第978話 さんはい

「それより、この増殖したドレミ、なんとかならないの? 同じ姿で同じ顔って怖いわよ。せめて髪の色を変えるとか、特徴を加えるとかしなさいよ」


 どれもドレミなんだからイイじゃねーかと思うが、まあ、同じ顔ってのも味気ねーか。


「じゃあ、髪の色ごとに隊を作って、メガネをかけたり髪型を変えたりしてみるか」


 ドレミさん、よろしこ。


「では、変えてみます」


 で、十二色の髪に変わり、メガネ、ポニテ、ちょいふっくら、お胸さん、東洋顔、西洋顔、小麦色肌、あと、メイド服の色違いと、辛うじてドレミなんだろう特徴を残して変化した。


 どうでしゃろ?


「まあ、マシにはなったけど、さすがに多くない? この数を連れて歩くの? 非難ゴーゴーよ」


 四十人以上のメイドを引き連れるオレ。うん。想像しただけで胃が痛くなって来た……。


「……これはなんとかせんといかんな……」


 どうしたらイイと思う? と、プリッつあんを見る。眠くて頭が働から知恵を貸してくださいな。


「どこかに仕舞っておけばいいんじゃないの? こんなにいてもやることないんだし」


「仕舞うって言っても、どこに仕舞えばイイんだ?」


 なぜかは知らんが、オレが持つ無限鞄もプリッつあんが持つ無限鞄も生き物は入らない作りになっている。なので、ドレミが持っている謎の収納能力(エリナ系の力はよくわからん)もダメだろう。


「べーの収納鞄じゃダメなの?」


「入るには入るが、オレの能力では十人しか入らんし、変身するドレミには鞄とか邪魔じゃね?」


 鞄じゃなく庫にしてもイイんだろうが、オレの結界は人の思考を元に発動するように組んである。だから、スライムの思考には効かないんじゃねーかな?


 と、試してみたら、やはり上手く発動してくれなかった。なんか、思考を邪魔されてる感じだな? 超万能生命体による弊害か? いや、知らんけどよ……。


「じゃあ、どこかに待機させておくとかは? 例えば飛空船とかに乗せて、必要なときに呼ぶとか」


 待機か。まあ、仕舞うよりはマシな案だな。


博士ドクターに頼んである魔力炉が完成したらオレ専用の飛空船はできるが、まだ時間はかかるだろうし、すぐには無理だよな……」


 新しく作るか? いや、さすがに魔力炉の構造なんて知らんし、想像もできん。あれは超魔術の集合体。博士ドクターでも一から作るとなると一月二月はかかりっきりになるとか言ってた。


 そんなものを想像して創造するなんてオレには不可能だ。


「……すぐには無理だな……」


 何ヵ月か試行錯誤したら、それなりの飛空船を創ることは可能だと思うが、そんなに時間などかけてられん。いろいろやることあるしな。


「なら、今はいろんなところにバラしておけば? 何人いたところでべーはそれをすり抜けていなくなるんだし」


 別にすり抜けているわけじゃない。皆がついて来ないだけだい! とかは言わないよ。これ以上監視など増やされたらたまったもんじゃねーからな。


「ドレミ。ここを出たらテキトーに振り分けてくれ。余るようならブルーヴィで待機してろ」


 なにかしていたいって言うなら好きなようにやってろ。ただいるだけなのも辛いだろうからな。


「畏まりました。マスターの邪魔にならないように配置します」


 ハイ、とりあえず問題は片付きましたのでおやすみなさい。ドレミさぁ~ん。またベッドになってくださいしぃ~。


 メイド型に抱きつく──には抵抗があるのでベッドにトランスフォームするのを待つ。


「プリッつあん。あとは任せる」


 好きなことしててよ。なんなら探索でもしててくれ。おもしろいのがあったら確保ね。よろしこ。


 トランスフォームしたドレミベッドへダイブ。おやすみ一秒で夢の中。なにか閉じ込められる夢を見たような気がしないでもないが、まあ、快適に起きられた。


「……ん?」


 あれ? なんか視界がやけに狭くね? キャンプに選んだ部屋、大広間的なとこのはずだったのに……。


「ドレミ、移動した?」


「いえ。動いておりません」


 じゃあ、オレの記憶違いか? いや、んなわけねーよ。大広間的なとこだったよ!


 ドレミベッドから起き上がり、無限鞄から濡れタオルを出して眠気を拭き払った。ふぅ~。さっぱり。


 改めて辺りを見回す。


 ……なんだろう? オレ、まだ夢を見てんのかな? あり得ないものに囲まれてるんですけど……。


 もう一度濡れタオルを出して顔をゴシゴシ。ふぅ~。さっぱり。て、気分一新させて辺りを見回す。


 ………………。


 …………。


 ……。


 ハイ、さんはい。


「──なんじゃこりゃー!!」

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