第1198話 バルバラット族
沼地にオレたち現れた。
「ベー様。あたしたちがいきます」
あい。万事あなたにお任せですと頷いた。
……八岐大蛇っぽいの見たときからオレの管轄じゃないと理解してたしな……。
ミタさんの指揮で十人の武装メイドさんがデカいライフル銃を構え、トカゲさんらに当たらないように発射した。
集中攻撃により八岐大蛇っぽいヤツの頭が一つ、吹き飛んだ。
ファンタジーな世界の生き物のクセに再生能力はなしかい。ちょっとガッカリだよ。
突然の乱入にトカゲさんたちは戸惑い(たぶん、そんな動きをしている)ながら、戦いから遠ざかっている。
装備もまともだし、知性はそれなりにあるみたいだな。魔大陸のキ……なんだっけ? あの竜人さんたち? まあ、再会したときに訊いたらイっか。
「……美味しそうでち……」
小さくして肩に乗るウパ子が八岐大蛇っぽいヤツ……ではなく、トカゲさんたちを見て呟いた。
ん? あれ? え? そっち? そっちだったの!?
「がまんできないでち! 大きくしてでち!」
うん。無理。確実に阿鼻叫喚なことになるから。止めてください。あちらとも戦うとか冗談じゃないわ。
「あの首いっぱいのを食えよ」
旨そうには見えないが、食い応えはあるでしょ。
「不味そうでち」
不味くても食えよ。お前、最近贅沢になってんぞ!
「ウパ子が食わないならわたしが食ってよいか?」
と、オレの足を噛んでいたギンコが八岐大蛇っぽいヤツを見ていた。なんか獲物を見る目で……。
「食うのか、あれ?」
「ああ。食う。美味そうだ」
犬のような姿してても竜は竜、なのか? 竜らしい竜の姿を見てねーから竜と思えねーんだよな。
まあ、食いたいと言うなら好きにしろと、八岐大蛇っぽいヤツと同じくらいのサイズにしてやる。
「ミタさん! あのヘビをギンコが食いたいって言うから任せろ」
「畏まりました! 皆、退いて!」
速やかに武装メイドさんたちが退き、ギンコが八岐大蛇っぽいヤツに向かって駆け出した。
すでに武装メイドさんたちにボロボロにされていたので、難なく八岐大蛇っぽいヤツの首を噛み千切り、目を逸らしたくなるくらいの踊り食い。R18に指定されそうである。
「……あたちも食べたいでち……」
うん。本当に止めて。トカゲさんたち、こっちに槍を向けてるんだからさ。
「ベー様。どうなされますか?」
うん。どうしましょうね?
魔大陸ならまだしも南の大陸(だと思う)にはなんの繋がりもねー。あちらも人と繋がりがあるかもわからねー。どうファーストコンタクトすればイイのやら。こんなことならプリッつあんを連れて来るんだったぜ。
「しょうがねーな」
ウパ子をミタさんに渡し、殺戮阿をポケットに戻してトカゲさんたちに向かって歩き出した。
「ベー様!」
「手を出すなよ。話が通じなきゃ転移バッチで逃げるからよ」
抵抗する手段も逃げる手段もあるので怖くはねーが、異種族とのファーストコンタクトってのは緊張するぜ。
トカゲさんたちの中から一際大きい体格のトカゲさんが出て来た。
灰色の肌(?)にはたくさんの傷があり、感じからして老人だと思う。長老かそれに準ずる者だろう。
「オレはベー。言葉はわかるかい?」
自動翻訳の首飾りはしている。魔大陸でも通じたんだから大丈夫だろう。
「ああ。わかる。どこの人族だ?」
人族か。言葉があるくらいには認識されてるってことか。
「別の大陸、大陸ってわかるかい? 海の向こうの大きな島の人族だ」
「わかる。グロッドから聞いている」
グロッド? 翻訳されないところをみると名前かな?
「オレはそこから友達に会いに来た。ここに来たのは偶然で肉が欲しいから現れた。あんたらと争うつもりはない。許さぬと言うならすぐに去る」
たまたま降りただけ。ダメだと言うなら去るだけである。
「少し、待ってくれ」
と言うと、仲間たちの中に入り、なにか話し合いを開始。その間、オレはその場で待つ。こちらの誠意を見せるためにな。
数分後、さっきのトカゲさんが戻って来た。黒いトカゲさんを連れて。
「わたしは、グロッド。バルバラット族の勇者だ」
勇者? あ、群れの中でってことね。ってことは、あまり外との交流はない感じだな。親父殿より弱い感じがするし。
……井の中の蛙だな……。
「オレはベー。村人だ」
って答えたらなんか怪訝な感じをされた気がした。なんでや?
「……肉が欲しいとのことだが、なんの肉を求めてる?」
あんたら。とか言ったら全面戦争になりそうだな。
「なんの肉がある? どんなのがあるのか用意してくれるのなら礼はする」
魔大陸で手に入れたギなんとかから交換した酒、ガルメリアが入った樽を出した。
「酒だ。飲めるか確かめてくれ」
蓋を開け、カップをいくつか出してトカゲさんたちに飲ませる。竜人とトカゲ人間の味覚や嗜好が同じかわからんが、オレはメルヘンの舌を信じる。
「……旨い……」
とのこと。よかった。口にあったようだ。
「他にも欲しいものがあるなら用意する。肉は生きたまま持って来てくれ」
「わかった。用意しよう」
トカゲの勇者が右拳で胸を叩いたので、こちらも同じく胸を叩いた。
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