第1538話 シープリット族

「これからどうするの? 地下迷宮にいくの?」


「いや、さすがにオレらだけじゃ不安だからシープリット族を呼ぶ」


 南の大陸に放置してきたシープリット族。皆は忘れてるかもしれないが、下半身四肢の獣で上半身も獣なケンタウロスな種族だ。


「あれ? どこに置いて来たっけ?」


「まずべー様が忘れてますよね」


 ハイ、忘れてまーす。ドレミさーん! 教えてちょんまげ~!


「ジャッド村に居を構えております」


 ジャッド村ってーと、南の大陸にいって最初の村だっけか? ヤンキーがいた。※1235話から南の大陸編。


「あれ? 山に基地を造ったのはカイナーズだっけ?」


 そこまでは覚えてねーや。


「ララちゃん。オレが戻ってくるまでここを守れ。ツンツインテールとモブ子は援護だ」


「わたしは戦いは専門外よ!」


『わたしもです!』


「ここは魔大陸。死にたくねーのなら創意工夫で戦い抜け!」


 甘ったれたこと言ってんじゃねー。生存本能を呼び覚まして戦え。


「ミラ、シーホー、諦めろ。そいつは一旦言い出したら引かないぞ。わたしが相手するから背後を守っててくれたらいい」


 さすがララちゃん。南の大陸で実戦を経験しただけはある。もう思考が戦う魔女になってるよ。


「べー様がそうさせたんですけどね」


 ふっ。若い者が成長する姿は見てて気持ちイイもんだぜ。


「ハァー。楽観的な方ですよ」


 オレはいつでもポジティブシンキング。いつだってゴーイングマイウェイだぜ。


「あ、そういや、ミタさんの村にシープリット族のメイドを置いた記憶があるな?」


「奥様が出産に入ったとき引き上げさせました」


 あ、そうだった。オカンのためにつけさせたんだったわ。いろいろ忘れててごっめーん!


「調整に勤しんでるメイド長さんの苦労が目に見えますね」


 メイド長に感謝の敬礼! あしゃーす!


「ジャッド村は……結界マークしてなかったな」


 いろいろあって結界マークを張るの忘れてたわ。


 まあ、転移バッチでいけるし問題ナッシング。んでは転移バッチ発動。ジャッド村へ!


 て、やって来ましたジャッド村。去年のことなのに久しぶりに感じるぜ。記憶は薄くなってるけど!


「べー様!?」


 たぶん、シープリット族の女性陣。顔が獣だから判別できねー。


「おう。久しぶり。ちょっと地下迷宮に入るから戦士を何人か集めて欲しいんだわ」


 ジャッド村がどうなってるかわからんのでお任せしまーす。


「わ、わかりました! すぐに集めます!」


 なんか非常召集ばりに大騒ぎになるジャッド村。いや、そこまで非常事態ってわけじゃないんだよ……。


 なんだか「うそピョーン」とか言ったら大暴動になりそうな空気なので、オレはドンと構えて待つことにした。


「これでモリブになにもなかったらそうなるのでは?」


 なんだろう、この進むも地獄、戻るも地獄なこの状況は? オレ、なにも悪くないのに……。


「悪くはないでしょうが、べー様がやったことが今になって返って来てるだけだと思いますよよ」


 オレは押しつけられたことを解決してるだけじゃん。スローなライフを求めているだけじゃん。神はそんなにオレが憎いのか?


 なんて答えが出るわけもナッシング。成るように成れと、流れるままに流れていきましょう、だ。


 次々とシープリット族が集まってくる。


「べー様!」


 誰だっけ? 


「ルダールさんですよ。巌窟王を持ってるじゃないですか」


 あ、巌窟王ハルバードな。武器は見たらわかるが、誰に渡したかなんて忘れたよ。大きな友達だって覚えてねーよ。あ、覚えていたらオレにまで一報をくださいませ。


「ルダールもジャッド村に移ってたんだな」


「はい。ここは皇国からの干渉もありませんし、狩りに向いてますので」


「そうか。まだ暮らしも安定してねーのに召集したりしてワリーな。三十人くらいでイイぞ」


 可能ならこの騒ぎを静めてくださると助かります。


「いえ。べー様からの召集です。なにを置いても集めてみせます」


 なんでそう大事にすんのよ。ちょっと手伝って欲しかっただけなのに。


「まあ、まだ大事になるかもわかんねーから、先発隊として二十人。周囲警戒で五十人。予備で三十人でイイぞ」


 転移結界門を設置し、魔大陸と繋いだ。


「ここは開けておく。見張りを立てておいてくれ」


 オレが言ったところで守るわけねーし、もうそっちで決めてくれだ。


「じゃあ、先にいってるよ」


「先発、べー様に続け! シープリット族の名を汚すな!」


 まったく、魔大陸出身のヤツらは扱い難くてしょうがねーぜ。

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