第1320話 お片付け

 家の材料、計十七万円でした~。


 ──安っ!!


 なんて思ったもののここはカイナーズホーム。この世界で一番の激安店。そんなところで十七万円分も買うオレらのほうがおかしいのだ。


 ……いや、何百億円と使って今さらなんだけどな……。


「わたしも無限鞄が欲しいよ」


 すべての材料を無限鞄に入れたらサリネが羨ましそうに口にした。


「店員さん。無限鞄って売ってねーの?」


 自分が持ってたからカイナーズホームに売ってるのか気にもしなかったよ。


「申し訳ありません。只今品切れで、次、いつ入荷するかは不明です」


「へー。カイナーズホームでも売ってないもんがあったんだ」


 まあ、愛が売ってない時点でカイナーズホームは常識的ってことだ。


「ここを常識的と言えるの、ベー様だけですから」


 うっさいよ! 幽霊なら黙ってうらめしやしとけや! いや、恨まれても嫌だけど!


「それなら移動用の乗り物作ってやるよ。荷物がたくさん入るヤツをな」


 弟子も増えたならトラック的なもんが必要だろう。


「お、それはいいね。遠出するときリヤカー移動だったから助かるよ」


「遠出するんだ」


 村にいくくらいはしてると思ったけどよ。


「最近、近隣の村から頼まれるときもあるし、道作りの宿舎とかも頼まれてるんだよ」


「大忙しだな。本当に大丈夫なのか?」


「問題ないさ。わたしはベーの専属。ベーに頼まれたら優先するとちゃんと言ってるからね」


 あ、そう言や、オレの専属だったな。すっかり忘れてたよ。


「んじゃ、その材料も買っていくか」


 車コーナーにいってニトントラックのガワやハンドル、錬金の指輪で変化できそうな金属類、小物類を買った。


 締めて七千八百円なーり~。うん。精神衛生上そんなものだと納得しておこう。うんうん。


 大体のものは買った──いや、大事なの買ってないよ! ココノ屋にいかんとならんだろう!


 急いでココノ屋へと向かい、買えるだけ買い占める。が、タヌキばあーさんの性格を忘れてまたぼったくられてしまった。クソ!


 まあ、ミタさんが喜ぶなら安いものと飲み込み、南の大陸──って、地名がねーと不便だな。まあ、今は塩湖と仮称しておくか。あそこに建てるんだしな。


 サリネたちを連れて塩湖へと戻ると、周囲にX1の死体だか残骸が転がっていた。


「な、なんだい、これは!?」


「オレが買い物にいっている間に襲撃されたっぽいな」


 まだいるとは思ってたけど、これほどいるとは思わなかったよ。最低でも千匹には襲われてんな。


「ベー様!」


 と、武装したメイドさんズが駆けて来た。


「おう、ご苦労さん。怪我人は出たかい?」


 これと言って心配はないが、さすがにこの数では怪我人は出ただろう。


「新人が数人誤射して打ち身になった者が四人でました」


 誤射して打ち身とか意味わから──あ、いや、メイド服、鎧並みに強度があったっけな。


「前にミタレッティーさんを盾にしましたしね」


 そ、そんな過去もありましたよね。結界でレイコさんを見えないようにしてからは撃たれる心配ないから忘れてました。


「誰にも認知されないって寂しいですよね」


 認知されたらオレが撃たれんだから見えないままでいてください。


「でも、魔女さんたちには微かに見えてるっぽいですね。叡知の魔女さんは確実に見えてるみたいですけど」


 まあ、強い結界じゃねーし、魔女さんなら見えても不思議じゃねーか。神聖魔法を知ってるんだからな。


「魔女さんたちは?」


「地下に潜っていきました。試したいと申されて」


「大図書館の魔女と言いながら結構武闘派なんだな」


 ヤヴァイ感じはしたが、それは間違いじゃなかったってことだな。


「家を建てる前にX1を片付けんといかんな」


 腐って変なもん撒かれても困る。さっさと片付けてしまおうかね。


「サリネ。まずは仮小屋を造ってくれ。拠点は必要だからな」


「ああ、了解した」


 サリネに任せてX1を結界で回収。圧縮排除する。


「メイドさんズは、身を綺麗にしろ。服も念入りに消毒だ。X1の体液がかかった者がいたらしばらく隔離しろ。カイナーズにも知らせてくれ」


 宇宙からの生命体はなにを持っているかわからんしな、念には念を入れておいて悪いってことはねーだろう。


「畏まりました」


 しかし、結構広範囲に散らばってな。こりゃ、日が暮れるまで終わらんかもしれんな。


「さて。パッパとやっちゃいますかね」


 まずは多いところから開始した。

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