第1045話 新たな目覚め
目覚めたタケルは、焦点の合わない目を左右に向けていたが、徐々に合ってきたようで、周りにいるヤツらを一人一人見詰め、最後にオレを見たと思ったら涙を流し始めた。
「……ベーさん……」
嗚咽混じりにオレの名を口にする。
「……おながずぎまじだ……」
うん。元気そうでなによ。たーんと食え。とばかりに新しい栄養ドリンクを口に突っ込んでやる。飲み溺れろ。
「ミタさん。撤退の準備とか、その他諸々よろしく」
オレはクルーザーに帰ります。
「畏まりました」
と一礼したミタさんもついてくる。まあ、ミタさんマジック。気にしたら負けだ。
クルーザーへと飛び乗り、炬燵に入る。が、なぜかメルヘンさんは頭の上から降りない。どったの?
「あれ」
あれってなんや。視界に入って言ってください。
「上よ」
上? と見たら、なんか巨人が飛んでました。あ! 忘れてた!
「……やっといてなんだが、なんか不気味だな……」
二十メートルもある武装したメルヘンが空を飛んでるとか、夢も希望もあったもんじゃねーな。
……なんだろうな。剣と魔法ファンタジーを銃と魔法のファンタジーにしただけで血生臭度が倍増するぜ……。
「プリッつあん、戻してやってくれ」
あと、忘れててごめんなさいと謝っといて。
「しょうがないわね。アネム~!」
そっちは任せた。あ、ミタさん、コーヒーちょうだい。
ミタさんが淹れてくれたコーヒーを飲みながら、ぼんやりしてると、フミさんが現れた。どったの?
「ベー様。わたしをタケル様の船に乗せください」
なに言ってんの、このデフォルトねーさんは?
「乗せる乗せないはタケルの管轄だ。オレに決める権利はないよ」
「わたしは、ゼルフィング家に、ベー様に仕えております」
そうなの? なんか下剋上のようなことばかりされてる記憶しかないんですけど。つーか、あなたはサプルの管轄でしょうが。
「その忠誠をタケル様を通してベー様に捧げさせてください!」
チラリとミタさんを見ると、申し訳ありませんとばかりに頭を下げた。説得はしたけどダメだったってことね。
「五人だ。あと、ちゃんと引き継ぎはしろよ。ヴィアンサプレシア号はまだ活躍してもらわなくちゃならんからよ」
言っても無駄なら、その方向で進めたほうが楽だ。
「ありがとうございます! ゼルフィング家に忠誠を!」
別にいらん、と言う前にフミさん消失。なんでもイイわ……。
「申し訳ございません」
「ミタさんが謝ることじゃねーよ。うちは好きにしろが基本だからな」
ただ、やるのなら後悔するな。したらオレは一生軽蔑するぞ。
「ドレミ。エリナって、まだ骸骨嬢のところにいるのか?」
あそこ、狭間って言ったっけ? なんだっけ?
「いえ。創造主は一時館におります」
いないのならいないで構わんか。エリナが必要じゃなく、エリナが創ったものが必要なんだからな。
「エリナかバンベルに言って、潜水艦のミサイルやらなんやら、今まで創ったものをクリエイト・レワロに運んでおくように言ってくれ」
「お急ぎですか?」
「いや、ゆっくりでイイ。いろいろやることがあるからよ」
どうなるかはわからんから、念のためだ。
「ミタさん。公爵どのに連絡してオレがいくことを伝えてくれ。それと、表には出ないから安心しろ、クリエイト・レワロに籠るから、とも頼む」
「いつ、とは決まってはいませんので? 公爵様がお怒りになりますよ」
「なるようになるのがオレだ、とか言っておけ」
さらに怒りそうだが、そんなものは右から左にサラリとサラサラさようなら~だ。
「フミさんもそこに連れて来てくれ。まあ、細かいことはミタさんに任せるよ」
オレがやったら公爵どのの血管が切れそうだし。
「畏まりました。そのように手配します」
よろしこ。
残りのコーヒーを飲んでると、プリッつあんがパ○ルダーオンして来た。どうでした?
「なんか、大きくなることに目覚めたみたい」
あ、うん、そうですか。新たな目覚めに乾杯です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます