第1282話 委員会
「イイ天気だ」
出発時の雨はどこへやら。青い空が広がっていた。
「穏やかな旅はのんびりできてイイもんだ」
オレはハヤテから降りて歩いている。
ハヤテ──と言うか、リジャーは歩かせるとストレスが溜まるようで、ちょこちょこ走らせないとストレス死にするそうだ。
……そう言うことは早く言って欲しかったよ……。
エボーはそんなことはなく、エサを与えてれば従順で力持ち。ただまあ、難点は牛の速度しか出せないってことだな。
まあ、一緒に歩くにはちょうどイイので旅気分は味わえるぜ。
「あなたは、なんでも楽しむのね」
委員長さんたちも歩いている。甘いもの食いすぎて太ったからとレイコさんが教えてくれました。
……魔女も女ってことだな……。
「人生は楽しんだもんが勝ちだぜ」
オレがその証拠だとばかりに委員長さんに笑顔を見せつけてやった。
「……のんきな人ね……」
「まあ、のんきなくらいが人生楽しめるもんだぜ。委員長さんも心に余裕を持ってのんきに生きるんだな」
「イインチョー? わたしのこと?」
あ、思わず口にしてしまったわ。
「……名前を覚えないとは聞いてたけど、あなたの中ではイインチョーって呼ばれてたのね、わたし……」
委員長って響き、嫌だったか? 前世の言葉だからこちらのヤツには不可解に聞こえるのかもな。
「どう言う意味なのかしら?」
「とあることをするために組織されたのが委。そこに属する者を員。纏めるのが長。で、委員長。あんたの見た目がそれっぽいから委員長と命名しました」
オレの勝手な解釈なので文句は受付ませんのであしからず。
「……イインチョー……」
「委員長な、委員長」
イインチョーイインチョーと呟きながら委員長と呼べるようにする委員長さん。無駄に向上心があるよな。
「委員長、委員長、委員長。これでどうかしら?」
「お見事。自動翻訳の魔法がなくても他民族の語学も覚えれそうだな」
あ、オレらが平気に話しられてるのは自動翻訳の首飾りを複数人がしてるからだよ。頭の隅に置いといてね~。
「誰への説明ですか?」
ここにいない大きな友達にだよ。
「委員長ね。慣れるとなかなかいい響きだわ。うん、気に入ったわ」
「なら、大図書館に世界録委員会でも創って、そこの委員長になればイイ。叡知の魔女さんに口利きしてやるぜ」
オレの言葉を無下にはできんだろう。今後の付き合いを考えたらな。
「……委員会……」
言葉を反芻して委員会と言えるようにしている。この世界に委員長と委員会が生まれた瞬間だな。
「で、世界録委員会はなにをするのかしら?」
「世界を探究すればイイ」
「世界を、探究?」
「まあ、簡単に言えば世界を知るための組織だな」
人の金と人材で世界を知る。オレはそれを利用させてもらう。最高だな。
「……世間ではそれを下衆って言うんですよ……」
それは見解の相違って言うんだよ。
「この大陸に来て学んだことを本にして未来に継ぐ。大図書館の魔女なら相応しい委員会だろう?」
「……あなたの思惑に嵌まるのは癪だけど、相応しいのは認めるわ……」
「本になったら一つくれな。うちの本棚に収めるからよ」
「あれはもう本棚じゃなくて書庫って言うのよ。写すために人を割かなくちゃならないわ」
ん? 魔女さんたち全員来たんじゃなかったのか?
「アハハ。オレが言う前からやってるとはさすが世界録委員会の長だよ」
「勝手にとは怒らないのね」
「オレは知識の独占はしない主義なんでな」
そのために本の部屋は開放してある。好きに入って好きに読め、ってな。
「知識は囲うものよ」
「それは帝国の、大図書館の主義主張だ。好きにしたらイイ。だが、オレもその囲いに入れてくれよ。今後の友好のためによ」
否! と言うならオレはそれを尊重するぜ。今後、知識は自力で集めなくちゃならないがな。
なんて意味を込めてニッコリ笑顔。
「……そうね。友好のために知識を共有しましょう……」
損得勘定ができるヤツはほんと楽だぜ。
「じゃあ、新たな知識を探究しようか」
「……なんのこと……?」
「ルダール! ザイライヤー! 敵だ! 下から来るぞ!」
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