第1382話 魔女交換
昼食になったので魔女たちの相談? を中断した。
「親父殿は帰って来ないんだ」
囲炉裏間に上がり、料理が並べられるが、親父殿がやって来なかった。
「村長のところで皆と一緒にいただいてるよ」
すっかり村に馴染んでんだな。オレのほうが村人歴長いのに!
「なんの嫉妬ですか?」
村人としての在り方にだよ。
クソ。悠々自適に、のんびりまったり暮らすためにガンバってるオレが村人らしい生活ができねーんだよ。理不尽だ。
「単に自業自得なだけでしょう」
ハイ、まったくその通りでございます。
誰もやってくれないのなら自らやるしかねー。それで起こる事象は自ら動いた者に降りかかる。わかっていても納得できぬのが人なのだよ。
オカンの音頭で昼食をいただき、食休みのあとにまた魔女さんたちの話を聞く。
「ってか、その声は先天的か? 後天的か?」
『先天的です』
と、マトリカで返してきた。使いこなすの早いな。
「治したいか?」
『いいえ。せっかく鍛えた魔眼を失いたくないので』
へー。芯のしっかりした魔女さんだこと。十人の中でモブ子さんが一番しっかりしてるのかもな。
「で、その魔眼はどんなことできるんだ?」
『体を透視したり攻撃したりできます』
「目からビームとか出せちゃう?」
それなら是非とも見せて欲しい!
『……ビームとはなんですか?』
あ、ビーム知らんか。
「鉄をも溶かす熱線だよ」
『……目から出す理由がありますか……?』
「カッコイイって言う不可逆的な理由がある」
他になにがある? 目からビームはカッコイイんだぞ!
「ベーの戯れ言は右から左に流しておきなさい。ベーもシーホーの身になって考えなさいよ」
「モブ子の身になれってもな~。思念、透視、って、攻撃って、どんな攻撃するんだ。ちょっとやってみてくれや」
頭の上にいるメルヘンをつかみ、モブ子の前に出す。
「──なにさらしてんじゃボケが!」
おもいっきり指を捻られた。イダダダ! 折れるわ!
クソ! 忘れてた。オレたち互いの能力が使えるんだった!
「……な、なんて乱暴な妖精なんだ……」
つーか、同じ力なのになんでプリッつあんのほうが強いんだよ?
「乱暴なのはあんたでしょうが! なに人を的にしようとしてんのよ!」
「いや、標的にイイかと思って」
「よくないわよ! 確かめたいならベーがなりなさいよ!」
「いや、オレだと効かないし」
モブ子の魔眼がどれほどのものかはわからんが、自身に纏わせた結界と、竜の毛で編まれた服は並みの剣では切り裂けねーし、並みの魔力ではどうこうできねーはずだ。
「……いつも同じ服を着てると思ったらそんなカラクリがあったんですね……」
「この服、親父殿が使っている鎧の四倍は金がかかってるんだぜ」
毛のある竜ってなかなかいねー。三着で金の延べ棒が十本もかかったぜ。
「……村人が望む防御力じゃないですよね……」
「普通の服じゃ、オレの力に耐えられねーからな」
結界で服を強化するのもイイんだが、なんらかの原因で結界がなくなったら服はビリビリに破けてしまう。突然、丸裸とかごめん被る。そうならないための防御力でもあるんだよ。
「……意外と不便な力ですよね……」
使いこなすまでは不便だったが、使いこなせれば便利なものさ。
「その攻撃って、人相手か?」
『魔物にしか使ったことがありません』
魔物だけか。
「ドレミ。アヤネ、呼べるか?」
「はい。呼べます」
と言うので呼んでもらったらすぐにテレポートしてきた。大陸間テレポートってスゲーよな。
「クフフ。どうかなさいましたか?」
「そっちに送った魔女の二人いるだろう。そのどちらかとこのモブ子を交換したいんだよ。モブ子、魔眼持ちで攻撃手段もあるんだよ」
「クフ。では、ミラさんと交換しますね。ミラさん、ララシーさんとは合わないようなので」
そんなこと考えもしなかったわ。これからは相性も考えんとならんな。
「そうか。悪かったな。手間かけさせちまって」
「いいえ。ダリムさんが中に入ってくれましたから」
どっちがツインテールでどっちがボサボサ髪かは知らんが、ワリーことしたな。会ったら謝っておこう。覚えてたら、だけど。
「じゃあ、交換頼むわ」
「はい。お任せください。モブ子さん──ではなく、シーホーさん。いきますね」
モブ子の肩に手を置くと、南の大陸へとテレポートした。
「……アヤネ、ベーのことになると周りが見えなくなるんだから……」
メルヘンの呟きはサラッとスルー。
飲みかけのコーヒーを手にして残りを飲み干したら、アヤネがツインテールを連れて戻ってきた。
ツインテールがミラか。ってことはボサボサ髪がダリムか。
「覚える気、まったくない顔ですね」
否定はしない。必要としないからな。
「な、なに? なんなの!? ライラ? え? なにが起こってるの!?」
落ち着きのないツインテールだ。
「いや、なんの説明もなしに連れてこられたら当然の反応ですよ」
それでも平常心を見せて、状況を把握するために頭を働かすのが魔女だろうが。
「では、ベー様。わたしは戻りますね」
「ああ。サンキューな。助かったよ」
クフフと笑いを残して南の大陸へとテレポートした。
「さて。詳しいことはそばかすさんから聞いてくれ」
「わ、わたしですか!?」
そばかすさんの叫びに、サムズアップで答えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます