第1244話 オレはモブ

 と思ったけど、さすがに大人数すぎる。ジャングルが踏み荒らされるわ!


「イカン。班分けするぞ!」


 魔女さんたちは十人。ザイライヤーは八人。メイドが二十人。カイナーズが……いっぱい。この数で団体行動とか無理だわ。


「魔女さんたちに合わせて五班だ。ザイライヤーは薬草に詳しいのは一人で頼むよ」


「わかった」


 理解ある方で助かります。


「ミタさんとカイナーズもそうしてくれ」


「畏まりました」


「わかりました」


 任せ、決まるまでオレはゆっくりコーヒーをいただく。


「あなた、本当に丸投げするのね」


 魔女さんの一人、委員長な感じの魔女さんの冷たい突っ込みが痛いです。名前を知らんので委員長と命名する。


「なにもかもオレが決めることはねー。下の自主性を育てるのも上の仕事だぜ」


「もっともらしいこと言ってるけど、面倒臭いだけでしょう」


 ハイ、まったくもってその通りですがなにか?


「……館長がなぜあなたを推すかわからないわ……」


 館長? ああ、大図書館の魔女さんか。館長って呼ばれてんだ。


「それを知るのがあんたらの役目だろう。曇りない眼でちゃんと見るんだな」


 オレのプライベートまで見られるのは困るが、普段の姿なら隠したりしねー。しっかりオレを見せてやるよ。


「十一歳のオレが言っても説得力はねーが、若いんだからもっと能動的に動けや。オレのところにいる限り、どんな失敗でもオレが支えてやる。自分が成長するために遠慮なく無茶しろ」


 それが叡智の魔女さんから預かった者の役目。まあ、それも丸投げなんですけどね! いや、なんかあったらちゃんと責任は取るからね。


「……わかりました……」


 不承不承って感じで了承する委員長さん。真面目な性格してんな。


「館長さんをよしとするのはイイが、それだけでは館長の縮小版にしかなれんぜ。あとを追うなら追い越す勢いで挑みな」


 あの叡知の魔女さんも大概真面目だが、人の粋を突破するくらいにはイッちゃってる。なにが、とは言えないけどさ。


「べー様。班分けが整いました」


 て、オレの班には委員長さんとチビッ子ちゃん、エース的オネーサマ、ミタさんを含むメイドが四人。カイナーズからは十人。オレらなにするんだっけ? って思わずにはいられない集団となっていた。


「まるで探検隊だな」


 川口さんな探検隊を思い出すぜ。双頭のヘビとか出て来そうである。


 ……まあ、双頭くらいで驚かないくらい珍獣に出会ってるけどな……。


「じゃあ、出発だ!」


 隊長はザイライヤーの者に任せ、オレらの隊はエース的オネーサマだ。


「あ、あの。わたしは、リンベルクと申します。お名前を教えていただけませんでしょうか?」


 オレのかけ声を無視して委員長さんがエース的オネーサマに名前を尋ねた。委員長さん、リンベルクって言うんだ。


「わたしは、ジールだ」


 そして、エース的オネーサマはジールって言うんだ。


「わたしは、ミルシェです」


 チビッ子ちゃんはミルシェって言うんだ。


 ミタさんが感情のない目でオレを見ているが、オレも感情のない顔して委員長さんやエース的オネーサマの会話を聞いていた。


「やはり、違う大陸の魔女は違うのだな」


「わたしたちは、知識の番人を自負しますから」


 女のおしゃべりの中に男ははいっちゃいかぬ。好奇心で入ったら逝っちゃうからだ。


 主役は魔女さんたち。オレらはモブ。大人しくして脇役に徹しましょう、だ。


「べー様。そんなに下がらないでくださいよ。我らはべー様も守ってるんですから……」


「なら、あの中に入ってオレを守れよ」


 カイナーズの中に入ってたら、赤鬼さんが囁いて来たので、オレも囁き返した。


「そこはべー様が自力で切り開いてくださいよ。我々は管轄外です」


 チッ。役に立たねー野郎どもだ。オレの体ではなく精神を守りやがれってんだ。


 オレを守るはずのカイナーズに銃剣で追いやられ、しかたがなく女たちの中に入れられてしまった。


 クソ! 誰だ、こんな班にしたのは!


 お前だよ! って突っ込みはノーサンキューです!

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