第1128話 いねー!!
「……あなたを疑ったことには謝罪させてもらうわ。ごめんなさい」
「申し訳ありませんでした」
お玉さんとマダムシャーリーが頭を下げた。
「謝罪はしかと受け取った。だからそれ以上はいらねー。今後とも仲良くやっていこうぜ」
こんな連中と敵対とか絶対にゴメンだわ。
「ええ。わたしもあなたとは仲良くやっていきたいわ」
では握手、ってことはできねーが、お互いがそれを望んでいるのがわかれば充分だ。あとは相互努力で関係を築いいけばイイさ。
「なら、仲良くやっていくためにオレ専用の転移できる場所を提供して欲しいんだがよ」
ダメだ、と言うならそれもよし。ちょくちょく来る場所でもなければあの林から向かうのも大した距離でもねーからな。
「……そう、ね。あなたの行動を阻害するほうが危なそうだし、反って自由にさせておくほうが被害が少ないかもしれないわね」
言っときますが、オレが問題を起こしてるわけじゃないんですからね。ただ、問題に遭う確率が他より高いってだけですからね。そこんとこ間違えないでくださいましよ。
「ですが玉。レヴィウブの霊壁を変えるとなると大変ですよ」
やはりレヴィウブはなにかに覆われていたか。無意識とは言え、レヴィウブに転移しなかったから変だと思ってたんだ。
「なら、レヴィウブの外でも構わんよ。川か湖があんだろう」
「なぜそれを!?」
とかマダムシャーリーが驚いてる。いや、その驚きに驚くわ。
「これだけの施設に従業員や客を見れば、馬車での運び込みなんて無理だって大抵の者にはわかんだろう。なのに不足している様子はねー。なら、なにかで大量搬入してるってことだ。隊商が列をなしてるわけでもなければ飛空船が飛んでるわけでもねー。なら、残されたのは水上輸送しかねーだろうが」
オレらのように無限鞄があれば人知れず搬入できるかも知れんが、無限鞄は伝説級のアイテムだ。いくらお玉さんでもレヴィウブを賄えるだけの無限鞄を持っているとは考え難い。
もし仮に数十個持っていと考えても帝国中から物を集めるなんて不可能だし、そんな効率の悪いことをするとも思えねー。どこかに一旦集約して、となるはずだ。
なら、その集約場所はレヴィウブの外。大量搬入しやすく、周りから違和感を抱かせない場所となるはずだ。
「慧眼でいらっしゃる」
「そこまで言われるもんじゃねーだろう。ちょっとした商人なら簡単に推測できるわ」
そんなことで慧眼とか言われたら、逆にバカにされてると解釈しちまうわ。
「中型の船が一隻置けるか 小さな倉庫でも構わんよ。転移してすぐにレヴィウブに入れるんならな」
それなら容認できんだろう。それもダメと言うなら正面(いや、どこか知らんけど)からお邪魔させてもらうぜ。
「船ならすぐに用意できますよ。運河から来るお客様もおりますから」
川ではなく運河と来たか。やっぱ帝国は発展してんのな。
「ちなみにその運河を利用するとなると、許可とか必要なのかい?」
「ええ。レヴィウブで登録してもらい年間利用料を支払えば可能です。なさいますか?」
「外国人でもできるんだ」
「いえ、外国の方には許可は出せません。が、べー様はカイ様の保護を受けてますから、バイブラストの枠で登録可能です。その際は、バイブラストの紋章を掲げてもらいますが」
「じゃあ、それで頼むわ」
公爵どのから紋章を使う許可はもらってるから事後報告で構わんだろう。ゼロワン改+キャンピングカーにだってつけてんだからよ。
「登録や周知には数日かかります。場所だけでも見ておきますか? 順路の案内もありますから」
「距離はあるのかい?」
夕方までには帰らんとならんミタさんに申し訳ねーからよ。
「距離はありますが、港からここまでは馬車を往復させてますからすぐですよ」
それならいってみるか。次からそこに転移すればイイんだしな。
「頼むわ」
ってことで馬車で港にレッツらゴー! 距離的には三キロはあったかな? 道は舗装されてたので十五分もかからなかった。
「結構船で来るヤツが多いんだな」
案内人の執事(かどうかは知らん。格好から決めつけてます)さんに思ったことをぶつけてみた。
「はい。冬は帝都で幸霊祭こうれいさいや新年祭が行われますので、ここに宿泊される方々が多いのです」
「ってことは、ここ、帝国に近い場所なんだ。じゃあ、運河ってのはオリビレス河のことか」
まさか帝都の近くにあるとは思わなかったわ。そうなるとレヴィウブの見方(在り方かな?)も変わって来るぞ……。
「よくおわかりで。帝国に住む者ですら地理を把握してない方が多いと言うのに」
「いろいろ話を聞いて、大体の位置を把握してるだけさ。さすがにレヴィウブがどの方向にあるかはわからんよ」
山脈でもあれば太陽の位置や傾きから位置は推測できるが、帝都は平野部にあり、目印になる山もなければオリビレス河の支流はいくつもあると聞いている。
これでわかるヤツは体内に測位能力(適当な名称が思い浮かばんかった)があるヤツだけだわ。
「スゲーな。これ全部魔道船かよ……」
船に帆がないことや豪華さからして魔道船なのは間違いねーし、魔道船が盛んとも聞いている。だからそのことに驚きはねーんだが、その数にはびっくりさせられたわ。
「ざっと見ただけでも百隻以上ありそうだ」
帝国の国力の高さを痛感させられるぜ……。
「べー様。空いているのが第五埠頭の端になってしまいますが、よろしいでしょうか?」
「構わんよ。置いておく用だからな」
運河を下って海へと出てみてーが、そんな暇はねーし、やるんならもっと暖かい季節がイイ。それまでは転移地点としか使わねーんだからよ。
無限鞄から小さくさせたクルーザーを出して水に浮かべ、元のサイズへと戻した。
「買っててよかったクルーザー~」
念のためと、クルーザーは三隻買っておいたのだ。
「うん。そろそろ帰るか」
まだ四時くらいだが、これから戻って買い物ってわけにもいかんだろうし、クルーザーの中を整えるのも時間がかかる。それに、腹が減った。ミタさんの愛情籠った(と思いたい)料理をいただこうではないか。
「ドレミ。このクルーザーの見張りと管理に分離体を二体ほど置いてくれ」
なにが起こるかわからんから無人にするのは避けておこう。
「畏まりました。ホワイトとグリーンを配置します」
……漢字の色が切れたからカタカナになったのかな……?
「任せる。んじゃ、オレらは帰るからお玉さんとマダムシャーリーによろしくな」
「はい。お伝えします。またのお越しを心よりお待ちしております」
はいよと答え、ハルメランへと転移した。って、プリッつあんがいねー!!
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