第1230話 親友

 ほどなくしてカイナが現れた。


「遅かったな?」


 いつもなら召喚したらすぐ来るのによ。


「ここ、見えない力に守られて転移じゃ来れないんだよ。上からも見えないし」


 なにやらスペースワールドな力により守られているようです。


「見つかると困りますから」


 なにやら危ない者から狙われているようです。


「はぁ~。弱肉強食は宇宙的か……」


 ファンタジーワールドがあるんだからスペースワールドもあるんだろうとは思ってたし、地球外生命体は前世の頃から信じてたから驚きはねーが、これだけの技術を持った存在が逃げる敵とか胃に穴が空きそうだわ……。


「宇宙人的な魚さんなの?」


「ミチコさんな」


 失礼なこと言うなよ。いや、オレも失礼なこと言ってたけど!


「宇宙的存在にミチコと名付けるベーを素直に尊敬するよ」


 その目は軽蔑してるように見えるのは気のせいか?


「なんでもイイよ。お前も話に混ざれ。本当ならタケルも混ぜたいが、今リハビリ中だしな」


「タケルなら必死に籠城してるよ。おれも混ざってヒィーハーしてた」


 お前、反省させられてたんじゃねーのかよ? つーか、籠城ってなんだよ? タケル、今なにやってんの!?


「……ま、まあ、なんでもイイよ。お前がかかわってたなら命は保証されてるだろうからな……」


 どうせカイナーズの連中を忍ばせてるだろうからな。


「ナハハ。タケルの活躍を奪いそうで調整するの大変だったよ」


「お前はほんと自由だよな」


 キング・オブ・フリーダムの称号を贈りたいくらいだよ。


「いや、ベーに勝る自由人はいないから。そんなことよりおれを呼んだ理由ってなに?」


「ここに住む人魚の国を創るからカイナーズの支店を出せ。報酬はすべてお前にやるからよ」


「つまり、どーゆーこと?」


 いや、今オレ言ったよね? なんでミタさんに問うんだよ?


「す、すみません。あたしにはなんのことかさっぱりで……」


「あーわかった。了解了解」


 それでなにがわかったんだよ? 


「皆、下がって。ミタさんも。レイコさんは……まあ、いいや。なんか理解できそうだし」


「ですが……」


「大丈夫。ちょっと内緒の話だから」


 そんな説明で納得できるのはカイナーズのヤツらだけだよ。


「まあ、ミタさんは残ってイイよ。そろそろ隠すのもメンドクセーしよ」


 どうせカイナも信頼できるヤツには秘密を教えているはずだ。隠し事苦手な性格してるからな、こいつは。


「まあ、ミタさんなら知っていてもいいかもね」


「ありがとうございます!」


 嬉しそうなミタさん。秘密の共有とかしなくてもオレはミタさんを信頼してるんだけどな。まあ、人それぞれだからイイけどよ。


 カイナーズの連中は素直にカイナの命令に従い、宇宙(って言ってイイのかわからんけど)から出ていった。


「それで、ベーの真意は?」


「言った通りだよ。ここをカイナーズ、って言うか、カイナが守れ。将来のためによ」


「この宇宙船を、ってこと?」


「正確にはこの宇宙船から半径百キロ内を、だな」


 まだこの周辺のことなにも知らないが、半径百キロ内なら国としては成り立つはずだ。社会的にも環境的にもな。


「前にも言ったが、オレは百年も生きられない。必ずお前らより早く死ぬ。ミタさんも長命種だが、それでも数百年生きるのがやっとだ。だが、お前は千年先も生きてるはずだ」


 不老不死、ではないだろうが、人の外どころか生命体の外、神の領域に一歩入ったかのようなヤツなのは間違いねーだろう。


「これは勘だが、オレは死んでもまた転生するかもしれない。この世界に、記憶を持って、な」


「……ベーもそう思ってたんだ……」


「わかってたのか?」


「まーね。他の転生者と神とのやり取りを聞いたら、もしかしてベーたちは選ばれたんじゃないかな~って思ったんだ。大体、神様の失敗だからってチートな能力を三つも与えないでしょ。おれは一つだけなのにさ」


 そうなんだ。まあ、その肉体がもはやズルとしか言いようがねーけどよ。


「特にベーは神に気に入られてる気がする。ベーって前世の記憶を願ってないのに与えられた。神様が忘れたって思うより意図的に消さなかったと言ったほうが納得するし」


 それはオレも思った。まあ、気にしないようにして生きて来たがよ。


「おそらく、前の世界の神が能力を与えるとき魂に刻んだだと思う」


 この世界の神にも魂に刻まれた能力は消せない。か、どうかはわからないが、前の世界の神は介入と言った。それはつまり、神でも魂に触れるのは難しいってことだ。


「まあ、神の領域にオレらは干渉はできないが、この世界には干渉できる。未来に楽しみを残すことを、な」


 もちろん、次の生も今の記憶を持って生まれるかはわからない。が、可能性かがあるなら備えなければいけない。マイナススタートとか嫌だからな。


「オレはオレでいる限り、お前とは義兄弟だ」


 この言葉の意味をどう受け取るかはカイナに任せる。好きなようにしろ、だ。


「おれ、そんなに情けなく見える?」


「寂しん坊には見えるな」


 人の心を持ったお前はなにか求めるものがないと簡単に心を失う。そう言う意味では心がまだ未熟なのだ。


「正解。寂しいと死んじゃうな、おれ」


「そうか。まあ、オレがオレでいる限り、付き合ってやるよ」


 親友がいる。それだけで人生が輝くってもんさ。

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