23話 修羅場Ⅱ
「鶴貝さんいますか?」
「皐月ちゃん!!」
待っていたよ。
そう言いたげな顔で私を連れて、人気のない場所に行った。
「浩介くんから話聞いた?」
「はい。大体は」
「それじゃ話は早いわね。浩介くんからキス疑惑のことは?」
「もちろん。二人ともに疑惑があることも」
「そっか……私さ、そのキス疑惑がある人に、唇の横にキスされたの」
「横? 頬あたりですか?」
「その辺。だから浩介くんから見た角度的にキスしてるように見えちゃったんじゃないかなって思ってるの」
「その人とはどういう関係で?」
「告白されてたの。警戒してたつもりだったんだけど力が叶わなくてね……」
「そうなのですか。その、上川のキス疑惑の方は?」
「先週の火曜ぐらいだったかしら。廊下の窓から女の子と話している浩介くんを見つけてね」
「はい」
「嫉妬しちゃったんだけど気持ち抑えていこうとしてた時に……」
「上川はそんなのに覚えがないと言っています。本当に上川だったのですか?」
「そう言われてみれば分からないわ……少し逆行があったから……」
「分かりました。二人の話し合いの場には私も同席する予定です」
「え?」
「これ以上喧嘩したくないでしょ? 中立の立場の私が二人の疑惑を晴らさせるのです」
「ありがとう。皐月ちゃんがいてくれて助けるわ」
「いえ」
気持ちが沈んでいた。
どうしても、どうしても。
頭にあまり内容が入ってこないから。
「それじゃ、話を始めますね」
「はい」
「えっと、まずは鶴貝さんの方から話をしましょうか」
「ええ。私にあるキス疑惑は違います。たしかにキスはされてしまいましたが唇ではないです」
「ほら!」
「黙って」
「はい……」
まるで裁判所のような空気になってしまった。
でも、仕方ないよね。
「鶴貝さんはそのキスされた男に告白されていたらしく警戒していたのですが力が強く逆らえなかったらしいです」
「そうか……」
「次、上川」
「あ、ああ。そのキス疑惑は全くもって知りません。その日は一日教室で犬飼に相談事してましたし、女子とは会ってません」
「これは分かりません」
「おい!?」
「お二人とも、ここでお互いへの不満や不安事を話すのがいいでしょう。鶴貝さんはこの前の泣いていた時のあれも」
「泣いた!?」
「後々鶴貝さんが話すから。相手を信用して待つのも大事ですが時にはぶつけ合うことも大切です」
「そうね」
「たしかに、そうだな」
「それじゃあ、私はここで離脱します」
「ありがとう。皐月ちゃん」
「本当にありがとな! 犬飼!」
「気にしないで。お二人が円満な恋人生活を送れることを祈ってます」
二人の顔にもう、曇りがないことを見て、安心した。
これでもう大丈夫だろう、と。
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