第1512話 おもしろくなくてもおもしろくする男

「──べー様!」


 朝。畜生どもの戯れを眺めながらマンダ○タイムを過ごしていると、ミタさんが現れた。あらお久。どったの?


「地竜が村に近づいて来るんです! なんとかしてください!」


 地竜? って、あのでっかい地竜のことか?


「あーそういや、エサをやりにいくの忘れてたわ」


 バイブラストで木を集めはしたが、なんかいろいろあって地竜のことなんてすっかり忘れてたわ。メンゴ☆


「てか、なんで地竜はミタさんのところに?」


「あたしのところにではなく村にです。少し前から方向を変えて、シュヴエルさんにお願いしたのですが、止められないんです!」


「シュヴエル? 誰よ?」


「地竜──アリュアーナの意思を司る者と名乗った黄金色に輝いていた竜人ですよ。ピータとビーダをくれた」


「ああ、いたな金ぴかの竜人。百雷の高鳴りをとか言った」※814話へGO!


「それは覚えているのにシュヴエルは忘れる意味がわかりません」


 だからそれは生命の神秘だよ。それがオレの個性と受け入れてちょうだい。


「制御するシュさんが無理ってんならオレでも無理だろう?」


「それを無理をどうにかするのがべー様じゃないですか!」


 いや、どうにもしねーよ! あなたはオレをなんだと思ってんのよ? オレは不可能を可能にする男じゃないわ!


「ハァー。わかったよ。ミタさんの村が潰されるのも後味ワリーしな」


 あの村は魔大陸でのモデルケースとなる場所だし、オカンが携わってるところでもある。放っておくわけにはいかんでしょう。


「メイドさん。片付け頼むわ」


 コーヒーを飲み干し、椅子から立ち上げた。


「はい。いってらっしゃいませ~」


 今日の日替わりメイドに声をかけて転移結界門へと向かった。


「あら、どこかにいくの?」


 どこからともなくみっちょんが飛来した。あ、頭の上にいなかったんだ。いるつもり……でもなかったな。うん。


「ああ、魔大陸にな」


「そう。またおもしろいことするのね」


 と言ってオレの頭にランディング。剥げるからゆっくり降りてちょうだい。


「おもしろくなるかはわからんぞ」


「べーならおもしろくなくてもおもしろくする男よ」


 うん、まあ、それなら認めざるを得ないな。人生を楽しくする達人だからな、オレは。


 転移結界門を潜ると、委員長さんがいた。


「──ッ!?」


 オレを見るなり回れ右。ダッシュで逃げたので条件反射で捕獲してしまった。


「なんで逃げんだよ?」


「そりゃ、またなにかすると察したんでしょう。報告書作りで一番ゲッソリしてた方ですから」


「に、逃げてないわよ! ちょっと急用を思い出しただけよ!」


 どんだけウソが下手なんだよ。もう連れてってくださいと言ってるようなもんだぞ。


「……全力でいきたくないを表現してると思いますよ……」


「そうかそうか。そんなにいきたいか。よし。たくさん報告書を作れるところに連れてってやろう。なに、遠慮するな。魔女でも滅多にいけないところだからな」


 大図書館の魔女なら何人かは魔大陸にいってようが、奥深くまでいった者はいるまい。初の魔女として名を残してやろうじゃないか。


「イヤァアァァァッ!」


 アハハ! イイ声で鳴くじゃねーか! もっと鳴かしてやるからついてこいや。


「変態ですか?」


「失敬な。若き魔女へ試練を与える者です」


 ダリムを連れていきたいところだが、委員長さんも委員長さんで伸び代がある魔女だ。たくさん経験させて未来の大図書館を引っ張ってってもらいましょう。


 暴れる委員長さんの首根っこをつかみ、転移バッチを発動。ミタさんの故郷へと転移した。

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