第1611話 ごめんちゃい!
「ん? 竜機?」
雪かきが終わり、五百メートルほどの滑走路分の木を抜いて一休みしてたら竜機が五機、飛んできた。
「ラズリズ・デルタが直ったんじゃないですか?」
あー。そういや、故障してバリアルの飛空船場に止まってたんだっけな。
竜機は滑走路は必要としないので、垂直に近い感じで降りてきた。
小人のままなのでガリ──じゃなくて伸縮結界トンネルを創ってやった。
「べー様。遅れて申し訳ありません。航空母艦ラズリズ・デルタ、修理完了しました」
黒髪の乙女さん、なんか久しぶりだな。
「そうか。今日中にこの滑走路を完成させるから明日の昼にでも来てくれや」
暗くなるまで二時間はある。整地して結界を敷くだけだし、まあ、間に合うだろうよ。
「畏まりました。明日の昼に合わせて参ります」
「ワリーな。いろいろ放置しててよ」
「いえ。臨機応変に動けてのアーカム隊。べー様の思うがままに動いてください」
「べー様が思うがままに動いたら誰もついてこれないと思いますけど」
頭の上のメルヘンと後ろの幽霊は今だかつて振り払えたことないんですけど!
「それと、バイブラストの公爵様がお会いしたいと連絡が回っています」
公爵様? あ、あぁ、公爵どのな。最近、権力者インフレを起こしすぎて誰だかすぐには出て来なかったよ。
「なんだって?」
「詳しくは聞いておりませんが、べー様を見た者は「早く来やがれ!」と伝えるように言付かっています」
随分と乱暴だこと。もっと優しく呼べないものかね。
「人魚のことで進展があったんじゃないですか?」
「体が慣れるまでゆっくりしててもらいたかったんだかな」
なんて都合よくはならねーか。まったく、ゆっくりしている暇がねーよ。
「優雅にコーヒーを飲んでいる人のセリフではないですよね」
コーヒーを飲むことは人生で大切な時間。何人たりとも邪魔はさせん。
「では、べー様。明日の昼に参ります!」
「おう、頼むよ」
伸縮結界トンネルを潜り抜け、竜機に乗り込んで飛んでいく黒髪の乙女さん。てか、名前なんていったっけ?
「リツさんですよ。仲間の方はわかりませんが」
あー。そんな名前だったっけ?
「整地したら館に戻るか」
あらよっと! で暗くなる前に終了させ、館に戻った。
まだ引き継ぎが終わってねーのか、親父殿やおばちゃんたちが大忙し。長年続いた家を終わらすって大変だなね~。
「終わらせたのはべー様ですけどね」
ガンバっている皆様に労いの敬礼を!
「あ、親父殿。オレ、明日帰るわ。公爵どのが呼んでるみたいなんでよ」
「そうか。なら、これ以上仕事を放り投げられることはないな」
文句の一つでも言うかと思ったら安堵のため息を吐かれました。うん。丸投げしてごめんちゃい!
「まだかかりそうか?」
「ああ。春までかかるよ」
そんなにかかるんだ。ゼルフィング伯爵、オレが考えるより大きかったんだな。
「オレはボブラ村に一旦帰るよ。双子に会いたいし」
ラズリズ・デルタは? とか言わないの。またこっちに戻ってきて、乗せてもらって帰ります。
二度手間だが、まあ、しゃーないだろう。またラズリズ・デルタを使うときがあるかもしんねー。そのときのためにもラズリズ・デルタの方々には気持ちよく働いてもらわねーとな。
「おれも帰るよ。シャニラに会いたいしな」
まだ新婚気分か? 四十半ばに結婚するとこうなるのかね?
「久しぶりにサプルの料理を食いてーな」
「サプルなら魔大陸にいったぞ。なんか岩の亀が暴れているとかなんとか言ってたな」
「はぁー。嫁の貰い手がいるか心配になるぜ」
まだ九歳だけど心配で仕方がねーよ。
「大丈夫だろう。サプルはあれで村の若い者には人気だからな。妹より自分のことを考えろ。一生独り身でいる気か?」
「そんときはそんときさ。今さらこの性格や暮らしを変える気ねーしな」
イイ人生だったと死ぬことが今生の目標だ。それを許してくれる女じゃなきゃ結婚など無理だろうよ。無理にしたところで離婚されるのがオチさ。
「今は未来の嫁より双子だ。忘れられてないことが重要だ」
転移結界門を潜り、ゼルフィングの館に戻った。
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