第1236話 猿のような生き物
村人探偵ベーがこの謎を解いてやる。じっちゃんの名にかけて!
「なんのノリかは知りませんが、まずお祖父様の名前から調べたほうがよいのでは? と言うか、名前どころかいるかどうかもわかりませんよね」
「…………」
「大体、謎と言うものでもないでしょうに。おおかた、この木にかけて中に入ろうとしたらなにかに襲われて、勇者ちゃんが我を忘れて暴走した、ってところじゃないですかね」
辺りに散らばる獣の骨や倒れた木々を見ながら幽霊探偵レイコさんが推理を説いた。
「フッ。名探偵メルヘン、プリッつあんばりの名推理、感服したぜ。さすがライバルだ」
「そう言うのはわかる者同士でやってもらっていいですか? それよりなにかに囲まれてますよ」
え? そうなの? まったく気がつきませんでしたわ~。
「猿のような生き物四十八匹に囲まれています」
「オレも鈍ったもんだ。こんなに近寄られるまでわからんとはよ」
まあ、人外とか竜とかに触れてたら感覚も狂うけどな。現れた猿のような生き物なんか小動物にしか見えないぜ。
「ベー様を襲うとか哀れな生き物ですね」
オレとしては実験体を確保できてハッピーですけどね。
「捕縛」
で一網打尽。伸縮能力で小さくして収納鞄に放り込む。
「君たちの命は大切に使うから成仏してくれよ」
「あんなのが役に立つんですか? 人と体の作りが違うのに」
「違うと言っても毒のあるなしはわかるくらいには同じ作りさ」
あまり褒められたことではないが、他の生き物のエサにもできるし、囮にも使える。ゴブリンとか猿に似た生き物も結構使い道があるのだ。
「道理でご主人様と気が合うわけです。混ぜたらダメな二人ですけどね……」
先生は一人でもダメな存在だと思うんですけど。R18なことばかりなのでなにとは言えないがな。
「いろは。まだいるか?」
ドレミじゃなくいろはに尋ねる。たまにはフューチャーしないと忘れられてしまうからな。主にオレが、な!
「はい。索敵範囲に六百はいます」
大暴走になったか?
「猿のような生き物、この大陸のゴブリンかか?」
「う~ん。ゴブリンではないと思いますよ。特徴がいろいろ違いますし」
「どこからか流れて来たのかな?」
ラーシュに南の大陸にどんな魔物がいるか教えてもらったが、猿のような生き物はなかった、はず? すべてを覚えてるわけじゃないからわからん。
「かもしれませんね。南の大陸にもたくさんの種がいますからね」
本当に天地崩壊があったのかって思うくらいの種の数だよな。
「いろは。生け捕りできるか?」
「お任せください、マイロード」
伸縮能力を付与させた収納鞄を四つ出していろは(たぶん、本体)に渡した。
西洋人形のようないろはが二つ分裂。二つが四つに。四つが八つにと、十六体のいろはとなった。
「捕獲しろ」
そう命令を出す。
「イエス、マイロード!」
そう言うと四方に散るいろは隊。オレの出番はなさそうだな……。
まあ、いろはやミタさんがいる以上、オレが戦うことはないし、戦いたいわけでもねー。任せれることは任せるのがオレと言う男。よろしこ~。
「しかし、勇者ちゃんたちはなんでここで野宿しようとしたんだ?」
ルククから落ちたってわけじゃないだろうに。
「マイロード。あちらに道があります」
と、メイド型ドレミが言うので案内してもらう。あ、木にかけていた収納鞄は外しましたから。
歩くこと二十メートル。ぬかるんだ道に出た。
「こんなジャングルに道とは。そんなに危険じゃないのか?」
馬車一台通れるくらいの幅があり、草がそんなに生えてない。これは頻繁に往来があるってことだ。
「あの猿のような生き物が出たから通らなくなった感じですかね?」
「かもな」
ぬかるんではいるが、轍や獣の足跡が見て取れた。
「どっちかな?」
「ちょっと上から見てみますね」
上昇していくレイコさん。まるで昇天のようだ。
見えなくなるくらい上昇し、五分くらいして下りて来た。どうでした?
「あちらに煙が上がってるのが微かに見えました。集落かもしれませんね」
ジャングルに集落? なにかの部族でも住んでるのかな?
「なら、そこにいってみるか。勇者ちゃんの情報が入るかもしれんしな」
あの強烈な二人なら誰の記憶にも残ってるはずだ。
捕獲はいろは隊に任せ、煙が上がるほうへと歩き出した。旅の雰囲気を味わうために、な。
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