第1543話 桜花村
「遅れて申し訳ありません」
農作業服からメイド服に着替えたミタさん。別に着替えなくてもイイのに。てか、ミタさんって私服持ってねーんだろうか?
まあ、ミタさんは色気より食い気だから服に頓着しねーんだろうが、一枚くらい私服を持っておけよ。ダークエルフとしては年頃っぽいんだからさ。
今度、トアラんとこに連れてって服でも作ってもらうか。
「ミタさん。こっち元魔王さんで、今日からここの村──って、そういや、この村なんて名前?」
いやまあ、村と呼べる規模でもねーけどさ。
「特に名前はありません。この周辺にダークエルフが住む村もありませんから」
「なら桜花村にしよう。村長、どうだい?」
「オウカ村、ですか。なにか意味があるので?」
桜がねーからオウカに聞こえるのか。たまに前世の発音を出すから変な言葉が広まっちまうんだよな。
「まあ、綺麗な花が咲く村って意味さ。今度、花人族を連れてきて花を増やしてもらうよ」
ここは緑がなくて殺風景すぎる。花でも植えて少しは華やかにしてやろう。
「ミタさんは反対か? あ、なんならミタさんがつけてもイイぞ。ここの復興はミタさんが中心になってやってんだからよ」
オレは部外者。名前をつけるなら住んでいた者がつけたほうが筋だろうよ。
「いえ、オウカ村でいいと思います。綺麗な花が咲く村にしたいですから」
「よし。じゃあ、今日からここは桜花村。あんたが村長だ。ミタさん、構わねーよな?」
「もちろんです。魔王だった方に守っていただけるなら村に残る者も安心でしょうから」
「ヴィベルファクフィニー様の命に従い、桜花村の村長として役目を果たします」
片膝を床について頭を下げる村長。いや、そんな厳かなこと言ったわけじゃないんだがな。
「ミタさん。村長に村のもんを紹介して、今後のことを教えてやってくれ。いつでも帰って来れるようにな」
確か前に魔大陸に戻りたい年より連中がいると言っていた。なら、そいつらが帰って来れるようになったら故郷の体を保てるだろうし、ミタさんも帰って来たと感じるだろうよ。
「はい。べー様。ありがとうございます」
「ミタさんにはメイドとしてではなく、家族としてやってるだけだ。礼などいらんよ。オレはオレのしたいことをしてんだからな」
それで礼など求めてねーし、恨まれても結構。オレはオレのしたいようにするまでだ。
「じゃあ、オレは戻るよ。あっちもあっちでメンドクセーことになってるからな」
「ほぼべー様が煽って炎上してる形ですけどね」
オレは面倒事を解決してるだけだい!
「ミタさん。自分が納得するまでとことんやるんだぞ。後悔しねーためにな」
そう言って部屋を出た。
ダークエルフは寿命が長い。だが、過ぎたら一瞬だ。二度と戻って来ることはねー。今を一生懸命生きて、未来に後悔することだけはすんじゃねーぞ。
「メイド長さん。あとは頼むわ」
部屋の外に控えていたメイド長さんに声をかけた。
「畏まりました」
「おう」
と返事して外に出て転移バッチを発動。モリブへと戻った。
「べー!」
拠点とした場所に戻ると、レディ・カレットがやって来た。どうした?
「父様に呼ばれたからちょっとバイブラストに戻るわ」
「どうやって?」
てか、どうやって呼ばれた?
「シュンパネを優先して都合つけてもらってるのよ。帝国にヤオヨロズの者を留学させてるからね」
どーゆーこと?
「バイブラスト公爵も後ろ盾になっておりますからその連絡手段として回してもらっているのです」
と、護衛の騎士さん。追加説明ありがとうございます。
「へー。そんなことになってたんだ」
誰が指揮してるかわかりませんが、オレの代わりにありがとうございます!
「べー様が言い出したんだから興味を持ってくださいよ」
オレは責任を負う者。それ以外は丸投げです!
まあ、レディ・カレットがいようといまいと関係ねー。ねーちゃんたちが戻って来るまでオレは湖の浄化でもやってっか。あらよっと!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます