第980話 扉に到着
食後、コーヒーを飲んだら身も心も完全復活。これから十六時間は戦えるぜ!
「……でも、これを前にすると萎えるな……」
超万能生命体が四十人以上いるせいか、量がハンパない。つーか、なんでここに持って来るんだよ? 無限鞄があるんだからそれに入れろよな、まったく。
「ドレミ。分裂体がどこにいるかわかるか?」
音がしないことからして部屋の中にはいないとはわかるがよ。
「かなり広範囲にバラけているようです。プリッシュ様はあちらの方角、五百メートル先にいます」
大遠征してんな。プリッつあん、そんなに冒険大好きっ子だったっけか?
「とりあえず、ここだと息が詰まるから外に出るか。ドレミ、窓の方向わかるか?」
なんだか方向感覚が狂ってて、どっちがどっちだか全然わからんのだ。
「あちらです」
と言うので、無限鞄に物を放り込みながら目指した。
ほんと、よくもまあ、こんなに集めたものだ。ってか、絨毯まで持って来ることねーだろう。メルヘンの通った後に草木も生えないとか止めてくれよ。
二十分かけてようやく窓に到達。つーか、なんでぴっちりと部屋に運び込んでんだよ? 他の部屋に置けよ!
「ふぅ~。やっと出られた」
清々しい空ではないが、この解放感が素晴らしいぜ。
「ミミッチー。狭間はこの下なんだよな?」
「うん、そう。この下にある」
「ドレミ。いろはは?」
「お側におります」
と、背後からいろはの声が。いたんかい!?
「つーか、いろはは元のままなんだな?」
いや、オレくらいにまで成長(?)してんな。なんでだ?
「大きいと動きが鈍りますので、このままにしております。ですが、護衛は増えたのでご安心ください」
なに一つ安心するものはないが、いろはの場合は見えないようにしているからまだ心が穏やかだわ。
……まあ、Gのごとく、見えないところにいるんだろうと思うと、なんか背筋がゾワゾワするがよ……。
「スライムは駆逐したのか?」
「周囲一キロ内にはおりません」
つまり、他にはいるってことか。繁殖力が高い生命体だよ。
「こちらを狙って来る感じか?」
「いえ。離れて行ってます。どうやら危機を感じる能力はあるようです」
ふ~ん。スライムとは言え生命体は生命体。危機を感じる能力がなければ生きられないか。
「プリッつあんには、ドレミの分裂体がついてるんだろう?」
あのメルヘン、意外と言うかなんと言うか、結構慎重派だったりする。まあ、たまにはっちゃけたことはするが、危機と感じたら絶対にやらないのだ。
「はい。四体ついておりますからご安心ください」
別に心配はしていない。あれはなにがあろうと最後まで生き残るタイプだ。
「なら、放っておいても大丈夫だな」
無限鞄からツルハシを取り出す。
もちろん、このツルハシはここで創ったもので、魔道具でもある。
これは、超振動ツルハシ。どんな硬いものでも破壊する。ほぉ~らよっと!
軽くツルハシを振り下ろした。
パシーン! と、波紋が広がったと思ったら足下が消失。一瞬の浮遊感を感じ、すぐに喪失感が襲って来た。
「ベー!」
「ワリー!」
と、皆で仲良く落下しましたとさ。めでたしめでたし──なんて言える訳もなく、完全に埋もれてしまいました。
まあ、オレの体ならこのくらいの瓦礫に埋もれても傷などまったく負わないし、痛みもそれほどない。ただ、煙が酷いので結界で吹き飛ばした。
「ふー! びっくりした~!」
ツルハシ、凶悪過ぎ! 竜の鱗ですら粉々にするぞ!
「これ、封印だな」
殺戮阿吽より危険だぜ。
「つーか、そもそもオレの力なら普通のツルハシでも問題なかったわ」
なんで創ったんだろう? 謎だ。
「ホー! ホー! ホー!」
おっと。ミミッチーもいたっけ。忘れてたわ。
瓦礫に埋もれるミミッチーを助けてやる。
「意外と頑丈だな、ミミッチーって」
上を見たら三十メートルほどあった。並の生物なら軽く死んでるぞ。
「ホー! ミミッチー生き物! 死んじゃうの!」
元気なようでなにより。丈夫に生んでくれた親に感謝しろよ。
ミミッチーの嘴攻撃を受けながら辺りを見回す。
「礼拝堂的なところか?」
破壊が激しくよくわからんが、結構広いところは確かだ。
「掘ろうにも瓦礫が邪魔だな」
まあ、結界でサクッと掬い、伸縮能力で縮小。そして、遠くへポイ。今度は普通のツルハシで掘り進めていく。
夢中になって掘り進めること一時間。なんか硬いものに突き当たった。なんだ?
本気の一撃を食らわすが、謎の硬いものはビクともしない。それどころか傷一つついてなかった。
「ミミッチー、これなんだ?」
なぜかいろはに銃口を突きつけられているミミッチーに尋ねた。
「それ扉。その下が狭間」
どうやら下に到達したようだ。で、どうやって開けるんだ?
「狭間への扉は大きいから、開けたらこのまま落ちちゃう」
「じゃあ、どうするとイイんだ?」
「非常用の通路が何ヶ所かある。近いのはあっち」
と言うので、翼で指した方向へと掘り進んでいく。
二十メートルほど掘り進むと、また硬いものにぶつかった。
「それが狭間への非常用通路」
その周りを排除していくと、半球形のものが現れた。
「で、どうするとイイんだ?」
「パージメントオープン」
ミミッチーの合言葉だか音声認識だかが働き、半球形のものが上昇。螺旋階段が現れた。
「謎の構造だな」
まあ、今さらか。
「場所もわかったし、一旦上に戻るか」
「いかないの?」
「狭間から帰るほうが早いからな、集めたものを回収するんだよ」
あと、プリッつあんの回収もな。置き去りにしたらスライムに迷惑だろうしよ。
帰りは空飛ぶ結界でササッと撤収です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます