第1076話 食料生産地

 じいさんたちの家、完成です。


「……つーか、山頂近くに家は不便だろう……」


 離れは山頂で平らにしたからイイが、そこから外れたら傾斜がある。


 まあ、平衡にするために土台は平衡にしたが、そうなると入り口が高くなる。


 階段を設置すれば解決するが、老人にはキツいだろう。なので土魔法で盛り上げたら道までの傾斜が急になってしまった。


「こう言うところで素人が出るよな」


 やり直しだ! と、土台の位置出しまで巻き戻す。


 ああでもないこうでもないと試行錯誤して、なんとか満足できとなった。


「……ってか、斜面に造るの間違いじゃね……?」


 これなら山頂部をもっと平らにしたほうがよかったかも知れん。


 ましてや宿屋となると空中に張り出すか、階段状にするしかない。バリアフリーとはいかないまでも、もうちょっと宿泊客に優しくせんと批判が出そうだな……。


「いっそのこと、下に造るか?」


 別に、ここに造る必要はねーんだし、宿屋なら人が多いところのほうがなにかと便利だろう。下でも景色はイイんだからよ。


「となると転移結界門も下に移動させる必要があるか」


 ブルー島への出入りがメンドクセーことになるが……転移バッチを使えばそれほどでもねーか。箱庭内なら転移は働くんだしな。


「ってか、離れと館を繋ぐドアを設置すればイイだけか」


 物置からの出入り口を館と繋げば支障はねーだろう。


 家を小さくさせて下へと向かう。もちろん、転移結界門も一緒に移動させます。


「ん? ブルー通り? なんじゃこりゃ?」


 下まで来ると、なんか看板が立ててあり、そんなことが書かれていた。


「名前がないと不便だとつけられたようです」


 と、虎サイズの猫型ドレミが教えてくれた。


「……今さらなんだが、小さかったり大きかったりするのはなんでだ……?」


 本当に今さらで申し訳ないのだが、クリエイト・レワロでスライムを吸収(?)したドレミは巨大化(?)した。


 幼女メイドはダイナマイボディを持つメイドに。猫は虎ほどに。バレーボールくらいのスライムは玉転がしくらいに。


 だが、たまに吸収(?)する前のサイズでいるときがあるのだ。


「つーか、いろはどこよ?」


 いろはの場合はたまに姿を見るが、ほとんど消えているのだ。


「ここに」


 忽然と現れる完全武装した人型(美女型か?)のいろはさん。どーゆーこと!?


「光学迷彩を展開してお側に控えております」


 あ、うん、そっ。と、サラッと流します。


「わたしは、状況に合わせて対応しております」


 よくわからん理由だが、まあ、長い説明は求めてないので、それで納得しておく。邪魔にはなってねーしな。


 ……たまに意識から放り出してるときがあるけど、それはご愛嬌ってことで許してメンゴ……。


「さて。宿屋をやるならどこがイイかね?」


 ブルー通り(これと言って反論はないのでそれで進めます)にはバンガローふうの店(?)が何軒か並んでいるが、じいさんたちの家と宿屋を置くには場違いな感じがする。


「まあ、少し離れて置くか」


 移動させるのは苦でもないし、ばあさんの意見を聞いてからでも遅くはあるまい。


 土台を創り、家をデカくして設置する。


 固定してるのを確かめ、中へと入ってベッドやテーブルを出していく。


 風呂と台所は結界で整え、トイレは外に。ってか、公衆トイレとか作ったほうがイイかな? まあ、その辺はミタさんに任せよう。


「こんなもんだな」


 暮らすには充分だろう。後は転移結界門か。メンドクセーし、そこら辺でイイや。


 とりあえず横に設置する──バン! と扉が開いた。


「やっと開いた!」


 と、プリッつあんが飛び込んで来た。なによ?!


「もー! なんなのよ!!」


 君がなんなのよ、だよ。


 プンプン怒る転移結界門からミタさんやじいさん、ばあさんと続き、孫二人、あんちゃん、多分、従業員の男が二人と現れる。


 そして最後に婦人とゼルフィング商会の者が現れた。


「団体さんでどうしたい?」


「どうしたじゃねー! 扉は開かねーし、開いたと思ったら変な場所に出るし、なんなんだよ!?」


 メルヘンに続いてあんちゃんも怒り出す。カルシウムを補給したほうがイイんじゃない?


「もー! なんで開かなかったのよ! びっくりしたじゃないのよ!」


 ドロップキックをかまして来るメルヘンをサッと避ける。殺す気か!!


 スカイフィッシュのように舞い、チュバカブラのように襲って来るメルヘンと格闘を経て、なんやかんやと姉御の店へと移動した。


 ちなみにじいさんとばあさんは家を整えるために分かれました。


「……ギルドにいるより忙しいのだけれど……」


 なにか疲れたような姉御が言ってるが、商売は商売。ガンバっておくんなまし。あ、オレ、オレンジフ◯ーチェでお願いします!


「……ここ、フルー◯ェ専門店になりそうなんだけど……」


 それはそれでイイんじゃね? 姉御、作るの上手いんだし。オレは賛成だよ。


 でも、その前にコーヒーをください。家造りに夢中で飲むの忘れてたわ。


「ベー様、どうぞ」


 なぜか厨房に入っていたミタさんがコーヒーを出してくれた。この店、どんなシステムでやってんの?


 まあ、姉御が許しているならオレが言うことではねーと流し、コーヒーを一口飲んで、怒るあんちゃんに目を向けた。


「で、なによ?」


「なによ、じゃねー。第二のアブリクトを創ったばっかりだって言うのに、今度はなにを創ろうとしてんだよ? おれを殺す気か!」


「ベー。あまり拡大しないでください。アバール商会もうちも人に限りがあるんですから」


 なにやら二人からの言われなき抗議。なぜそうなる?


「二人が怒る理由がいまいちわからんが、オレはそこの二人に魚を売ってくれと言っただけだし、ゼルフィング商会には関わりないだろう。そもそもこれは、シャンリアル伯爵領の改革だ」


 と言うか、シャンリアル伯爵領を一大食料生産地にする。

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