第1587話 三強

「妻のミレシアナとわたしを支えてくれているマッドラ将軍だ」


 ドレミにお茶をだしてもらい、王弟さんの横にいた男女を紹介してくれた。


「もう知っているだろうが、挨拶として名乗っておく。オレは、ヴィベルファクフニー・ゼルフィング。見ての通り、学もなければ礼儀も知らねー村人だ。生意気なクソガキと流してくれると助かるよ」


「そう見せたいならもっと無知を装うことだ。見る者が見ればべーの異常さを色濃く感じ取っているぞ」


「まあ、オレなりの人物判定法だな。王弟さんのようなできるヤツは見た目に騙されてくれねーからな」


 いったいなにが見えているんだろうと不思議に思うよ。


「フフ。小賢者にそう言われると誇らしいよ」


「村人に認められたってしょうがねーだろう。その誇りは周りに向けてやりな。この敵だらけの中で王弟さんを守ってくれてんだからよ」


 あんなヤツらがいる中でよく生きてるものだ。


「嫁さんは、ハーフエルフで、将軍は獣人か。王弟さんが他種族に寛容なのはこのせいかい」


 カムラやハイニフィニー方面には犬の獣人が暮らしていると聞いた。六ヶ国同盟内では人の次に獣人が多いとも聞いたな。まあ、親父殿たちから聞いたんだけどな。


「マッドラはともかくよくミレシアナがハーフエルフとわかったな?」


「いろんなハーフエルフを見てるからな。嫁さんは、見た目は人の血が濃いようだ」


 姉御も人の血が濃くて耳とかは尖ってはいないが、長命なところはエルフの血を受け継いでいる。


 嫁さんもそのタイプだろう。見た目が二十半ばに見える。


「ハーフエルフの見た目は、二十半ばくらいで一旦止まる。エルフの血によって様々だが、三百年も生きたら老化が進むそうだぜ」


「さすが他種族多民族国家を立ち上げた村人だな」


「チャンターさんから聞いたのかい?」


 秘密にしろとは言ってねーが、言ってイイ相手と言ってはダメな相手はいる。チャンターさんは、王弟さんには言っても構わないと判断したわけだ。


「ああ。協力をお願いされたよ」


 さすがチャンターさん。誰もが知る商人を目指すだけはある。顔を売るのがお上手だ。


「じゃあ、チャンターさんも同席させるか。ドレミ。チャンターさんってどこにいる?」


 双子が産まれたときには館にいたんだからそう遠い場所にはいってねーはずだが。


「ゼルフィングの宿屋でアバール様と飲んでいます」


「あんちゃんも一緒か。それは好都合だ」


 壁に転移結界門を設置。宿屋の前にマーキングしたところへ繋いだ。


「ちょっと待っててくれや。レイコさん。王弟さんの相手しててくれな」


 自分の自己紹介は自分でやっててちょうだいな。


「わかりました。早く戻ってきてくださいね。あまり離れると地縛霊になっちゃいますからね」


 あや、そんな設定なかったやん。


「わかったよ」


 どっちにしろ二人を連れてくるだけ。五分もかからんわ。


 転移結界門を潜ってゼルフィングの宿屋へゴー! オレの登場に驚くお二人さん。あんちゃんがなにかを察して逃げ出したが、すでにオレの捕獲範囲。騒ぐあんちゃんとなにが起こっているかわからず戸惑うチャンターを連れて戻ってきた。


「お待たせ。二人を連れてきたぜ」


 逃げられると厄介なので転移結界門は消しておこう。あと、部屋も結界を張ってシュンパネ防止だ。


「また説明もなしに連れてくる……」


「大丈夫。二人なら一瞬で察せれるから」


「──察せられるか! どこだよ、ここ!」


「あれ? あんちゃん、王弟さんと会ってなかったっけ?」


「王弟? ──アニバリ様?!」


 あ、ちゃんと会っているようだ。よかったよかった。


「じゃあ、チャンターさん。あんちゃんに説明してくれや」


「いや、おれも事態が受け入れられないのだが……」


「世界貿易ギルドの三強が情けねー。一瞬で悟れよな」


 まだまだ経験が足りてねーな。


「よし。オレがわかるように説明してやろうじゃねーか」


 耳をかっぽじって聞きやがれ。

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