出れるけど、このタイミングとはな、ケサランは残念だが・・・』


誰もが顔を暗くするがこの場で言うのは不味かったか


『…リゲルっつってたなあの野郎、覚えとくぜ?今度ボコボコにするために強くなってやる、胸糞悪い野郎だぜ』


『ティアマトさんの意見には同意ですね、未来の大賢者を蹴るなど…まぁそれよりも、ケサランの仇と言うことで』


思い出すとふつふつと怒りが込み上げてきそうだ

あいつティアを殴ろうともしたし許せん


『こうならないように強くなろう、みんな…俺達は弱い、強くなって誰かのためになれる人間になるんだ』


そう心に誓う






次の日、強くなるために森で特訓をする

ゴブリンや格闘猿ばかり、Fはハイゴブリンしか現れなかったがそいつが棍棒を振りかざした瞬間にティアがラビットファイアーを放ったが、いつもとそれは違う形となっていた


手を前に伸ばし魔法を放った彼女だが今まで3つの小さな火の玉が5つとなり、飛んでいったのだが速度も僅かに弾速も向上していた


『え?』


撃った本人が驚く


ハイゴブリンは棍棒を盾にして防ぐが3発は棍棒に当たることなく体に命中するとその部分が燃える

火を消そうと必死になるハイゴブリンに俺は走り込みながら刀で鋭い突きで技スキル、居合突を放った

相手を貫く真空の突きはそのままハイゴブリンの腹部に命中すると見事貫通したのだがレベル1では出来なかったことだ、撃った時に少し技に力強さを感じたし結構良い感じに使えそうだ


『ゴブ…』


バタリを前のめりに倒れる姿を見届けると俺達は魔石が体から出てくるのを確認し、近寄る


『今日はハイゴブリン5体も倒しましたね』


『そうだけど、どしたのリリディ君』


『骨砕きっていう打撃技が意外と欲しかったからですね』


どうやら欲しいスキルをハイゴブリンが持っていたらしい

しかし倒してしまったので早めに言ってほしかったなぁと思いながらも俺は言うのを止め、次現れたらにしようと告げる

数分後、またハイゴブリンが現れたが川辺の浅瀬で2体が水を飲んでいる

リリディは眼鏡を触りながらこちらに視線を向けてくるので俺は口元に笑みを浮かべ、口を開いた


『ティアマトはティアの援護で1体頼む』


『うっし!じゃぁティアちゃん頼むぜ?ショックで』


『はーい』


『では僕らはもう1体ですがアカツキさんは何か作戦が?』


『隙を作ってくれ』


『容易い、スキルを得られるならば』


するとハイゴブリンがくるりとこちらぬ振り向き、大声を上げながら走ってくる

それを確認してからティアマトとリリディは顔色を変え、一気に走る

あっち側は大丈夫だ、俺はリリディに任せるか


『ゴブゴブ!』


ハイゴブリンは意気揚々と棍棒を振り回しながら襲い掛かる

リリディがスタッフを担いだまま右手をかざし、強風を発生させると僅かにハイゴブリンは足を止め、足を踏ん張り出したので彼はその隙に担いだ木製スタッフを降ろし、素早くフルスイングして奴の棍棒を弾いて宙に飛ばしたのだ


丸腰となったハイゴブリンは宙に舞う自身の武器を見上げるがそれは大きな隙である


『開闢(カイビャク)!』


鞘から僅かに出した刀を強くしまい、金属音を響かせると鞘から瘴気の様な黒い煙が噴き出し、その中から黒いアンデット騎士が飛び出す

そのまま目の前のハイゴブリン目掛けて刀を大きく振り抜き、首を刎ね飛ばした

半回転しながら斬ったので黒騎士はこちらに体を向けているのだがやはりこの黒騎士、俺を見ている

小さく頷くのを見届けるとそれはボフンと黒い煙と化し、消えていく


この技で魔物を倒すとスキル獲得100%、当然息絶えたハイゴブリンの体から発光する魔石が出てくるとリリディは俺の肩をポンと叩き、『助かります』と感謝を口にしてから魔石の前に座る


『おらぁぁぁぁ!』


『ゴッブ!』


俺は隣を見て見るとティアマトが片手斧でハイゴブリンの胸部を大きく切り裂いている

素早い2回の斬撃を見て俺は連続斬りを使ったんだなってわかった

血を流して倒れるハイゴブリンから一度彼は下がって見届けているが冷静だ、魔石が出る迄油断はできないからな、死んだふりとかしないと思うけどもまだ息があるのに迂闊に近づくなんて怪我の原因になりかねないしね


