第1511話 畜生どもの戯れ

「ホー! 侵入者!」


 ブルー島に現れるなりアホ梟が襲いかかって来た。


「誰が侵入者じゃ、ボケが!」


 蝶のように避け、蜂のようにパンチを食らわせてやった。


「このくだり何回やんだよ! イイ加減覚えろよ!」


「……コ、コミュニケーションなのに……」


 梟がコミュニケーションとか言うなや! どこで毒されてんだよ!


 オレのパンチを食らいながらヒョコッと立ち上がるアホ梟。打たれ強いなお前……。


「なに、それ?」


 結界で拘束するプリンに気がつき、ヒョコヒョコと近づいて嘴で頭をグリグリする。威嚇か?


「ここで飼うからお前が面倒みろな」


 拘束を解くと、プリンが一目散に逃げ出した。おー元気だね~。


「ミミッチーの配下?」


「うん。配下配下。プリンって言うんだよ。お前がボスなんだからちゃんと教育しろよ」


「ホー! ミミッチーの配下! プリン!」


 なにが嬉しいのかわからんが、飼育はお前に任せた。しっかり教育しろよ~。


「また丸投げですか」


「基本、オレは放し飼いだからな」


 放し飼いすぎてピータとビーダを迎えにいくことも忘れてる。いつになるかわからんけど、元気にしてろよ~。


 離れへと入り、まずはマン○ムタイム。あーコーヒーうめー。


「てか、見習いもアリテラたちもいなくなってんな。いつ消えた?」


 あ、みっちょんはオレの頭の上からテイクオフして紅茶を飲んでますよ。


「……静かだか……」


 離れにはオレだけしかいないって、久しぶりだな。あ、言いたいことはわかるよ。わかるけど、今はオレにお付き合いくださいませ。


「そういやミタさん、帰って来ねーな。どうした?」


 いたらいたで万能を振り撒いてくれるが、いなけりゃいないで不便を楽しむだけ。今を楽しむだけである。


「確か、魔大陸、故郷に帰ったんだっけか?」


「そんなこと言ってましたね。なにかあったんでしょうか?」


 今のミタさんなら大抵のことは自力で解決できる力はあるから問題はねーと思うが、あのミタさんが帰って来ねーのも気になる。もう少ししたら様子を見にいってみるか。


 ゆっくりのんびり過ごしていると、アホ梟が戻ってきた。


 ……今さらだが、その羽でよくドアを開けられんな……?


「ギィー! キィー! ガァー!」


 アホ梟の口の中で叫ぶプリン。その器用な羽はドアを開けるためにあんのか?


 ペッ! と吐き出され、逃げようとするが、また嘴を開いてプリンをがぶりんちょ。あ、ゴブリンとがぶりんちょって似てんな。ぷぷ。


「プリン、元気!」


 暴れるプリンを咥えて嬉しそうに振り回している。外でやれよ。


「随分とプリンを気に入ったみたいですね」


「そうだな。微笑ましくてなによりだ」


 オットセイで遊ぶシャチのようだが、こちらはじゃれているだけ。温かく見守りましょう、だ。


 しばらく暴れていたプリンも体力が尽きたようでぐったり。オーガ並みに体力があるヤツだ。


「べー。プリンはなにを食べる?」


「雑食だからなんでも食うぞ。メイドにもらってこい」


 二メートル以上ある体を揺らして台所に向かい、果物を羽に包んで持ってきた。その羽、どんな構造してんのよ?


 涎まみれのプリンの前に果物を置くと、生物の本能がそうさせるのか果物に手を伸ばして食べ始めた。


「いっぱい食べろ」


 いっぱい食べる原因を作ったのはお前のクセに偉そうだな。あと、お前は台所から運んだだけな。


「回復力が高いな」


 食って数秒で体力が戻り始め、すべてを平らげたらまた逃げ出した──が、アホ梟にばっくんちょ。だからその器用な羽を使えよ。


「プリン、元気でなにより」


 ブンブンとプリンを振り回すアホ梟。ミモナ梟の習性か?


 まあ、畜生どもの戯れ。好きにやってろだ。


「べー様。これから出かけないのであればビーフシチューを作ろうと思いますが、如何なさいますか?」


 と、台所からクルフ族のメイドが顔を出した。


「ビーフシチューか。今からならタンにできるか?」


 オレ、タンシチューが結構好きなんだよね。牛がいなかったから山羊のタンだったけど。


「はい。大丈夫ですよ。一時間くらいで作りますね」


「そんなに早くできるのか?」


 サプルは一日煮込んでたぞ。


「はい。圧力鍋を使いますので一時間でトロトロにできますよ」


 圧力鍋か。オレもいくつか買っておくかな。材料を煮込むとき役に立ちそうだ。


 畜生どもの戯れを眺めながら夕食ができるのをまったりしながら待つことにした。 

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