第1080話 助けて!

 では、皆さんの活躍に乞うご期待です!


 ってな感じで解散。夕食をいただくべく離れへと向かいました。


 ついて来るのは孫二人。後、ピータとビーダ、そして、ウパ子の巨大生物。なんの行進、これ?


「……町でやったら大騒ぎでしょうね……」


 頭の上の珍生物が呆れ果ててます。ちょっと誰かなんとか言ってやってよ! お前が言うなって。


 まあ、言ってくれるだろう人はいないので、心の中だけで叫んでおきますけどね。


「べー。お腹空いた~」


 ドシドシと地面を揺らしながらウパ子がオレを追い越し、いくてを遮った。あぶねーな、まったく。


「海で食わなかったのか」


「あんな小さいのじゃお腹いっぱいにならない」


 まあ、今は二十メートルだしな。数千匹も食わないと腹いっぱいにはならんか。


「ミタさん、魚ある?」


「はい。いろいろ仕入れておきました」


 できるメイドは頼もしいよ。


「上にいったらいっぱい食わしてやるよ」


 つーか、邪魔だから二メートルくらいにしておくか。ほらよっと。


「ぴー」


「びー」


 はいはい、君らもお腹空いたのね。わかったわかった。もうちょっと待ってね。


 二匹も二メートルくらいにする。騒がれてもうるさいからな。


 離れへとつき、無限鞄からテキトーな皿を三枚取り出し、テキトーに大きくさせた。


「ミタさん、これにテキトーな魚三匹入れて」


「三匹でよろしいのですか?」


「デカくするから問題ねーよ」


 こいつらの腹に合わせていたら世界が食いつくされるわ。


「では、これでよろしいでしょうか? ウパ子様の好みかはわかりませんが」


 大丈夫だろう。基本、雑食っぽいし。


 無限鞄から三匹の魚を出して皿へと入れた──瞬間、ウパ子が大口を開けて皿へと飛びかかった。


「猫まっしぐらか」


 直前で結界を纏わせて停止させる。人の世で暮らすなら躾は大切だからな。


「イイか、ウパ子。ここでは餌をくれる者の命令は絶対だ。逆らえば死ぬと思え」


 食事に関してはオレはサプルに絶対服従である。決して逆らったりは致しません。食事抜きは辛いからな……。


「ピータもビーダもだぞ」


「わかったわ」


 なぜかプリッつあんが答える。なぜかとても真剣に。


 ……君もサプルに食事抜きにされたのかい……?


「……わかった……」


 話がわかる両生類……ではなく竜で助かるよ。


 皿に入れられた二十センチくらいの魚を二メートルくらいに──した皿から溢れてしまった。


 失敗と皿を大きくさせ、ウパ子が食い散らかしても大丈夫なように六メートル四方に結界を敷いた。


 次はピータとビーダの皿には薪を盛った。


 基本、草を食べる二匹だが、最近では木(小さい体のときは小枝ね)を食べるようになってきたのだ。


 三つの皿にそれぞれの餌を見て、三匹に目を向ける。


 ウズウズするウパ子。大人しく待つピータとビーダ。そして、竜を躾てるオレってなんなのよ? とか自問自答したくなるのを抑え、待てを教える。


「よし、食え」


 ウパ子を押さえている結界を解除すると、腐っても竜だなぁ~って感じでデカくした魚にかぶりついた。


 地竜の二匹も竜だけあって薪をスナック菓子のように食っている。


「ミタさん、食事を頼む」


 三匹の食いっぷりを見てたらオレも腹が減ったわ。ってか、今日、朝食ってからフ○ーチェとコーヒーしか胃に入れてなかったわ。


「はい。中でお召し上がりますか? 外にしますか?」


「中で頼む」


「はい。ではすくに用意致します」


 ってことで中に入ると、よく見るメイドさんが厨房から料理を運んでいた。


 ……いたんかい。まったく気がつかんかったわ……。


 外から見たら二階建ての小さな家だが、中は結界により拡張しているので、見た目より三倍は広くなっている。


 それに厨房はサプルの注文により、家くらいの結界倉庫を創り、なにか自分色に染めたと言うか、秘密基地に改造したと言うか、入った者から流れて来るウワサから心地よい空間となっているらしい。


 創ってからオレは入ってないし、厨房で火事を起こして出入り禁止を受けてからは一種、アンタッチャブルなところ。完全無欠に意識から外しているので、どうなっているか、どうしてるかは知りませんのデス。


「まあ、好きなところに座ってくれ」


 孫二人に席を勧めて座らせた。


「酒は飲めるかい?」


「え、あ、はい。飲めます」


「わ、わたしも飲めます」


 なにやら畏まる孫二人。そんな萎縮させることしたか?


「竜を従える者に強気に出れるのは頭がおかしい者だけよ。さあ、どうぞ」


 自分の身長より高いビール瓶を抱えて孫二人のコップに注ぐメルヘン。ホステスならナンバーワンになれたことだろうよ。


「まあ、口に合うか知らんが、好きなだけ飲みな。部屋は用意してあるからよ」


 荷車の件もまだだし、魚の買い付けは二日後らしい。シャンリアル領のために働いてくれる者らをもてなす意味で泊まるよう勧めたのだ。


「ミミッチー、今日はお客さんがいるからお酒を飲むのを許してあげるわ」


「ホー! プリッシュ様サイコー!」


 メルヘンに飼い慣らされた害獣め。ってかお前、酒なんて飲めたんだ。


 自ら鳥籠の扉を開けてテーブルに飛んで来た。あ、ちなみに三十センチくらいに小さくなってます。


「ミミッチー、ブランデーが飲みたいです!」


 酢でも飲んでろや、穀潰し鳥が。


「しょうがないわね。今日だけよ」


 どんな食卓やねん! とか今さらなんで突っ込まないでね。うちでは珍しくないんで。


 酒と料理に孫二人、いや、メルヘンと穀潰し鳥がワイワイと楽しんでいるのを見ながらオレは静かに夕食をいただく。もう、メルヘンに任せたわってな。


 夕食が終わり、メルヘンの謎のコミュニケーション能力に任せて暖炉の前に移動。ミタさんが淹れてくれたコーヒーを飲んでると、離れのドアが開き、久しぶりのマイブラザーが現れた。なんか涙目で。


「あんちゃん助けて!」


 と叫びました。

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