『助かりましたよアカツキさん』


視線を別に向けていた俺はいつの間にか隣にいるリリディに顔を向けるととても嬉しそうな顔をしている事に気付く


『どうだった』


『予定見通り、とでも言っておきましょう』


彼は俺にステータス画面を見せながらも似合わずにも親指を立てて見せた


・・・・・・・・・・


リリディ・ルーゼット


☆アビリティースキル

打撃強化【Le2】

気配感知【Le1】

麻痺耐性【Le1】


☆技スキル

骨砕き【Le1】New


☆魔法スキル

風・突風【Le2】

風・カッター【Le1】

ドレインタッチ【Le1】


・・・・・・・・


ティアマトとティアの方も片付いたらしく、ティアマトが魔石を右手でお手玉しながらこちらに歩み寄ってくる


『お?いっぱしに見えるぜリリディ』


『次は貴方かティアさんで話し合ってください』


『えー私は当分リリディ君と同じで今の称号に慣れたいなぁ』


『てぇことは?』


ティアマトが最後に口にすると皆は彼を見る


『ヘッ!できりゃアビリティースキルが欲しいが斬撃強化を持つ魔物ったらちっと面倒な野郎だ』


『決めてるんだな、そのスキルは何が持ってるっけ』


俺は彼に聞いて見るとティアが素早くこたえてくれた


『魔物Dランクのソード・マンティスだよ、ゾンビナイトも持ってるけど遭遇率はあれ低いからね』


ちょっとだけ俺は驚いた

今はEの魔物メインで討伐をしているのだが、まだDはラフレコドラしかまともに戦っていない

臆病なくらいに俺達はゆっくりと強くなろうとしていたが、時には冒険者らしく挑戦する事も必要だろう


『どうするよアカツキ』


ティアマトが片手斧を担ぎ、話しかけてくるが既に俺の中で決まっている


『今日は早めの撤退だし十分に休んで明日、探しに行こう』


皆が小さく頷く


帰りながら軽い会話を交えるがそこで称号スキルでの話をティアから聞いた

どうやら昨夜の出来事から帰って調べたらしい

称号はパナ・プレイヤーとなった彼女だが称号に合わせたスキルが称号スキルとして現れるのだがそれはレベル固定だと言うのだ、どうやら上がる事は無いって事らしいがそれでも凄いとは思う

そして冒険者ギルドに戻ると今日の魔石を換金し、合計金貨6枚を得ることが出来たのだ

皆に均等に分け、残りはチーム資金

明日が楽しみだと言いながらティアマトは先に家に帰っていくのを俺達3人はギルドの中で彼の背中を見てすこやかに笑ったよ


『ティアマトさんはパワー系ですから必要不可欠なスキルでしょうね、僕も帰って瞑想しないと』


『リリディ君瞑想好きだね、あれって魔力増幅効果あるって聞くけどもみんな体感できないって止めてたよ?』


『直ぐに効果が出ないと信じてます、毎日やるのが日課ですから』


流石大賢者希望、毎日とか俺には無理だ

彼は満足した顔を浮かべたまま、俺達に背を向けて去っていくとティアと2人きりとなる


『帰ろっか』


『そうだな』


特に何もすることなく、2人でのんびりとグリンピアの街並みを眺めながら住宅街に辿り着くと彼女を家まで送り、俺は家に戻る

リビングに向かうと父さんはソファーを独占した状態で口を大きく開けて寝ているが夜勤帰りにそのまま寝てしまったのかな

明日は休みだといっているし、明後日からはシグレさんと日中の警備になると以前聞いたからシグレさんも今寝ているかもしれない


台所では夜食の準備を母さんがしているが隣にはシャルロットが手伝っている

キャベツを切っているが料理の腕は流石だ、しかし引きこもりなのが兄として惜しいと何度も思う


『あらアカツキ、早いわね』


『アカ兄ぃ、お帰り』


『ただいま、父さんは夜勤後爆睡?』


『そうよ?でも夜食の時には起こしてね?当分夜勤もないって聞いたから日中の体に合わせるために起こさないとね』


『わかったよ』


『先にお風呂入りなさい』


そういわれたので俺は一度部屋に戻って着替えを取ると、台所の奥にある狭い脱衣場で服を抜いてから狭い風呂場に向かう

既に湯船が張ってあるが父さん用に母さんがやってくれたのだ、それを俺は先に入る

汗を流してから湯船に入り、体をリラックスさせているといきなりあいつが話しかけて来たよ


《兄弟、昨夜はお疲れだな…まぁそういう日もあるさ》


『出たな開闢マン』


《お前の仲間もそう言うけどよ、もっと格好いい呼び名はないのかよ》


『何がいいんだよ』


俺は背伸びをしながら聞くと開闢マンは唸り声を上げ、考え始める


『決まったか?どうせ現役時代の名前は伏せるんだろ?リュグナも奪宝ゼペットの名を隠してたし』


《あんな小物と一緒にすんなよ、でも確かに兄弟に名前を告げるにはまだ早いから偽名でならば憧れの野郎の名前でも使うか》


『憧れの?』


《テラ・トーヴァと呼びな兄弟、まぁ長い付き合いになるんだ…持ちつ持たれつな関係で互いに頑張ろうぜ》


『深く考えないでおくよ、よろしくなテラ』


《ああ兄弟、明日はソード・マンティスだろ?あいつは両手を振り上げて飛び込んできながらバツの字に斬り裂く攻撃後の隙に攻撃を仕掛けるのをお勧めするぜ?それ以外だと今のお前等じゃ危ないと思うが…まぁ大丈夫か》


『魔物には詳しいのか?』


《当たり前さ、歩く魔物辞典とも言われてんだぜ?》


『今それ考えたろ』


《兄弟、ツッコみは無しだぜ…》


『わかったよ、だが情報ありがとう…そいつを食いたいのか?』


《我儘言えばDランクを沢山食いたいぜ…先ずはソード・マンティスだ、そのランク帯の魔物に慣れたら是非使ってくれや、俺のレベルが上がれば確殺力がより上がるからな》


『今でも十分強いけどな…』


《現役の俺はもっと強いさ、お前らがどの程度予想しているのか知らんが…まぁゼペットは必ずお前を探し、部下を寄越す筈さ、俺のスキルをそれまでに出来るだけ上げ、対抗できるようにしねぇとな》


『実感は無いが、する前になんとか強くなるよ』


《それでいい、それでだ…頼みがあるんだが、もしその願いを叶えてくれるなら俺はお前に一つだけ頼みを聞いてやる》


『なんだか唐突だぞ、どういう事だ?』


《悪いな兄弟、言葉が先走ったようだ…それはな…》


俺はテラ・トーヴァと名乗る開闢スキルからとある頼みを聞くと、数分間考えた末に頭を縦に振った



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る