第968話 代理人

 カーレント嬢とお友達が家をどうするか話し合っているので、ミニクリエイトルームを見て回ることにした。


「……なんだよ……?」


 なぜかオレの後をついて来る公爵どの。そして、ミミッチー。君たちはあっちでしょう。


「いや、なんとなく」


「ホー」


 お前は、都合のイイときだけ梟になってんじゃないよ。


「ホケキョ」


 それはなんの時間差なんだよ? 意味があるように鳴けや。


「別に見て回ってるだけだ。娘についててやれよ。お前は引き継ぎをしろ」


「カーレントにはあとで聞けばよいが、お前は目を離したら説明されてもわからんことをしてるからな、おれの目が届くときは目を離さないようにしてんだよ」


「ホー」


 それはイイ。無理に鳴くな。答えがないなら黙ってろ。


「勝手にしろ」


 ただ見て回るだけなんだからよ。


 背後は気にしないことにして、ミニクリエイトルームの端へと行ってみる。


「……隙間?」


 壁と床の間に十センチほどの隙間があった。


 なんだこれと隙間を覗くと、下に空間があるのがわかった。どうなってんだこりゃ?


「ミミッチー、下に空間があるのか?」


 尋ねたのは公爵どのね。オレはそこまで興味がないので軽く流しました。


「下は廃棄場。これまでのクリエイトマスターが使ってたものがある」


 そう言や、骸骨嬢がテーブルとか椅子を上から持って来たとか言ってたな。これのことか?


「ん? ちょっと待て。今、これまでのクリエイトマスターが使ってたものって言ったか?」


「言った」


 クソ! そう来たか。やっぱ神に介入されてんな、これは!


「どうした? なにか不味いことか?」


「下を見ないことにはなんとも言えんが、オレは不味いと思う。クリエイト、厄介な力だぜ……」


「一人で納得してないでわかるように説明しろ!」


「カーレント嬢! 中止だ! なにも創るなよ!」


 大声を出して促し、カーレント嬢のもとに向かった。


「いかがなされたのです?」


「カーレント嬢。ミミッチーに下にいけるか訊いてくれ」


 疑問に思いながらもミミッチーに尋ねてくれるカーレント嬢。その純真さがありながらなぜ腐の世界に落ちたのよ? 親が泣いてるよ。


 ……お前が泣かしてんだろうと言う誤解はノーサンキューです……。


「廃棄場なら床を反転させたらいけるよ」


「──止めろ!」


 言葉にしようとするカーレント嬢の口を慌てて塞いだ。


「ミミッチー! 引き継ぎはしっかりとやりやがれ! 焼き鳥にすんぞ!」


 クソ! 誰だよ、このアホ梟を盟約者としたヤツは!? 危うく阿鼻叫喚になるところだったわ!


 カーレント嬢の口から手を離し、安堵のため息を吐いた。


「……厄介この上ねーな、畜生が……」


 箱庭より厄介じゃねーか、ここはよ。


「ベー。本当になんなのだ? 説明しろ」


 ちょっと待てとコーヒーを一杯。少し落ち着かせてくださいな。あー、この世界にコーヒーがあることに感謝です。


「……はぁ~。来るんじゃなかった……」 


 いや、行こうと言ったのオレだけどよ。


「ミミッチー。オレがミニクリエイトルームのことを訊いても問題ねーか?」


「新しいクリエイトマスターが許可すれば大丈夫」


「なら、カーレント嬢。オレに尋ねる許可をくれ。あ、クリエイトマスターの代理人にも任命してくれ。いちいちカーレント嬢に伝えるのもメンドクセーからよ」


「は、はぁ。 わかりました。ベー様を代理人に命じます。ミミッチーさん。ベーの質問に答えてください」


「うん、わかった」


 あっさりとしてんな。まあ、楽でイイけどよ。


「はぁ~。ミミッチー。質問だ。廃棄場へいくには、もしかして、この床が反転するのか?」


「うん、そう」


「なぜに?」


「そう言う創りだから」


 やっぱりか。そうじゃねーかと思ったよ。


「前のクリエイトマスターは、生ゴミとかどうしてたんだ?」


「ゴミ箱に捨ててた」


 消去できるゴミ箱だったってことか? まあ、そう言うゴミ箱を創ればイイってことだ。


 となると、なぜゴミが下にあるんだ? いや、下を見ればわかるか。


「カーレント嬢。ここにこれこれくらいの穴を開けてくれ。いや、扉を創ってくれ。内開きで」


 結界でマンホールくらいの扉を創ってみせ、見本とさせた。


「こんなものでしょうか?」


 あっさり創られた扉に手をかける。


「そんなものでイイ。皆、ちょっと離れてろ。オレがイイと言うまで近づくなよ」


 結界を纏い、扉を開けた。


 吸い込まれると言うことはなし。なら、飛び込むまでだと、扉を潜った。 

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