第1383話 ツンツインテール

「……いいように使ってくれますわね……」


 ツインテールさんがジト目で睨んで来ます。


 これはアレだ。サリバリと同じタイプの女だ。ツンツインテールだ。


「イイように使われたくないなら跳ね返す力を身につけろ」


 それが弱いと言うこと。未熟と言うこと。覆させれないなら心を隠して反撃のときを待て、だ。


「ミ、ミラ、落ち着いて。館長からも言われているでしょう、すべてを学んで持ち帰れって」


 叡知の魔女はどこまでも知識に貪欲だよ。まあ、こちらも魔族の留学生も帝国を学ばせてるんだからお互い様、なんだけどな。


「まあ、そう言うことだ。で、ツンツインテールはなにがしたいんだ?」


「ツ、ツンツインテール?」


「ミラ、あなたのことよ。べーくんは、人の名前を覚えられないって説明受けたでしょう。ツンがなんなのかわからないけど、あなたの髪型はツインテールって言われてるのよ」


 そ、そばかすさん、結構はっきり言うのな。それに、ツインテールって髪型まで知っている。情報収集能力に長けてるのかもしれん。こいつはレイコさんタイプだな。


「あー確かに。好奇心旺盛な感じです」


「ツンってなんなんですか?」


「ツンデレ。大勢がいる前ではツンツンして、好きなヤツの前ではデレデレになる。まあ、デレるか知らんからツンツインテールだな」


「あーまさにそんな性格です。ツンデレとは言い得て妙ですね!」


 本当にツンデレなタイプなんだ、ツインテールさんは。


「わ、わたしはそんなんじゃないわよ!」


 顔を真っ赤にさせて否定している。それが肯定してるともわからずにな。


「ミラは、ララリーと同じで攻撃系魔法を得意としてるんです。だから、ララリーとはよくぶつかっていたんです」


「ララちゃんの性格を考えたらツンツインテールとは確かに合わんな」


 水と油、とはなんか違うが、交わらない性格同士だ。反発しか生まれんだろうよ。


「どんな攻撃魔法が得意なんだ?」


「土魔法です。本人は氷が得意だと言い張ってますが」


「わたしは、氷の魔女なのよ!」


 まあ、土魔法は地味だからな。派手好きそうなツンツインテールは認めたくないだろうよ……。


「土魔法、便利で汎用性があってイイんだけどな」


 万能かと言われたらそうじゃないと答えるが、何事も極めたら最強になるんだぜ。


「よし。ツンツインテールの力、見せてみろ」


「はぁ!? なんでそうなるのよ!!」


 有無を言わさず、暴れても文句が言われない魔大陸へと転移した。


「こ、ここは?」


「魔大陸だ。てか、地竜がいた場所に地名とかあんのか?」


「決まった名前はありませんね。なにもないので魔王も欲しがりませんし」


 魔大陸なんてなにもねーイメージだが、魔王が欲しがる土地とかあるんだ。


「なら、大陽の谷、とでも命名しておくか」


 またコカードを採りに来なくちゃならんしな。


「……ま、魔大陸って……」


「……南の大陸にいったと思ったら今度は魔大陸って……」


「ベーといると世界が狭く感じるわよね」


 オレも前世で初ドライブしたとき同じことを思ったよ。外国にはいったことないけど。


「そばかすさん、プリッつあん、下がってろ。ツンツインテール。お前の土魔法、見せてもらうぜ」


「て、手加減しませんわよ!」


「手加減ではなく全力で来な。オレの土魔法は最強だぜ!」


 バン! と大地を右足で叩き、凹凸の激しい大地を均した。


「なっ!?」


「驚くのは早い!」


 石の柱を次々と生やし、ツンツインテールの視界を防いだ。


「ミラ! 湖でベーくんの戦いの跡見たでしょう! 油断してると怪我をするわよ!」


「ケガをしても安心しろ! 死なないなら治してやるからよ!」


 石の柱を砂に変えて砂にして視界をさらに塞いだ。が、すぐに砂が渦を巻き、石と変化させられた。


「やるじゃん!」


 氷の魔女とか言いながら土魔法の操作がエグいくらい上手い! それに、錬金の魔法も混ざってる。天才だな。


「なんだかんだとよく練習してるじゃないか! オレの土魔法攻撃を躱すなんてよ!」


「バカにして! 手加減しているのはあなたじゃない!」


 ほー。手加減されていることがわかるんだ。


「なら、これはどうだ!」


 左足で地面を叩き、石の柱を一瞬にして砂と化してやる。


「石の矢!」


 宙に舞った砂を石の矢に変えてオレに射ってきた。


「やるじゃん!」


 こちらも襲いくる石の矢を砂に変え、右足で地面を叩いて硬質化させる。


 右の手のひらに砂を集めてバットを創り、左の手のひらで石の球を創った。


「防げよ、ツンツインテール!」


 石の球を石のバットで打ち出した。


 次々と石の球を創り出して打つを繰り返す。が、ツンツインテールは石の壁を創って防いでいる感じがする。


 さて。次はなにをしようかと考えていたら、なにか大きな魔法が発動した気配を感じた。


 ──くる!!


 考えるな、感じろがしゃがめと叫び、素直に従うと頭上を岩が通りすぎていった。


 舞う砂をギュッと圧縮して視界をクリアにすると、目の前に十メートルくらいのゴーレムがいた。


「スゲー!」


 オレも小さなゴーレムは創れるし、動かすこともできる。だが、大きくするにつれ、ゴーレムは維持するのも動かすのも倍々で難しくなっていく。十メートルなんてオレでも無理だぞ。


 ゴーレムのキックが襲いくるが、動きは鈍い。これは、長いことないな。


 読み通り、ゴーレムの動きは段々に遅くなり、やがて崩れてしまった。


 舞う砂が収まると、ツンツインテールはうつぶせに倒れていた。


「ララちゃんに負けない天才じゃねーか」


 魔人族でもねーのにスゴいもんだぜ。

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