第1018話 キャプテンプリッシュ

 プリッつあんをたずねて三十メートル。意外と近くにいらっしゃいました。


 ハイ、オレの旅、ここにて終~了~。イイ最終回だった……。


「じゃっ、次回はピーターパンで」


 ピーターパン、イイよね。特に相棒のティンカーベルが最高だ。


 ツンデレっぽくて天真爛漫。相棒にするならそんな子だよね。 ピーターパンさんにお願い。ぜひともうちのプリッつあんとティンカーベルさんを交換してください。オレ、ティンカーベルとなら仲良くやってける気がするんだ。


「なに言ってんの、このバカは?」


 そんな蔑んだ目なんていらねーんだよ。悔しかったらティンカーベルみたく光ってみろや!


「夢も希望もねーってことだ」


 まあ、リアルメルヘンに夢も希望も求めても無駄。リアルにはリアルを求めるほうが建設的である。


「なにしてんだ、こんなところで?」


 ヴィアンサプレシア号のドックにいったんじゃなかったのか?


「プリッシュ号の外観を聞いておりました」


 答えたのはフミさん。別に聞く前に出したらイイじゃん。大きさ自由自在なんだからよ。


「それもそうね」


 と、プリッつあんが自分の無限鞄から一メートルくらいのプリッシュ号を出した。


「これが船なのですか?」


 興味津々な感じでプリッシュ号を見回すフミさん。君の琴線がわからないよ……。


「本来はガスで浮かんで回転翼で進むものだが、オレの力で浮かして、進むようにしてある。この上がキャンピングカーのように居住区。下で操縦する」


「こんな形で本当に飛ぶんですか? 風の影響をもろに受けそうですが? 上と下を繋ぐ鎖も脆そうですよ?」


 まあ、飛ぶ形ではねーわな。


「こいつは遊覧船。のんびりゆったり空の散歩を楽しむための船だ。まあ、万が一のときを考えて飛竜並みの速度は出せるようにしてあるがな」


 この世界の空、めっちゃ危険だしな。


「この形で、ですか?」


 信じられませんと呟くフミさん。オレにしたらここにある飛空船すべてが飛ぶような形には見えねーけどな。


「なら、乗ってみるか? そのほうが理解すんの早いだろう」


 どうこう説明すんのもメンドクセーし、フミさんなら勝手に理解してくれんだろう。


「よろしいのですか!?」


「改造してもらうんだから構わんだろう。イイよな?」


 プリッシュ号のキャプテンに訊く。


「うん、いいわよ。ここで乗る?」


「あ、あそこの桟橋でお願いします。あと、何人か乗せてもよろしいでしょうか?」


「まあ、別にいいわよ」


 ありがとうございます! とどこかに走っていくフミさん。走り方がコミカルゥ~。


 プリッさんが指した桟橋へと移動し、プリッシュ号をデカくするキャプテン。もちろん、キャプテンサイズですよ。


「ちょっと着替えて来るね」


 こちらは飛んでプリッシュ号に乗り込み、居住区へと消えていった。なんやねん?


 作ったのはオレでもプリッつあんに渡したからにはプリッつあんのもの。メルヘンとは言え、乙女(笑)の領域に無断で入るのはご法度。なので許可が出るまで待機です。


 コーヒーを飲む気分でもないんでクレイン湖を眺めていた。


 ……ルンタやカバ子はいねーのかな……?


 静かな湖面を眺めていると、ドッドッドっと地面を踏む音が耳に届いた。なんだ?


 辺りに目を向けると、フミさん以下クルフ族の方々がこちらに駆けて来るのが見えた。


「……う、運動会か……?」


 なんて訳ねーが、妙な迫力に押されて変なことを口走ってしまった。


「お待たせしました!」


 軍隊までの規律性はねーが、フミさんの指導力の賜物か、全員が桟橋に乗ることはなく、十名だけ連れてやって来た。


「あ、いや、プリッつあん待ちだから構わんよ。ってか、大人数で来たな。なんなんだ、いったい?」


「勉強をしに来ました」


 勉強? なんのよ?


「ベー様の考えや思想は我々にないもの。学ぶべきものばかりです」


 そ、そんなもんか? 別にオレは飛行船や飛空船に詳しくはないし、なにか専門的な技術があるわけでもねー。学ぶものなんてねーぜ。


 とは言っても、学ぼうとするなら壁の落書きからだって学べるもの。好きなように学んでちょうだいな。


「お待たせ~」


 と、なんか海賊船のキャプテンっぽい格好になって戻って来たプリッつあん。うん。意味わからんわ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る