第1046話 今日も平和だ……。

 そうだ。島を探検しにいこう!


 なんかどっかで聞いたようなことを思ってしまったが、ここを中継島にしようと考えたのなら、一度見ておいたほうがイイだろう。


「あ、そう言や、カイナーズに調べてもらってたんだっけな」


 すっかり忘れったわ。未知な生き物と出会って殺されてないよね?


 ……いや、あれを倒すのがいたら、オレの勘が働いているか……。


「弱者を気にする強者はいないわよ」


 はぁ? なに言ってんの? 意味わからんのだけれど。


 と言うか、なんで頭の上にいるのよ。移動しないときは降りてるじゃない。いや、それだとオレ、完全にマジ○ガー的な扱い受けてるよね? ふざけんじゃねーぞ、畜生メルヘンが!


「エネルギー充填中? って感じ?」


 なんでもイイけど、心の声と会話するの止めてちょうだい。あと、オレから変なエネルギーは出ていません! 人聞きの悪いこと言わないでください! 


「ったく、謎のメルヘンめ」


「ベーに言われたらお仕舞いね」


 放り投げてやろうかと手を伸ばすが、人の頭を動かして回避する腐れメルヘン。も切れるわ!


 クソ。物体Xよりタチワリーぜ。


「ミタさん」


「──はい。なんでしょうか?」


 呼んだらすぐに現れる謎のメイド。誰かこの謎を解いてください。もし、不都合が有ったら黙っててください。オレは知るべきでない真実なら知りたくありませんので。


「島の様子、カイナーズから聞いてる?」


「いえ、まだ報告は受けてません」


 それは珍しい。想像以上にデカいのか、この島は?


「確認しましょうか?」


「いや、イイ。オレも探検に出るから伝えておいて」


 いきなり撃たれるのも嫌だし。


「わかりました。全探索班に伝えます。コーレンを出しますか?」


「んー。どうしようか?」


 もう未踏でもないし、変な生き物もいなさそうだ。コーレンで見て回るのもイイが、それでは探索とは言い難い。いやまあ、ガチの探索も嫌だけどよ……。


「島を一周してみるか」


 まずは島の大きさを把握して、島に乗り込むとしよう。なので、よろしくです。


「では、時計周りでいきますね」


 なら、炬燵を右舷側に向けますか。


 静かに発進して湾の外に出た。


 速度は四十キロ。風景を楽しみ、風を楽しむには適度な速度……なんだが、降り注ぐ太陽の光を浴びながら楽しみたかった……。


「プリッつあん。上のなに?」


「アネムよ」


 うん。知ってる。もう一生忘れないくらい、名前と体が一致したし。


「なんでついてくるのかな?」


 ってか、なんで未だに二十メートルなサイズなの? タケルはイイの? 真上を飛ばないでよ。景観台無しだよ。つーか、世界観が台無しだよ……。


「対象比が欲しいんじゃない?」


 なぜそれでクルーザーを選ぶ? 他にも対象比にしやすいのあっただろう。


「しかし、よく疲れないな。もう半日くらい飛んでんじゃねーか?」


 あれか? マグロと同じで止まったら死ぬのか?


「アネムは特に飛ぶのが好きだから」


 メルヘン機に乗って飛ぶのは、飛ぶのが好きに入るのか? 飛べればなんでもイイってことか? もう彼方に飛んでいきなよ……。


 なんかもう突っ込む気力も湧いてこない。イイ日除けができたと納得しておこう。


「波が荒いわね」


「そうだな」


 まあ、このくらいならまだ航行に支障はないだろう。外洋にも出れるクルーザーだし。


 雄大な自然を眺めながらコーヒーをいただくこの……なんだ。至福? 優越? なんかわからない感じを楽しんでいたら、日差しがさした。


 うん? と上に目を向けたらアネムが銃を両手に握っていました。


 そして、左右からなにかが現れる気配。見ればデッカイ銃を構えるメイドさんといろはさん。


 ……あぁ、ろくでも展開になるんだな……。


 なんかもう悟りを開いたような穏やかな気持ちで覚悟を決めた。


「左舷!」


 とミタさんが叫び、銃声が轟いた。


 背後なので、なにが起こったかわからないが、きっと尊い命が消えたんだろう。なんか水飛沫がスゴいですもん。


 海水が入ったコーヒーを炬燵に置き、無限鞄からタオルを出して顔を拭く。ちなみにプリッつあんは水飛沫がくる前に逃げてます。


「右舷、きます! いろは様は左舷をお願いします」


 なんかオレら、囲まれているみたいです。


 タオルを首にかけて、無我の境地に向けてダッシュする。


 四十メートル先の海面が盛り上がり、ワニのような口を持つ巨大魚が飛び出した。


 ………………。


 …………。


 ……。


 その日、見も知らぬ命が大量に消されましたとさ。めでたしめでたしっと。


 あー今日も平和だぜ~。

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